天望尾根の巡視路入口が落石防止フェンスに閉ざされてから3年経つ。
その間に一度だけ六甲ケーブル下駅の西側から歩いている。その後は
興味を失っていた。尾根を登ってからの行き先に困るのがその要因だ。
登りのルートに関しては、此のブログにリンクを貼らせて頂いている
長峰大好きさんが幾つも開拓されている。下りについてはヤマップで
知らなかった道を拝見する。上り下りが揃ったので行く気が起こった。
六甲ケーブル下駅からドライブウェイの新道に入る。該当の交通標識
はないので歩行しても問題ないと思っている。此の件は又別項で記述
したい。ただし道路の形状から左側を通行した方が良いと思っている。
右側だとカーブを下って来る車両(特にバイク)からは視認され難い。
以前の巡視路上り口。擁壁の隙間は閉ざされていないが、その奥には
落石防止フェンスが新設されている。関電の人は何処から登るのかな。
一旦は天望山に上り、巡視路を下られるのだろうか。代替の巡視路が
新設されるかと期待したが外れたよう。旧の入口から少し先にも擁壁
が切れた所がある。古い落石防止フェンスはあるが低いし傾斜も緩い。
トラックロープが残置されていたが、頼らずにフェンスは越えられる。
擁壁に沿って薄い踏跡が北へ向かっている。これは測量や工事関係者、
それに加えて定期的に岩場の様子を見に来られる保守の人もいるはず。
なので踏跡は直ぐに尾根を目指している訳ではないよう。山仕事用の
ピンクテープが諸所に付けてあるが、点検すべき岩塊へ誘導している
と思えてきた。何度か行き詰まるが目を凝らせばまた踏跡が見つかる。
段々と上がって車道からは、かなり高くなった所で険しい沢に出会い
行き詰まる。そこで左岸を下って小堰堤の下を対岸に渡った。ただし
堰堤上にも踏跡があるように思えたので、見逃しただけかもしれない。
右岸に上がって斜上して行くと鉄階段の末端が見えた。手摺のパイプ
を留めている金具が光っている。杣谷や東谷にも同様の階段があるが、
それらよりは新しいのかも。とは云っても阪神大震災後の設置だろう。
隙間から草木が伸びていたりもするが、階段自体はしっかりしている。
見上げる岩場との組み合せに韓国の山を思い出す。ただ周囲の岩場は
鋼製ネットで覆われて、対岸から見ると歩けるとは全く思えなかった。
何気なく階段を上っていたが、ふと振り返ると感じているより急傾斜。
ちょっと足がすくむ。足元に弁天滝の落口が見えている。階段上りも
そう長くは続かない。上端には朽ちかけた板を渡した踊り場があった。
その上は浅い谷全体に鋼製ネットが張られている。両岸とも険しくて
ネットの上を渡って行くよりない。その区間を過ぎると涸滝が現れた。
全体に堅いが脆い部分もある。左寄りを木の根や灌木を頼りに越える。
浅い谷がシダ藪に覆われた所で左岸の尾根に逃げ上がる。テラス状の
露地があり南西方向の眺めが良い。大月大橋や大月台の住宅街が模型
のような感じに見下ろせる。無風快晴1月としては暖かい気温である。
その上が長く感じた。下生えは薄いが何故だかルート取りに苦労する。
やがて右上方に大きな岩場が見えてきた。ピンクテープも誘うように
ヒラヒラしている。近寄ってみると岩でなく斜面を固める擁壁だった。
もちろん先には進めない。元へ戻って危うげな奇岩の下を回り込むが、
太い鋼材が落ちている。ちょうど杖に良いと思ったが重いので諦める。
少し変化が出てきてホッとする。此の先は大きな岩塊が点在する斜面。
岩塊に番号が符ってあるのは、それぞれの位置を管理しているからで、
定期的に異動がないかを見に来られるのだろう。ピンクテープはその
道順を示すものか。北側の斜面には長いトラロープも設置されていた。
さらに一段上がると大きく展望が広がった。さきほど詰まった擁壁の
上に出たのだ。これは望外の贈り物。ちょうど時刻も良いので此処で
休憩しよう。隅には一人で腰掛けるのに最適なソファー型の岩もある。
擁壁の上は段々に治山工事が施してある。棘のある植物が沢山あって
通過に苦労する。上着はツルツルのナイロン製ジャンパーを着ている
ので大丈夫だったが、まだ新しいズボンを何箇所も引っ掛けてしまう。
板張りの塀がある。どのような趣旨で設けられているのか分からない。
さきほど斜面に落ちていた鋼材は此の塀の支柱。板が朽ちた箇所では
鋼材が抜けて滑り落ちそう。塀を乗り越えると尾根上の巡視路に出る。
擁壁の上ではもう頂上直下かと思っていたが、飛び出た場所は上から
