摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

蓼科山(2531m)・・・長野県茅野市

朝が明けても日が差さない。夜中に雨音は聞かなかったが窓を開けると

小雨が降っていた。二重窓だから静かだったのだ。妙なことに感心する。

早立ちして八子ヶ峰を越えて、登山口まで歩こうと思っていたが諦めた。

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天気予報は午後から回復するという。ゆっくり宿を出ようと二度寝する。

朝食も昨夜コンビニで買ったオニギリで済ませた。雨は時折激しくなる。

定時のバスは10時11分だけど、実証運行のバスが9時48分に通る。

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宿から10分程歩いて東白樺湖バス停。レイクサイドプラザという名の

土産物店の裏手。実証運行を含めた時刻表を、パウチして吊るしてある。

まだ少し時間が有ったので、ローソンに行き飲料を買い足したりもする。

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ボンネットバスを模した小型バスが来た。登山口までの運賃は400円。

9時54分と登山するには遅い到着だが、2時間掛け八子ヶ峰を越えて

来ることを思えば、体力の温存もできているので許容範囲のスタートだ。

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駐車場は100m程白樺湖よりにあるが、日曜にもかかわらず3台しか

無かった。休日に百名山なので、開聞岳のような混雑を危惧していたが、

悪天で回避できたよう。雨は止んでおり傘をザックに仕舞って歩き出す。

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蓼科山は単純に富士山のような傾斜の山と考えていたが、同じ火山でも

造りが少々違うようだ。既に6合目辺りにいるはずなのに緩やかな草原

が続いている。ダケカンバの疎林が高原らしい雰囲気を醸し出している。

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10分足らずで草原は終り、落葉樹の急斜面の上りが始まる。ちょうど

ガスが晴れて妙に明るくなった。家族は骨折時に入れていたプレートを

10日前抜いた。だが予後が悪く左腕が痛む。此処からストックを使う。

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後で考えればこの日、蓼科山で一番美しかったのは、この急斜面の林相

であったように思う。標高差80m程だが落葉樹の純林が続く。日頃の

運動不足で息が上がる。家族も慣れないストックの扱いに苦労している。

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急斜面をこなすと平らな場所に出た。この地形が思ったよりも長く続く。

後で調べるとコニーデと呼ばれる台地上の火山に、円錐形のトロイデを

重ねた複式火山であるそうだ。ケーキ台の上にオニギリを乗せた感じ?。

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平地を20分歩くとまた急斜面に突き当る。ゴロゴロした岩が積み重る。

周囲は針葉樹を主体とした森が続く。予報ではかなり気温が低くなると

言われていたが、それほどは下がっていないようだ。雨具が少し蒸れる。

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休憩して雨具のズボンを脱いだ。バスを降りてからは雨は降っていない。

頭上の雲が流れる度に、明るくなったり暗くなったりを繰り返している。

淡々と脚の上下運動を繰り返し高度を上げて行く、景色の楽しみはない。

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時折ガスが薄くなり、蓼科高原の別荘群が見えたりもするが、また濃い

ガスに覆われる。経験的に雨が止んでからも山の上では半日は晴れない。

少し残念だったのは紅葉。針葉樹が多いせいか、あんまり綺麗ではない。

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やや平たい所に出ると道標があった。2113標高点付近。登山口から

山頂までの中間地点。この先の幸徳平まで緩やかな道である。イメージ

ではバースデーケーキの2段目の端っこにいる。思ったより歩けてない。

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登るにつれ道が荒れてきた。登山道に並行して大きな土砂崩れ跡もある。

かなりヘバッてきたのでローソンで買ったコーヒーと紅茶で小休止する。

登山口の標高が1720mあり、頂上まで標高差は800mにすぎない。

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琵琶湖畔から比良山の方が、高度差は大きいのに情けない。つかの間の

青空に、立ち枯れた針葉樹林が輝く。八ヶ岳縞枯山と同じ現象がこの

山の南西斜面に現れるという。帯状に針葉樹林が世代交代する為だそう。

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周囲の樹林が低くなって来た。どうやらバースデーケーキの上に乗る

オニギリに辿り着いたようだ。下半分に海苔が巻いてある。その辺り。

家屋は左腕の痛みが強くなり遅れがち。バランスをとり難いみたいだ。

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蓼科山頂の特徴である溶岩の積み重なりが現れた。ここまで二時間半

も掛かっている。できれば下りは違う道、天祥寺原から竜源橋を歩き

たいと思ってたが無理かもしれない。頭の中から選択肢が消えていく。

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スキー場で使うポールが道筋を示す。大嫌いなペンキのマーキングも

