何かと理由をつけて京都へ来ている。四条烏丸にある食堂のランチが
その本当の目的。今回は嵐山で開催されるライトアップを口実にする。
ランチを終えたのは12時半。四条大宮まで歩き嵐電に乗って嵐山へ。
ライトアップは17時から、それまで軽い山歩きをして時間を潰そう。
修学旅行生が姿が多い嵐山。最近の平日では一番の人出かと思われる。
渡月橋の背後に見えるのは烏ヶ岳。歩くのはもう少し南寄りの松尾山。
確証はないが中之島橋から見えるピークが松尾山だろうか。今日歩く
コースは京都一周トレイルの一部なので、道標の類に困るはずはない。
阪急電車の嵐山駅から西に向かって、突き当たった商店の壁に最初の
標識。普通は木製の標柱だが、よほど余地がないのだろう狭いバス道。
ほんの少し南下すると次の道標がある。スタートのこの場所は雑然と
した雰囲気の場所で、標識がなければ進むのを躊躇してしまいそうだ。
だが山に入ると幅の広い道が竹林の中に通じている。緩やかに上って
行く道の幅員は約1.5m。老婆谷もそうだがちょうど牛車が通る幅。
薪炭の運搬路だったろうと思うが、そんな話をしても家族は聞く耳を
持たない。またいい加減な事を言っていると、全く話に乗って来ない。
やや傾斜が上がり岩盤が露出する路面。単に人が歩いたから出来た道
ではなく、計画的に掘削し作られた道と思う。ただ周囲の林相は雑多。
ハイカーから四つ辻と呼ばれる広場に到着した。北東が僅かに開けて
北山が見えている。ドラム缶の防火水槽やベンチがあって小休止する。
四つ辻にある標識。トレイルが五角形に描かれているが、実際の道は
そんな形ではない。それでも単にピストンするよりは遥かに好ましい。
四つ辻からは普通の山道となるが傾斜は緩やかなまま。落葉樹は既に
葉を落としている。杉林のイメージが強い京都の山にしては明るい方。
初冬の乾いた空気の中、山歩きというよりも散策といった感じで進む。
というのも17時のライトアップまで、かなり時間の余裕があるから。
松尾山の頂上に到着。西側に少し展望がある。此処は以前保津峡から
歩いて来た事がある。その時は苔寺へ下ったので、今日の道は初めて。
その時よりも人為的な伐採が進んでいるようだ。無理に広げる必要は
ないと思うが、頂に眺望を求めるハイカーの気持ちも分らなくはない。
頂上でも30分ほど停滞していたが、まだ時間がある。ネット情報で
烏ヶ岳寄りに展望地があるらしいので、トレイルを離れ行ってみよう。
とはいえ良い道が続く。傾いた陽が差し込みとても明るい。暗くなる
までもう少し時間がかかりそう。ほぼ水平な道をのんびり歩いて行く。
やがて道は尾根の西側を進むようになる。大きな岩場が現れた辺りで
稜線が抜けているように思われたので、岩場を上ってみることにした。
稜線上には踏跡があって、少し北へ進むと東西が抜けた露地が現れる。
丸太造りのベンチもあるので、此処が目指していた展望地に違いない。
南側の長岡京あたりも望める。右から傾斜を落とす山影、稜線に鉄塔
が多いのでポンポン山か。空気が澄んでいれば大阪市街も見えるかも。
休んでいたら烏ヶ岳から賑やかな声が近づいてきた。高齢ハイカーの
団体さんだった。北側の道から上がってこられたので我々は退散する。
来た道を戻りトレイルに入ると、標識に展望良しと記された所に出る。
桂川に架かる渡月橋が望める。左下にはモンキーパークも見えている。
先程居た展望地はモンキーパークの尾根の頭。団体さんはその尾根を
下って行かれたようだが大丈夫かな。私有地でフェンスがあると聞く。
地形図には破線があったので、我々も歩きたかったのだが諦めている。
トレイルを辿り四つ辻の広場に戻ってきた。16時を過ぎて少し暗い。
