摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

高野山観光ハイク・・・和歌山県伊都郡高野町

午前3時頃、宿の窓を叩く雨音に目を覚ます。そのまま眠れずにいた。

24時間営業のスーパーに、食料を買い出しに行ったりし朝を迎える。

新今宮駅6時30分の南海電車に乗り、橋本駅高野線に乗り換える。

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高野山に全くと云って興味は無かった。だが南海電車はこの日16の

駅間の料金が無料となるキャンペーンを行う。その中で魅力的だった

のが難波駅から高野山駅への行程。乗車料金上最も恩賜を受けられる。

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もちろん条件があって、VISAのタッチ決済を利用しての乗車だけ。

たまたま家族もカードを切り替えた所だったので、渡りに船と参加を

決めた。高野線の普通車両は2対1の転換クロスシートと豪華な造り。

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ハムは高野山へは全くの初めて。家族は小学5年生の時に林間学校に

行って以来だという。車窓から果樹園を多く見る。和歌山だし梅だと

思っていたら富有柿の実が残っていた。九度山町が日本一の産地とか。

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列車が山岳区間に入ると窓から見える風景に釘付けになった。何とも

凄い所だ。急斜面を縫うように走って行く。途中の駅舎の風情も良い。

改札を抜けると谷底に転げ落ちそう。各駅のホームに駅員さんがいる。

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暗い杉林の中、カーブを曲がる度にレールが「キューン」と鳴り響く。

雨上がりというロケーションが雰囲気を盛り上げるのか、天上の迷宮

に向かっているのかと錯覚しそうになる。大袈裟ではなくそう思った。

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鉄道に興味のない家族も興奮気味で、一度は乗るべき路線だとか言う。

まあ我々が知らなかっただけで世間の人はご存じだろう。極楽橋駅

は改札を出ずにケーブル線に乗換える。通しの切符な訳でこれは便利。

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駅前には2台のバスが乗客を待っていた。山の上だから乗り遅れたら

どうしようと思っていたが、何の心配も要らない。六甲山上みたいな

所を想像していたが規模が全く違う。バスもタッチ決済が利用出来る。

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女人堂バス停(220円)で下車する。駅から此処までバス専用道路

なので歩行は出来ない。同乗して来られた方々は熱心に参拝されたり、

御朱印を求められたり。トイレもあってハイクの起点として良い所だ。

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道路の反対側に登山口があった。寒波が襲うというので軽アイゼンや

スパッツも用意してきたが、どうやら必要はなさそう。まず996m

の弁天岳を目指す。というと勇ましいが女人堂の標高が既に856m。

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最初のコンクリート階段を過ぎると、思ったより急斜面の山道となる。

ずっと針葉樹林の中を歩いて行くが、後で歩いたいわゆる高野三山に

比べると自然を感じられた。勿論この時はそんな風には思っていない。

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そもそも高野山に山歩きの楽しみは期待していない。観光主体の計画

である。中西政一郎編のアルパインガイド近畿の山にも、取り上げら

れていないので、一般的な認識としても登山の対象ではないのだろう。

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20分程で弁天岳頂上に着いた。山頂には立派な社があり、三角点は

少し離れた所に遠慮気味に設置してある。樹間から一瞬ガスが流れて

橋本市街が見えたが、晴れていたとしても大した展望ではなさそうだ。

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休憩に適した所も無いのですぐに下ることにした。最初の僅かな区間

だけ南方が抜けていた。護摩壇山とか伯母子岳が見えるかもと待つが

ガスは晴れてくれない。淡々と下って行くと大きなテーブルとベンチ。

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新今宮スーパー玉出で買った饅頭で小休止。ピークを一つ登る度に

一個食べようと思っていたが、気がつくと家族は三つ目を口にしてる。

観光パンフでは数多くが描かれているが、実際には数本しかない鳥居。

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大門へ下って来た。此処が高野山の正式な入口。それにしても壮麗な

建造物である。京都で見慣れた仏教寺院の山門だが一際大きい。車道

脇にある温度の電光掲示板は2.7度を示すが、それほどに寒くない。

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観光協会は女人堂を起点として、周囲の山々を巡る女人道をコースと

設定している。此処までそのルートを辿って来たが、この先南半分は

ピークも見所もないので、大門通をショートカットしつつ観光しよう。

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そして高野山のシンボルとも云える壇上伽藍の根本大塔。事前に何も

