摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

成就山(236m)・・・京都市右京区

此のところ京都に来る理由が、美味しい昼食を食べる為となっている。

食事を終えて12時30分頃に四条烏丸Eバス停から、市バスに乗車。

仁和寺に到着したのは13時を過ぎていた。壮麗な二王門を見上げる。

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今日の目的は御室八十八か所巡りだ。仁和寺の境内からスタートする

訳ではないが、御室桜の季節を除いて無料で入場できるので、見学を

兼ねて通り抜けよう。拝観料が必要なのは庭園や御殿と霊宝館である。

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広々とした仁和寺の境内。中門背後に見えるポコポコした山が、これ

から歩く成就山だろう。八十八か所巡りはスタートもゴールも境内の

西側にあるので、三つ見えるピークを全部歩く訳でもないように思う。

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中門を抜けると左側に、御室桜(おむろざくら)の並木が目に入るが、

全て葉を落としていた。右側には五重塔が聳え立っている。見学した

いけど、まずは成就山を済ませ帰りに時間があれば立ち寄ってみよう。

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西門の手前に八十八か所巡りの案内図がある。石柱に順拝約二時間と

記されている。これには各御堂の参拝の時間も入っているのだろうか。

とにかく標高差は150m程で、距離3kmならば緩やかな道のはず。

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西門から130m西へ住宅街を歩くと、スタート地点がある。是より

阿波の国という石柱があった。つまりこのコースは四国八十八ヵ所を

模したものとなっている。約二百年前の文政年間に設けられたと云う。

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四国八十八ヵ所と同じ寺が3kmの間にあるという。単純に割っても

33mに一つ御堂がある計算である。よく似たものは各地にあるけど、

小さな祠や石仏等が多い。歩き始めは不思議と明るい針葉樹の植林帯。

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コースタイムが2時間なら、足の遅い我々は3時間掛りそう。家族は

18時に夙川の病院に診察予約がある。京都からだと2時間は掛かる。

16時に下りたい。最初は各御堂に参拝もせず、ただ先を急いでいた。

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現存する御堂はさして古い建物ではなさそう。個人の寄進で建てられ

たようで、施主の個人名が記されている。それぞれ若干造りに違いが

あるのは、施主の好みだろうか。本家の四国の寺を模しているものか。

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二十三番の薬王寺脇には展望所があり西京区を一望に出来る。正面に

雙ヶ岡(116m)が低い割に目立っている。暗い雲が低く垂れ込め、

長岡京辺りでは小雨が降っていそう。季節風が吹いて時雨模様の一日。

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此処までコースはコンクリートで固められていたが、岩盤が露出する

部分では路地のままである。この辺りからは空身の地元の人に何度か

抜かれる。毎日歩かれるのか参拝はされず、皆さんスタスタとお早い。

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主稜線に出ると狭いが南側の展望があった。足元に仁和寺五重塔

大きい。その向こうの緑地帯は全て妙心寺の境内と併設の学校である。

京都タワーが良く目立つ。背後に喜撰山があるはずだが同定できない。

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三十六番は一際立派な御堂である。その傍にはモミジの大木が真っ赤

になっていた。番号の通り最奥ではないのだが一番山深さを感じた所。

此処まで来ると標高も上りきった感で、この先楽だと思わせてくれる。

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他の御堂は全て四角形だけど、此処だけは六角形の四十一番。家族は

御堂の中を覗いて、十一面観音っていうのに御顔が一つしかない等と

訳の分からぬ事を言っている。中が暗くよく見えなかっただけだろう。

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路傍に「愛宕方面眺め良」との道標があった。ほんの少し北へ入ると

昔日の山抜けの跡らしく北西の眺望があった。愛宕神社の遥拝所では

ないようだ。考えてみれば仏教寺院から、神社を拝むなんてないはず。

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家族は御堂の中の仏像に興味を持ったようだが、ハムは関心無いまま。

唯一気になったのは大きな石碑。形状が魚みたい。和歌が掘ってある

上には、何やら不可解な記号がある。帰って調べても分からなかった。

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一番札所から50分ばかりで四十八番の西林寺に到着する。此処には

成就山(じょうじゅさん)頂上の看板がある。この山には三角点等は

ないので曖昧な感じ。実際の標高は先の愛宕山展望所辺りの方が高い。

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まあ八十八か所巡りの中で最高所という事だろう。丁寧な造りの私製

