京都に来る理由の何割かは、四条烏丸の食堂にランチを食べに来る事。
この日も11時半開店時に入店して、出たのは12時半を過ぎていた。
日替わりで凝った料理を出すので、あんまり回転率の良い店ではない。
仏光寺通を東進して四条大橋より一本南の橋を渡る。空は久しぶりに
スッキリ晴れている。東側に低い山陰が見える。前回清水山へ行った
から、今日は反対側にある東山山頂公園(将軍塚)を目指してみよう。
花見小路を横切り祇園甲部を抜けて行く。山へ向かうにしては豪勢な
アプローチである。本来ならば遠来の観光客で溢れていたであろうに
人影は少ない。近くに縁切りで有名な寺があるが寄るのを忘れていた。
そのまま東進し八坂神社の南側に入る。三条通に面した西楼門の方が
馴染みがあるが、こちらの南楼門が正門だそう。確かに抜ければ舞殿
に続き本殿が正面にある。此処も閑散としてのどかな雰囲気であった。
緩やかな坂を登っていくと、左手には長楽館という高級ホテルがある。
我々が泊まっている宿の40倍以上の値段だそう。右手は大谷祖廟の
参道である。京都の観光資源の豊富さには、ほとほと感心させられる。
円山公園に入ると坂本龍馬と中岡慎太郎の銅像が立っている。家族が
なにやらイチャモンを付けに行った。背後に見える小山が将軍塚辺り
だろうか。歩道は網の目のようだが、とにかく公園左奥へ進んでいく。
どこまでが公園なのか分からないが、高みを目指していくと将軍塚と
記された石標があって、やっと山道らしくなる。前を行く家族は薄い
フリースを羽織っているだけ。春を思わせるような暖かな日であった。
昔の時代劇なら素浪人が居そうな御堂があった。円山聖天堂と看板が
掛けられ歓喜天を祀っているらしい。覗いてはみたが仏像は見えない。
歓喜天は象頭人身の秘仏で、日頃は厨子の中に安置されてるんだそう。
宿に置いてあった「マンガでわかる仏像」という本がとても面白くて、
仏像に少し興味を持ち始めた。その本はメルカリで買っておいたので、
読み込めば京都歩きの楽しさも増すはず。緩やかな山道を歩いて行く。
雑多な二次林ではあるが長い年月伐採されておらず、すべからく巨木
である。植林されて百年程の摩耶山とは、何か雰囲気が異なっている。
緩やかで広い道が九十九に登っていく。昔は牛車が通ったのであろう。
途中にパウチした地図が、何箇所も貼り付けてあった。どうも主旨は
知恩院にも下れるけど門は16時に閉まるよって事のようだ。ならば
帰りはそちらに寄ってみよう。そういうコースがあると知らなかった。
京都一周トレイルの標識が現れた。左へ進めば粟田口。右手には東山
山頂公園がある。既に将軍塚青龍殿の直下である。この付近は大きく
伐採されており非常に明るい。風倒木の処理跡か病害虫によるものか。
帰って調べると此の一帯は国有林で、林野庁が東山風景林として整備
している。点々と樹木が残る斜面にネザサが繁茂する。緩やかな道の
先で車道に合流する。北側に青蓮院門跡、南側に公園駐車場が見える。
公園内に設けられた展望所から西山を望む。愛宕山は画画の右にある。
正面がポンポン山や小塩山であり、これらの山が西山と呼ばれる理由
が理解できる。右端にチョコンと尖ってるのは嵐山の烏ヶ岳であろう。
トイレや自動販売機のある駐車場を抜けて東側へ行ってみる。東屋や
ベンチもあって休憩に適している。東側に見えるのは醍醐山、高塚山、
音羽山の山並み。それに山科区の市街である。右端に阿含宗大菩提寺。
公園東端から北東を望む。目の前には大文字山から如意ヶ岳の山塊が
意外なほど大きく迫る。思い返せば京都から大津まで続くので当然の