調べておらず、境内に入るのに拝観料が要るか不要かも知らなかった。

根本大塔の内部拝観は500円要るが、境内は自由に歩き回れるよう。

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886年完成、1834年再建と伝えられる西塔。この日見た中では

一番美しいと思った建物である。素晴らしい様式美。無料で見られる

とは有り難いと、二人共に無信心であるが思わず手を合せたくなった。

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続いて金剛峯寺。此方も境内を通り抜けることが出来る。唯一名前を

聞いた事のある寺院。防火の為にか檜皮葺の屋根の上に天水桶がある。

屋根に梯子が架けてあり、更に鎖を伝い桶まで行くようになっている。

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再び大門通に戻り奥の院を目指し歩いて行く。幾つもの寺院が並ぶが

異彩を放っていたのが成福院の摩尼宝塔。後で調べてみると前住職が

ビルマで僧侶として従軍された由縁で、戦没者を慰霊されているそう。

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山間に仏教寺院が並び立つ。その様子は京都や奈良よりも濃密である。

ところで今日は土曜日だが観光客の姿を余り見かけない。我々同様に

南海電車の無料企画で来る人達で混雑。と思っていたが予想が外れた。

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一之橋で車道から離れて奥の院に入る。和歌山県の公式観光サイトに

よれば、御廟まで約2kmの参道には、20万基を超える大名の墓石

や慰霊碑の数々が、樹齢千年に及ぶ杉木立の中に立ち並ぶ。とのこと。

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最初は墓場を写真に撮ったり観光したりするのも、どうかと思ったが

墓そのものではなく慰霊碑の方が多いようだ。歴史上の人物や藩名が、

次々に現れるが当然地元に本当の墓が有る訳で、レプリカ的な物かな。

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我々が特に興味を持ったのは杉林の立派さ。杉の大樹というと屋久

を想起される方も多いだろうが、彼の地の大木は混合林の中にポツン

ポツンとあるので、これほどの大木の群れを簡単に見る事は出来ない。

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屋久島は世界遺産に登録されてから、交通も宿代も高騰して行き難い。

杉の大樹を見る為なら、大阪から日帰りできる高野山コスパが良い。

それにアユタヤの仏頭の如く、木の根元に取り込まれた石仏も見れる。

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公式の案内図には記されていない化粧地蔵。一之橋から来ると木陰に

なるので見落とす所だった。化粧を施すと美人になるという言い伝え

が有るとか?。最初はイタズラから始まったんじゃないかと思われる。

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意外に新しい慰霊碑もある。パナソニックやクボタ等の大会社の碑や、

大阪市老人クラブの碑が路傍の好立地に立っている。相当な有力者で

ないと立てられない所だけに、以前は何家の碑が有ったのか気になる。

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御廟も拝観させて頂いたが撮影禁止なので写真はない。家族が大樹に

抱きついて「気」を感じようとしている。残念ながら何もしなかった

らしい。水向地蔵から三山巡り参詣道の石碑に従って裏の車道に入る。

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車道からポイント番号28の道標に従い摩尼山を目指す。観光協会

貰った案内図には、この番号が入っていたが全く参考に出来ていない。

どうも平たい板に四方向が記されている事に、最後まで慣れなかった。

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下生えのない無機的な人工林が続いて息が詰まる。弁天岳の森の方が

よほど自然を感じられた。大木ばかりだが奥の院参道に比べれば細い。

ポツンと凄い大樹が残っていたりする。枝が多いので杉ではないかも。

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観光パンフに、急な上り坂と書かれている摩尼峠手前の部分まで来た。

此の先、摩尼山(1004m)、楊柳山(1009m)の二山を越え

て行く。転軸山(915m)だけが車道で分断されて外れた所にある。

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それら三つの山を高野三山というらしい。ハイカーとしては弁天岳も

含めて四山と呼んでもらいたいが、やっぱり語呂が悪いという事かな。

主稜線上は人工林でないが、針葉樹主体で展望がないのは変わらない。

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12時30分、水向地蔵から40分程で摩尼山の頂上に到着。コース

タイムの積算はしておらず、行ける所まで行こうという感じで来たが、

そんなに遅くならずに帰れそうだ。樹幹越しに見えるのが楊柳山かも。

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寒風が吹きすさぶ頂上では休憩する気にもならず、主稜線を北へ下る。

