此のところ京都に来る理由が、美味しい昼食を食べる為となっている。
食事を終えて12時30分頃に四条烏丸Eバス停から、市バスに乗車。
仁和寺に到着したのは13時を過ぎていた。壮麗な二王門を見上げる。
今日の目的は御室八十八か所巡りだ。仁和寺の境内からスタートする
訳ではないが、御室桜の季節を除いて無料で入場できるので、見学を
兼ねて通り抜けよう。拝観料が必要なのは庭園や御殿と霊宝館である。
広々とした仁和寺の境内。中門背後に見えるポコポコした山が、これ
から歩く成就山だろう。八十八か所巡りはスタートもゴールも境内の
西側にあるので、三つ見えるピークを全部歩く訳でもないように思う。
中門を抜けると左側に、御室桜(おむろざくら)の並木が目に入るが、
全て葉を落としていた。右側には五重塔が聳え立っている。見学した
いけど、まずは成就山を済ませ帰りに時間があれば立ち寄ってみよう。
西門の手前に八十八か所巡りの案内図がある。石柱に順拝約二時間と
記されている。これには各御堂の参拝の時間も入っているのだろうか。
とにかく標高差は150m程で、距離3kmならば緩やかな道のはず。
西門から130m西へ住宅街を歩くと、スタート地点がある。是より
阿波の国という石柱があった。つまりこのコースは四国八十八ヵ所を
模したものとなっている。約二百年前の文政年間に設けられたと云う。
四国八十八ヵ所と同じ寺が3kmの間にあるという。単純に割っても
33mに一つ御堂がある計算である。よく似たものは各地にあるけど、
小さな祠や石仏等が多い。歩き始めは不思議と明るい針葉樹の植林帯。
コースタイムが2時間なら、足の遅い我々は3時間掛りそう。家族は
18時に夙川の病院に診察予約がある。京都からだと2時間は掛かる。
16時に下りたい。最初は各御堂に参拝もせず、ただ先を急いでいた。
現存する御堂はさして古い建物ではなさそう。個人の寄進で建てられ
たようで、施主の個人名が記されている。それぞれ若干造りに違いが
あるのは、施主の好みだろうか。本家の四国の寺を模しているものか。
二十三番の薬王寺脇には展望所があり西京区を一望に出来る。正面に
雙ヶ岡(116m)が低い割に目立っている。暗い雲が低く垂れ込め、
長岡京辺りでは小雨が降っていそう。季節風が吹いて時雨模様の一日。
此処までコースはコンクリートで固められていたが、岩盤が露出する
部分では路地のままである。この辺りからは空身の地元の人に何度か
抜かれる。毎日歩かれるのか参拝はされず、皆さんスタスタとお早い。
主稜線に出ると狭いが南側の展望があった。足元に仁和寺の五重塔が
大きい。その向こうの緑地帯は全て妙心寺の境内と併設の学校である。
京都タワーが良く目立つ。背後に喜撰山があるはずだが同定できない。
三十六番は一際立派な御堂である。その傍にはモミジの大木が真っ赤
になっていた。番号の通り最奥ではないのだが一番山深さを感じた所。
此処まで来ると標高も上りきった感で、この先楽だと思わせてくれる。
他の御堂は全て四角形だけど、此処だけは六角形の四十一番。家族は
御堂の中を覗いて、十一面観音っていうのに御顔が一つしかない等と
訳の分からぬ事を言っている。中が暗くよく見えなかっただけだろう。
路傍に「愛宕方面眺め良」との道標があった。ほんの少し北へ入ると
昔日の山抜けの跡らしく北西の眺望があった。愛宕神社の遥拝所では
ないようだ。考えてみれば仏教寺院から、神社を拝むなんてないはず。
家族は御堂の中の仏像に興味を持ったようだが、ハムは関心無いまま。
唯一気になったのは大きな石碑。形状が魚みたい。和歌が掘ってある
上には、何やら不可解な記号がある。帰って調べても分からなかった。
一番札所から50分ばかりで四十八番の西林寺に到着する。此処には
成就山(じょうじゅさん)頂上の看板がある。この山には三角点等は