大きさである。背後に見える比叡山にも全く雪は残っていないようだ。
帰りも同じ道を戻る。その前に青蓮院門跡青龍殿に立ち寄る。大舞台
があって京都市街の眺望抜群だというが、拝観料500円要するので
踵を返した。無料開放されるような事があれば、ぜひ入場してみたい。
車道から一段下って先程の伐採地に戻る。京都一周トレイルは何故か
右へ上がって行くが、前方で合流することは分っている。道標が示す
知恩院へ下ってみよう。うららかな陽射しで相変わらず暖かく感じる。
三叉路に興味深い道標が現れた。先日図らずも歩いた菊渓川を指して
いる。標柱自体には菊渓谷頭と記されている。たしかに源頭という語
は使うので、谷頭という名も理解できるが、一般的にはどうだろうか。
ほんのひと下りで登って来た円山公園への道との分岐に出会う。木橋
が朽ちかけて、ハムが歩くとメリッと音がした所。此処を右へ進んで
行く。最近は京都一周トレイルが喧伝され観光コースとなっているが、
知恩院と清水寺を結ぶこの道は初歩的な観光ハイク用として、京都を
代表するコースじゃないだろうか。その割には観光客の姿は見かけず、
出会うのは地元の方ばかり。法垂窟を右に過ぎるとフェンスが現れる。
なるほど此のフェンスが16時に閉まるという事か。となると行き場
失い元の道を円山公園へ向かわないといけない。境内に入ると大鐘楼
がある。写真ではインパクトがないが、本当に大きく一見の価値あり。
大鐘楼下からは円山公園へ抜ける事もできるが、石段を下って法佛殿
の脇へ降りる。知らなかったが知恩院は庭園の拝観は有料だが、境内
は自由に歩けるよう。京都の寺院巡りは拝観料が大変と思っていたが、
意外に無料で拝観できる所が多い。家族は大昔に旅行会社でバイトを
していたが、ツアーで訪れるのは有料の場所ばかりだったそう。その
為京都のイメージが固定化していたという。御影(みえい)堂は国宝。
仏像についての知識を増したら、寺院巡りも面白くなるかも知れない。
その時まで境内の散策は取っておこう。男坂という急な石段を三門へ
下る。左側には女坂という緩やか石段もあるし、シャトルバスもある。
三門下から振り返る。右側に将軍塚のピークが見えるが、知恩院では
この山を「華頂山」と呼んでいる。東山三十六峰の一つに数えられる。
山頂付近は青蓮院門跡の境内な訳で、知恩院の寺領ではない事になる。
更に調べてみると華頂山を山号とする寺院は、他にも二つあるらしい。
祇園東の飲み屋街を抜けて、新橋(しんはし)を渡ると白川南通りだ。
此処も閑散としている。右のハードロックカフェ京都は閉店していた。
去年の3月の事らしく、ショップを覗いたのは同年1月だったのかな。
僅か2年で閉店だというが、コロナ問題だけではなさそうな気がする。
京都市内では今もホテルの開業や建設が、相次いで行われているのだ。
馴染みの食堂も支店を出すとか。ただ従業員が集まらず困ってるよう。
今の静けさはつかのまか。それまでもう少し京都の街を歩いてみよう。
ちょうど卒業旅行のシーズン。四条大橋辺りは若い人達で溢れていた。
四条大橋から東山山頂公園までは直線距離にして1.4kmしかない。
JR三ノ宮駅から港見晴らし展望台まで2kmある事を思うと、意外
に京都も繁華街と山が近い。2時間弱で展望のミニハイクが楽しめた。
今日出会った動物
菅大臣神社(仏光寺通新町西入ル)にいるネコ。一週間前も同じ所に
いた。近づいても逃げないというより無関心。もうお年寄りみたいだ。
居場所があるのは幸せかも。ハムもそろそろ終の棲家を探さなくては。