登山道が西斜面についているが、これが中々の急斜面。何の気なしに

家族は歩いて行ったが、ハムは最近こういう道が、怖くて仕方がない。

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そのせいか次の分岐で尾根へ進む方に入ってしまう。これが大間違い。

古宮岳への道だったようだが、10分程歩くと怪しくなり戻って来た。

分岐には折れた石柱が木に縛ってあり、「左楊柳山」と記されている。

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古宮岳分岐から5分で黒河峠に到着する。石柱には東摩尼山と記され

ている。左側へ下れば三本杉を経て奥の院に戻る。此処までも曇り空

だったけど段々暗くなってきた。植生も単調でハイクの楽しみはない。

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黒河峠から15分のアルバイトで楊柳山の頂上に到着する。祠の裏に

三等三角点が有った。この先も良い場所が無さそうなので、菓子パン

で小休止する。標高では一番高いが山頂らしい雰囲気は摩尼山に劣る。

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山頂からどんどん下って子継峠に着く。地形図によると途中二ヶ所の

分岐が有ったはずだが気づいていない。此処は参詣道の一つ黒河道と

合流する所。祠の他に道標が幾つもある。南側の浅い谷を下って行く。

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此の谷が中々に良かった。カラマツの落葉が地面を茶色に染めている。

一日中、杉林ばかり見て来たので、新鮮どころか美しいとさえ思える。

日本産の針葉樹としては唯一の落葉樹とか。メタセコイアは中国原産。

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此処だけ杉の植林がされずに、カラマツが残っている理由が分かった。

浅い谷が更に広がり沼沢地となっている。杉の木は育たないのだろう。

とても珍しい風景じゃないかと思うが、観光パンフに案内はなかった。

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谷を下り車道に出る手前が一本杉という地名。周囲を見回すと百本は

杉の木が有るのに、一本とは此れ如何に。なんて天邪鬼な事を考える。

杉の植林が行われる大昔に付いた名前だろう。近くには三本杉もある。

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舗装された車道を渡ると転軸山の登り口。神戸市灘区の人が寄進した

道標がある。高野三山の一つには数えられているが、地形から見ても

魅力のなさそうな転軸山。けれども時間はあるので立ち寄って行こう。

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登り始めこそ苔が綺麗だったが、その後は単調な杉林の中。頂上も又

同じでピークらしさを感じない。道標に従い下って行くとすぐ遊歩道

に合流する。多目的広場という名前の園地の一部になっているようだ。

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車道を西へ歩いて行く。普通の住宅もあるが公共施設のとても多い所。

人口3000人の町にしては大きな施設が並ぶ。キャンプ場やバンガ

ローまである。でも大きな滑り台が有る公園にも人影が見当たらない。

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高野大学のグランドにも誰もいない。その先の住宅街では道が複雑で

迷った。起点の女人堂へ行く道は見送り、市街地のバス通りへ向かう。

前を歩いていたカップルの足並みがピッタリ揃ってて見惚れてしまう。

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その二人と一緒に一心口からバスに乗った。臨時バスだが乗客は多い。

何処にこんなに人がいたのだろう。高野山駅に到着すると駅員さんが

大声でケーブル乗車を促していたが、写真を撮りたかったので乗らず。

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次のケーブル便に乗る。スイス製のカッコいい車両。摩耶ケーブル

比べて車内の傾斜がキツイ構造になっている。最急こう配は約29度。

摩耶山とほぼ同じだが、地形のせいか高野山の方が急こう配に思える。

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駅員さんが案内していた事が分かった。一つ前なら普通電車に乗れた。

直通特急は600円の特急券が必要。同乗したケーブル客はほぼ全員

特急に乗って行かれ、ホームには鉄道ファンの少年と我々だけが残る。

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20分待てば次の普通列車が来る。また橋本で乗り換え難波駅に到着。

この機械にクレジットカードをかざすと、自動改札の扉が開く。その

反応がイコカよりも早くて感心。さて本当に無料で乗れてるのかな?。

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確認すると翌日にバス代往復440円は請求が来ていたが、電車運賃

往復2780円の請求はない。ただ我々の他にタッチ決済を利用して

いた人は少ないと思う。せっかくの企画だが広報が足らなかったかも。

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