元の道を下ってバス道に出たのは16時30分。ライトアップまでは
少し時間があるが、最初に法輪寺へ行き17時の点灯を待つとしよう。
法輪寺は渡月橋の東詰めから対岸に見える寺院。訪れるのは初めてだ。
どうやら拝観料は要らないよう。ライトアップ用の行灯や生花がある。
最初に目がついたのがヘルツとエジソンのレリーフ。境内に電信電波
を祀る電電宮があるという。由来はともかく良い所に目をつけたもの。
護持会員の名札を見ると資金豊富な大会社ばかりだ。多額の賛助金を
奉納されているだろう。拝観料が要らなかった理由はそんなところか。
そんな穿った見方をしなくても、法輪寺は十三参りで有名な寺であり
多くの信仰を集めているそう。広い舞台はそのためにあるのだろうか。
17時になると用意された行灯がいっせいに点灯された。まだ明るい
がすぐに暗くなるはずだ。嵯峨野を俯瞰する大舞台からの展望は見事。
渡月橋もライトアップされているはずだが、ここからでは分からない。
土産物店の灯りの方が派手だったりする。足元の歩道の行灯が面白い。
いったん大舞台から山門まで下ってきた。ライトアップされた石段を
スマホの夜景モードで撮ってみる。荒い画質になってしまい何だかな。
通常モードで撮るとブレてしまうが、実際に見えた景色には近いかも。
石段の途中から渡月橋の東詰めに下る歩道が、人も少なく興趣がある。
ライトアップされた渡月橋。家族は橋自体が光ると思っていたらしい。
なるほどその方がインパクトあるかも。昼間見ているのと変わらない。
桂川左岸から対岸の山肌を照らす。無理矢理な感じがして美しくない。
時刻は17時33分すっかり暗くなった。だんだん人出も増えて来た。
今度は人の流れに乗って竹林の小径へ向かう。各所に案内の人が立ち
自然と歩いて行けるが、相当な経費が掛かっている事は自ずと知れる。
最初の野宮神社辺りではブルーの光線で彩られていた。一瞬おやって
思う。高校の文化祭みたいなノリ。まあ一方通行なので歩いて行こう。
嵐山での花灯路は17年目の今年で終了する。冬の閑散期に観光客を
呼び込むのを目的として始まったが、資金難なので廃止されるらしい。
そういった報道を見聞きして来られた方も多いよう。我々もその類だ。
我々の後ろを歩いているオバさん二人が面白い。本当は三人だったが、
一人が先へ進んでしまったらしい。「ヨシ子さ~ん。もう帰ろうな!
おんなじ景色ばっかりで面白ない。もっと情緒のある所へ行こうな。」
と大声で何度も叫ばれる。これだけ大勢の人がいれば違うヨシ子さん
も居たりして、「あんた、呼ばれてるで。」という声も聞こえて来る。
結局ヨシ子さんは相当先へ進んでいたらしく、竹林の小径の終点まで、
オバさん二人組もご一緒した。もっと情緒のある所って何処だろうか。
その点は聞いて見たいと思ったが、オバさんの意見は尤もだと言える。
やっぱり昼間に歩く方が良い。竹林の小径を抜け小倉池横を北上する。
何だか人だかりが出来てる。散っていないモミジの木が有ったからだ。
やや無機質な感じのする竹林を見続けた後は、色褪せても優しい感じ。
照明の性能が良くなりすぎかも知れない。蠟燭や白熱電球の灯りなら
と思わないでもない。常寂光寺は拝観料が要るので料金所で折り返す。
落柿舎(らくししゃ)の前では、何かの光線の演出が行われているが、
パチンコ屋さんの電飾みたい。敢えて京都で見るべきものと思えない。
二尊院まで行くと無料で渡月橋近くまで送って頂ける。我々は20分
待つが、タイミング良くすぐ乗れた方もいた。意外に利用者は少ない。
渡月橋に戻って来たのは19時ちょうど。法輪寺に入る機会を得た事
が一番の収穫。夜の嵐山を散策も楽しんだ。ありがとうございました。