四条烏丸交差点でバス停Dを探し出し、事前に京都市交通局のサイト
で調べた101系統急行バスを待つが一向に来ない。時刻表を見ると
4月より運休しているよう。仕方なく12系統立命館大前行きに乗る。
金閣寺道バス停で下車し西へ進むと左大文字の火床が見える。今日の
目的地なんだけど、此方側からは上れない。右手に見える白い建物は
カトリック教会。なぜだか左大文字南麓にはキリスト教の施設が多い。
更に進むと金閣寺の入口。料金所前まで行ってみよう。3月に来た時
には見なかった修学旅行生達の姿が多い。一緒に中まで入らないのか
バスガイドや添乗員がタムロする前庭でも、紅葉は十二分に楽しめる。
昨年は紅葉時期に京都をウロウロして、寺院にも意外に無料ゾーンが
ある事を知った。いや有料ゾーンの人混みを考えれば、むしろ外側の
方が快適かと思える。再び門外に出て、境内の南側を回り込んで行く。
更に境内の西側に回り蓮華谷道から住宅街に入る。十字路を右に入る
所に、私設消防道路である旨の古びた立て看板がある。金閣寺の北西
角にあたる部分。緩やかな道を歩いて行くと逆U字形の車止めがある。
振り返ると衣笠氷室町の家並。家族は屋根を俯瞰するのが好きなので、
この景色が気に入ったようだ。その向こうに見えるのが衣笠山である。
石庭で有名な龍安寺の背後にある山、と言った方が分かり易いだろう。
事前にネットで調べた際は未舗装の林道だったが、新しい舗装道路に
なっていた。この先で少し幅員は狭くなるが、軽トラなら通れる幅の
車道が続く。金閣寺を守る防火帯の役目も併せ持つのではと思われる。
金閣寺を背に北に向っているが、火床は東側にあるはずだ。前方に
見える稜線に乗って右に回り込むのだろう。予想していたより迂遠
な行程のようだ。既に火床の標高より高い所にいるように思われる。
車道の終了点からもスッキリした良い道が続いている。灌木ばかりの
明るい林相である。杉の植林はもちろん無く、松の木さえ見かけない。
一直線の緩やかな山道を進むと、壁のように聳える尾根に突き当った。
そう思ったのは余りに平坦な道が続いたからで、少しだけ急な部分を
上がれば、右手の鞍部に向って斜上する緩やかな道となる。シダ藪が
見事に刈られている。これはもうプロの仕事だ。何の目的なんだろう。
鞍部から一投足で小ピークに達する。此処が山頂かと思うが違うよう。
ただ今日の行程では最高所であり標高は238m。此処からいったん
下りが続く。実際の標高差以上に下ったように思うのは何故だろうか。
小さな登り返し。尾根上のコブのような所が231標高点の大文字山。
私製標識が一つだけある。まあ頂上を目指し来る人はいないのだろう。
伐木の丸太で矢印が作ってあった。示す方向に左大文字の火床がある。
どんどん下って行くと火床に飛び出る。大の字の一番上から見る景色。
こんもりした船岡山の向こうに、如意が岳の大文字火床が見えている。
さらに中央奥には音羽山であろう。頂上の高圧鉄塔さえも視認できる。
大の字の要まで下ると東西の景色が広がる。佛教大学のキャンパスが
印象的だ。その先にはスクッと姿勢の良い比叡山から水井山にかけて
の稜線も懐かしい。妙法の火床のある宝ヶ池辺りも見えているはずだ。
西側は逆光となるのでやや暗くなるが、その中で金閣寺が輝いていた。
写真は十倍の望遠で撮ったものだが、肉眼でもそれとハッキリ分かる。
さて、大文字山を除く五山の送り火の山は、基本的に入山禁止である。
この左大文字も南麓からの正式な道は閉ざされている。なので大きく
迂回して上がって来た。ネット上に此処から強引に下ったという記事
も散見されるが、修道院等の宗教施設が多い事からも絶対に止めたい。
また登り返し大回りして元の道を戻る事になるが、それは仕方がない。
今日の行程上は一つも立入禁止等の看板は無かった。そこが他の火床
とは大きく違う点。その意を汲んでこの現状は維持したいものである。
それどころか最近に草刈りがされて、予想以上に快適な散策が出来た。
古都と記された京都市の標識杭を幾つか見たが、何を意味するもので
あろうか。山道の整備と関係があるのか。ネットで調べるが分らない。
緩やかに一直線に下って行く尾根は「長尾」と名付けたい伸びやかさ。
正面には京都タワーがひときわ高い。それにしても京都の街は広いな。
高さを求めなければ四囲に歩ける山も多い。景色を見乍ら改めて思う。
帰りも金閣寺の門前に回り、さらに東進してから千本通を下って行く。
JR二条駅まで歩いたが、この区間が意外に長くて堪えた。ただ途中
のケーキ屋さんで、安くて美味しいパンを購入出来たのが幸いだった。
地理院地図からも正式な名は大文字山であるが、如意が岳の大文字山
と区別する為、通称の左大文字山が多く使われる。標題はそれに従う。