此処では仕方ないかも知れない。頂上へ直上せずに南側から回り込む

ように付けてある。昭和57年版の昭文社地図では読み切れない部分。

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頂上までの標高差残り80m。本当は一番楽しみにしていた区間だが、

ガスに巻かれていれば、淡々と高度を稼ぐよりない。気温も低くなり

家族はフリースの手袋をしている。まだダウンを着込むほどではない。

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岩が大きくなった。隙間も広く深くなって踏み外すと危ない。左手が

使えない家族は歩みが極端に遅くなる。ストックも此処では使えない。

慎重に歩いている。火山岩で濡れてもフリクションが良いのが救いだ。

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山頂南側を回り込んで将軍平からの登山道に合流する。山頂ヒュッテ

の少し上。此処は営業小屋で一泊二食1万円から。この日も改修工事

をされていた。30分北東に下る将軍平に、もう一つ営業小屋がある。

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主稜線に出た途端に強風と寒気に襲われた。体感温度は一気に10度

下がったろう。数本しかない灌木に霧氷が発達している。合流点から

三角点まで3分の近さだが、写真を撮っていたら10分も掛けていた。

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13時ちょうど蓼科山頂上に到着。一等三角点は立派だけど山名碑は

しょぼい。公設の立派な山名板は、少し下ったヒュッテの近くにある。

火山らしく御鉢周りコースもあるらしいが、とても回る気になれない。

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風を避け岩陰で行動食を摂る。その僅か10分程の間に3組も登って

来られた。恐らく北側の登山口からだろう。私製らしき山名板を持ち

記念写真。ゴム手袋が写り込んだ失敗作だが寒くて撮り直し出来ない。

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湿気を含んだ強風でスマホの表面に薄い氷が張る。指紋認証しないし、

何とか起動させてもタッチに反応しない。逃げるように下って来ると

風が収まり気温も上る。なぜ道が直上せず南側を迂回するか分かった。

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残念だが時間的に別コースを下るのは諦め、同じ道を下ることにする。

頂上で少し嫌な事があった。後から登って来たオバさんが異様な大声

とテンションで喋り続けている。何事かと思ったら動画を撮影してる。

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今の時代の記念撮影だろう。そういや利尻山でも同じ様な事があった。

ユーチューブにそんな動画が沢山アップされている。撮影スポットを

独占するし、此方が気恥ずかしくなる様なセリフは山の雰囲気を壊す。

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登山道が静かだっただけに残念に思う。マイカーがあれば北の七合目

登山口や、大河原峠の方が山頂に近い。そちらがメインコースのよう。

この日ピストンした道では、山頂部を除くと3組しか出会わなかった。

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少し晴れ南アルプスの山影が見えている。明日以降の予定もあるので、

このまま晴れてくれと願う。だがしばらくすると暗いガスに覆われる。

山頂部の岩場は無難にこなせたが、その後下りに時間が掛かっている。

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バースデイケーキ一段目まで下って来た。ここでトレイルランナーに

追い抜かれる。あっという間に視界から消えて行かれた。彼らはこの

コースを2時間で往復されるそうだ。コースタイムは4時間ちょうど。

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その道を我々は6時間も掛かっている。たまたま茅野市実証運行

行っていたので、今回の山行は成り立っている。10月24日までは

通常一日2本のバスが6本に増やされている。最終便に間に合いそう。

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吊るされていた実証運行便を含む時刻表が、風に飛ばされたか紐だけ

が残っているバス停。バスが見えるまでは不安だった。広報を含めて

もっとしっかりしないと実験結果が出ないんじゃないだろうかと心配。

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このバスは北八ヶ岳ロープウェイ止め。一度降ろされ15分後に同じ

バスが茅野行きとなる。初乗り料金を2度払うので相当割高となった。

北八ヶ岳は晴れ上がっているのに、いまだ蓼科山はガスを被っている。

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101人乗りのゴンドラ。搬器は30年経っているそうだが、駅舎や

付随する施設は新しくて美しい。ここまで廃墟化しつつある昭和的な

観光施設ばかり見ていたので、少なからず驚いた。高級感すら感じる。

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茅野駅には17時16分着。バス料金は450円+1300円。さて

我々の今夜の宿は、駅から3km程離れた諏訪インタチェンジの近く。

暗ければタクシーでと思っていたが、まだ薄明るいので歩いて行こう。

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翌朝、ホテルの部屋から見る八ヶ岳連峰。残念ながら蓼科山は手前の

山に隠れて見えていない。諏訪インターチェンジの付近は、日本国内

でチェーン展開している飲食店は、全てあるんじゃないかと思われた。