二番目の鉄塔よりも下だった。元より足は遅いが思ったよりも時間が
掛かった。六甲ケーブル下11時46分、現在は13時46分である。
此の先は天望尾根道の上端にある展望所まで歩いくつもりだ。そこを
本日の最高所として再び同じ道を下って、途中から一ヶ谷道を下ろう
というのが計画だ。天望山頂上から東側に見えるのはたぶん油コブシ。
頂上近くから天望尾根の鞍部へ下る所。従前と変わらぬ様子にホッと
する。以降の道も変わってないどころか、以前より良く踏まれて明瞭
になっている。ただ自分が老朽化して前よりも急峻にかつ長く感じる。
14時27分アイスロード下部への分岐に到着。電話と記された石柱。
単なる分岐ではなく此処から植生も変わる。杉林が終わり照葉樹の林。
下生えは六甲らしい笹原が続き、ようやく歩行を楽しめるようになる。
14時48分、尾根上部の展望所に辿り着いた。テルモスのコーヒー
で小休止。一ヶ谷から此処へ上がって来る踏跡もあるように見えるが、
実際どうなのか確かめる時間はない。まだ日の短い一月の初旬である。
歩いて来た天望尾根を見下ろす。二つ目の瘤から左下の一ヶ谷へ下る
支尾根が目標の道なのかと思う。いや或いは三つ目の瘤かも知れない。
地図も方位磁石も持ってはいない。まあ有った所で読めやしないのだ。
天望尾根は上りきると、六甲ケーブル山上駅前のバス停に出てしまう。
山らしくない所が終点。摩耶山方面へ行くにも油コブシへ下るにしろ
興醒めしてしまう。ならば笹原の綺麗な所だけ歩いて下る方が楽しい。
アイスロードへの分岐手前の瘤まで戻って来た。尾根道を右に見送り
一段下るとポリロープが張ってある。瘤の上から見えるか見えないか
微妙な所。尾根道を下るハイカーが迷い込まないよう配慮されている。
下って行くとポリロープが張ってある意味が分かった。この支尾根は
思ったよりも広く複雑な地形をしている。尾根を直進せずに斜降する
ロープを追いかける。でなければ落葉の堆積で踏跡を見失っただろう。
それでも尾根が狭まると踏跡が明瞭となる。一定数の歩行はあるよう。
また尾根が広くなると左側へ斜降したり、踏跡が散逸して迷ったりを
繰り返す。だが要所に白いマーキングテープがあり踏跡に誘導される。
なので自分でルートを選んで歩いている感じがしない。夕暮れも近い
ので素直に従って降りて行く。ネザサの藪が刈ってある所もあったり。
白いロープはやがて道が明瞭になれば、外すという意図が感じられる。
それはさておき、この支尾根自体は全体を通じて展望は無く。植生も
興味をひくものはない。一ヶ谷を遡行した後の下降路として利用する
のが最適だと思う。正に天望尾根へのバイパス路と云った感じである。
尾根上に何やら構造物が現れた。ケーブル線の電柱というか通信設備
のよう。つまり此の真下にトンネルがありケーブルカーが走っている
はず。その割に走行音を一度も聞いていない。そこが摩耶山とは違う。
堰堤の天端に下り着いた。この谷が一ヶ谷なのだろう。ケーブル線に
沿っているので遡行の対象とは考え難かったが、参考にさせて頂いた
ヤマップの行動記録では、入渓や堰堤越えに難があるが美渓のようだ。
堰堤下から線路が見える。ケーブルカーを見たいと思い待っていると
赤い上り車両が上がって行くが、気が付くのが遅くて写真は撮れない。
摩耶ケーブルに比べ本当に静かだ。地味な緑の下り車両を撮っておく。
堰堤下からは作業路が付いている。法面の落石防止ネットや崩落防止
工事に使われるのだろう。ただ出だし20m位が急斜面をトラバース
する細い道で凄く怖かった。改めて写真を見ると何でもない道みたい。
最近は杣谷道でさえ怖いと思う。歩いた夜は夢見が悪かったりもする。
バランス感覚が老化で崩れ始めたのだろうか。そんな事を考えながら、
ブラブラ下って行くと油コブシ一般道に出る。土曜だが誰にも会わず。
すぐ入口近くの伐採地に下る。人がいるのかと思ったら案山子だった。
若い頃は、しばしば金曜日の夜にこの道を歩いた。堡塁岩で前泊する
為だったが、暗闇にこんな人がいたら恐怖で逃げ帰ったかもしれない。
油コブシ登山口に下って来た。此処は老人介護施設と登山道が上手く
共存できている。長峰山の伯母野山登山口もこんな風にならないかな。
快晴が一日続いた。目を凝らせば大峰の山が見える。山上ヶ岳らしい。
この山行は長峰大好きさんのインスタグラム、Jo999さんのヤマ
ップの行動記録を元に行いました。有り難うございます。最早自分で
興味対象を開拓できず、ネット情報におんぶに抱っこ状態のハムです。