ベンチが三つある。家族が木琴みたいと云うベンチは、自然な曲線で

座り心地がすこぶる良い。此処に座ってヨグルトを各自2本の小休止。

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頂上からは西側の嵐山方面の展望が良い。遠くの高い山は小塩山かな。

谷を挟んだ緩やかな尾根が先程歩いていた所だろう。一つ二つ御堂の

屋根が日光を反射している。その向こうに長尾山、小倉山を同定する。

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頂上から九十九な巡拝路を下って行くと、南側が広く開けた所に出た。

眺望は頂上より遥かに広い。夏の夜に夜景を見に来るのも良さそうだ。

此処も私製ベンチが二基置かれている。時間に余裕があれば休憩適地。

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五十三番の円明寺は険しい岩場の上に建っている。順路は此方だけど

裏側からも回り込める。ちょっとしたアトラクションである。下から

見上げると御堂で行き止まりかと思いきや、順路を示す看板があった。

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御堂と岩場の間に隙間があり抜けて行くようだ。すぐに広い道となり

続けて二つの御堂がある。順路と迂回路と入り組んでいて、迂回路を

進んだはずの家族の姿を見失う。大声で呼ぶと頭の上から返事をする。

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63番の吉祥寺。一目見て気に入った御堂。もし自分が住むなら此処

が良い。樹木に囲まれ落ち着いた雰囲気な上に、南西側に展望もある。

この辺りでも空身の人に何度も抜かれた。皆さん走るように下られる。

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ただ山頂で出遭った御夫婦だけが、全ての御堂に参拝されて行かれる。

信心の無い我々だけど、もう少しゆっくり回りたかったと思い始める。

此処の先は順路が複雑に入り組んでいる。グルグル同じ所を周回する。

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道沿いに御堂を作ってきたら、残りの距離が足らなくなっていしまい、

帳尻合わせに御堂を沢山建てたみたい。同じ道をピストンする箇所が

幾つもあったりする。貯水池上の御堂。湿気が多そうで住みたくない。

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八十八番の大窪寺。これで阿波、土佐、伊予、讃岐の国を回った事に

なり、四国八十八ヶ所霊場をお遍路したのと同じ御利益があると云う。

途中には朽ちた宿所もあったりと、昔は盛んに参拝されたのであろう。

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時刻は15時ちょうど、結局1時間45分で仁和寺西門に戻って来た。

家族の病院には十分間に合いそうなので、少し境内を見学していこう。

仁和寺は御室桜が有名だが、境内にはモミジの木も沢山植わっている。

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立派な金堂。とても古い建物らしいが煌びやかな装飾で現代的に思う。

経蔵から紅葉した疎林を抜けて五重塔の裏に出る。既に見頃となって

いるが観光客の姿はそんなに多くない。意外に穴場なのかも知れない。

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やっぱり五重塔がフォトジェニック。1644年建立、高さ約36m。

外観だけにしろ無料で見られるのは何だか凄い。此処二年ほどの間に

何度も京都に来ているのに、まだまだ見ていない風景が沢山ありそう。

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ハム的に仁和寺の好きな所は、空がとても広い事。境内自体は近くの

妙心寺の方が広いかも知れないが、四囲の建物が目に入らず開放的だ。

そういった視覚効果も考えて、設計されているのではと思ってしまう。

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観音堂の瓦奉納。10月に将棋の竜王戦が行われた。競輪の吉岡稔真

が現役時代にサインを求められると、調子が良い時には不動心と書き、

悪いと夢と書いていたのを思い出す。明日から竜王戦第四局が始まる。

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だんだん空が怪しくなってきた。ハイカーにとっては成就山だけでは

物足りないが、仁和寺妙心寺の観光を組み合わせれば半日楽しめる。

歩き足らなければ雙ヶ岡を越えて、JR花園駅まで歩くのが良さそう。

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近くに御室仁和寺駅があるのを忘れて、嵐電妙心寺駅へ歩いてしまう。

帷子ノ辻駅で乗り換えて四条大宮へ出る。嵐山からの電車は観光客で

満席だった。阪急電車に乗ると小雨が降りだす。夙川駅5時30分着。

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