ないので曖昧な感じ。実際の標高は先の愛宕山展望所辺りの方が高い。
まあ八十八か所巡りの中で最高所という事だろう。丁寧な造りの私製
ベンチが三つある。家族が木琴みたいと云うベンチは、自然な曲線で
座り心地がすこぶる良い。此処に座ってヨグルトを各自2本の小休止。
頂上からは西側の嵐山方面の展望が良い。遠くの高い山は小塩山かな。
谷を挟んだ緩やかな尾根が先程歩いていた所だろう。一つ二つ御堂の
屋根が日光を反射している。その向こうに長尾山、小倉山を同定する。
頂上から九十九な巡拝路を下って行くと、南側が広く開けた所に出た。
眺望は頂上より遥かに広い。夏の夜に夜景を見に来るのも良さそうだ。
此処も私製ベンチが二基置かれている。時間に余裕があれば休憩適地。
五十三番の円明寺は険しい岩場の上に建っている。順路は此方だけど
裏側からも回り込める。ちょっとしたアトラクションである。下から
見上げると御堂で行き止まりかと思いきや、順路を示す看板があった。
御堂と岩場の間に隙間があり抜けて行くようだ。すぐに広い道となり
続けて二つの御堂がある。順路と迂回路と入り組んでいて、迂回路を
進んだはずの家族の姿を見失う。大声で呼ぶと頭の上から返事をする。
63番の吉祥寺。一目見て気に入った御堂。もし自分が住むなら此処
が良い。樹木に囲まれ落ち着いた雰囲気な上に、南西側に展望もある。
この辺りでも空身の人に何度も抜かれた。皆さん走るように下られる。
ただ山頂で出遭った御夫婦だけが、全ての御堂に参拝されて行かれる。
信心の無い我々だけど、もう少しゆっくり回りたかったと思い始める。
此処の先は順路が複雑に入り組んでいる。グルグル同じ所を周回する。
道沿いに御堂を作ってきたら、残りの距離が足らなくなっていしまい、
帳尻合わせに御堂を沢山建てたみたい。同じ道をピストンする箇所が
幾つもあったりする。貯水池上の御堂。湿気が多そうで住みたくない。
八十八番の大窪寺。これで阿波、土佐、伊予、讃岐の国を回った事に
なり、四国八十八ヶ所霊場をお遍路したのと同じ御利益があると云う。
途中には朽ちた宿所もあったりと、昔は盛んに参拝されたのであろう。
時刻は15時ちょうど、結局1時間45分で仁和寺西門に戻って来た。
家族の病院には十分間に合いそうなので、少し境内を見学していこう。
仁和寺は御室桜が有名だが、境内にはモミジの木も沢山植わっている。
立派な金堂。とても古い建物らしいが煌びやかな装飾で現代的に思う。
経蔵から紅葉した疎林を抜けて五重塔の裏に出る。既に見頃となって
いるが観光客の姿はそんなに多くない。意外に穴場なのかも知れない。
やっぱり五重塔がフォトジェニック。1644年建立、高さ約36m。
外観だけにしろ無料で見られるのは何だか凄い。此処二年ほどの間に
何度も京都に来ているのに、まだまだ見ていない風景が沢山ありそう。
ハム的に仁和寺の好きな所は、空がとても広い事。境内自体は近くの
妙心寺の方が広いかも知れないが、四囲の建物が目に入らず開放的だ。
そういった視覚効果も考えて、設計されているのではと思ってしまう。
観音堂の瓦奉納。10月に将棋の竜王戦が行われた。競輪の吉岡稔真
が現役時代にサインを求められると、調子が良い時には不動心と書き、
悪いと夢と書いていたのを思い出す。明日から竜王戦第四局が始まる。
だんだん空が怪しくなってきた。ハイカーにとっては成就山だけでは
物足りないが、仁和寺や妙心寺の観光を組み合わせれば半日楽しめる。
歩き足らなければ雙ヶ岡を越えて、JR花園駅まで歩くのが良さそう。
近くに御室仁和寺駅があるのを忘れて、嵐電妙心寺駅へ歩いてしまう。
帷子ノ辻駅で乗り換えて四条大宮へ出る。嵐山からの電車は観光客で
満席だった。阪急電車に乗ると小雨が降りだす。夙川駅5時30分着。