阪急嵐山駅からJR嵯峨嵐山駅へ乗り換えて、嵯峨野線馬堀駅に来た。
相変わらず京都の宿が投げ売り状態なので、京都の近辺で歩ける所を
探してみた。この駅から唐櫃越という道が阪急上桂駅まで続くという。
いわゆる古道で400m程度の山頂を越えて行くらしい。余り期待は
できないが。駅から駅へ歩くという点が我々にとっては好都合だった。
馬堀駅はトロッコ列車や宇治川下り等、観光の起点ともなる駅である。
駅から東へ向けて歩き登山口に向かう。正面に見えるのが最初に登る
みすぎ山であろう。主稜線までは急傾斜の山腹が壁の様に立っている。
古道なので、もっと緩やかなイメージであったので、やや意外に思う。
迷いようのない程多くの道標が設置されている。本能寺への道と付記
されているが、本能寺の変で明智軍の別動隊がこの道を使ったという
伝承があるという。しかしネットで調べてみると事実ではないらしい。
道標に従い集落の中の仏坂という道を辿り、如意寺の駐車場奥に入口
があった。このお寺は明智光秀の丹波攻めで、滅ぼされた山城の跡に
という。伽藍は新しいが、歩いて行くと古い石垣が諸所に残っている。
獣除けの柵を抜け進む。此処の扉も外開きである。どうして内開きに
しないのだろうか不思議に思う。鍵の掛かりが甘いと猪が押して外に
出てしまい、戻れなくなる。内開きなら鍵が無くても猪は外に出ない。
手入れが悪くて貧弱な杉の人工林の中を、九十九に山道が登って行く。
古道というと長く人が歩いて深く掘れているものだが、普通の山道に
すぎない。蒸し暑くて二度三度と休憩する。運動不足がたたっている。
主稜線に近づくと何故だか沢の中を歩くようになる。霞んでいるのは
異様に湿度が高いのか。東から差し込む朝日のせいか。高齢者の団体
が、道の中央に座ってマスクなしで喋ってる。本当に勘弁してほしい。
主稜線に出れば、平坦な道となる。今回も起点と終点を調べただけで、
途中の様子は敢えて調べなかった。地図も持っていない。今のところ
山頂を示す道標は現れていない。たぶんこのまま進めばよいのだろう。
いきなり高圧鉄塔の建つ明るい山頂に飛び出した。時刻は9時45分。
馬堀駅から1時間15分も掛かっている。普通の人は1時間弱だろう。
景色は良いが日陰がなくて、残暑厳しいこの日は休憩に適していない。
京都のベッドタウンとして発展する亀岡の街。一年前に歩いた半国山
が見えているはずだが、同定できなくて残念だ。多分見えている中で
一番高い山だ。ところで山頂にある高圧鉄塔の銘板を確かめて驚いた。
大黒部幹線六七六とある。二年前に野坂岳の南尾根で見たのが大黒部
幹線四三八鉄塔。その間238本もの鉄塔立っていると思うと感動的。
調べると富山県から大阪府まで、724本の鉄塔で繋いでいるそうだ。
鉄塔マニアではないが、田舎では関電の巡視路を頼りに山歩きを始め
たので多少の愛着はある。山頂は暑すぎたので休憩もせずに先に進む。
後で考えると此処から林道に出るまでの間が、この日一番良かった所。
道は主稜線から外れ尾根の北側を行く。高圧線の下なので伐採されて
広い眺望が得られる。正面に愛宕山。足元には屈曲する保津峡の流れ。
嵯峨野線の鉄橋も見えている。鉄塔数は目視した範囲で28本もある。
だが山頂からの山道は10分と続かず、未舗装の林道に出てしまった。
どうやら此処からは延々林道が続きそう。後で確かめると地形図上で
実線で記された区間で2km弱続いている。鉄塔の保守の為だろうか。
林道の周囲は雑木林で見るべき植生もない。ほとんどアップダウンの
ない林道を淡々と歩いて行く。朝早くに自宅を出たのでお腹が空いて
いるのだが、座って休憩できる所が見当たらず、仕方なく歩き続ける。
林道を30分ばかり歩くと舗装路に飛び出した。左側は広い駐車余地
となっている。事前に調べていなかったので舗装路まであるとは思い
もよらず、少々がっかりしてしまう。でも休憩出来そうな所があった。
駐車場の脇に私製ベンチが拵えてあった。それに嬉しいことに木陰だ。
涼しい風が吹き抜ける。丸太に腰掛けて、オニギリの昼食を済ませた。
今日の水分は500mlペットボトル5本。ここまでで半分以上消費。
昼食を終えて舗装路を進む。この道を歩いていて思うのが、何も遺構
がないこと。京都から近いのに山に入ってから、祠も石仏も現れない。
名前の付いた岩とかもない。昔から往来は少ないのかと思ってしまう。
この舗装路ではシキミを採っていた軽バンの御夫婦に出遭った。地元
の人ならば通行できる道なんだろう。20分程で山道との分岐に至る。
家族は右のフェンスの切目の先を気にしてる。ただ地形図に道はない。
舗装路から道標に従って山道に入る。よく踏まれた道だが倒木が多い。
潜ったり乗り越えたり、山崩れした個所もあったりで、何だか疲れる。
山道はピークを避けて縫うように続いて行く。アップダウンは少ない。
この辺りから南側に大きな山塊を見るようになる。小塩山 ( 642m )や
ポンポン山 ( 679m )かと思われる。彼我の高低差で実際の標高よりも
高く見えるし山容に重量感さえ感じる。三叉路に沓掛山の標識がある。
左へ20m程で三角点のある沓掛山頂上。414.7mと言う事だが、
柱石の様子から、30cmは標高が低くなっているんじゃなかろうか。
周囲は樹林に囲まれ展望はないが、木陰に私製ベンチがあり休憩する。
元の三叉路に戻って唐櫃越の道標に従って進む。沓掛山の頂上分岐を
過ぎてから、道が俄然と良くなった。それにつれてハイカーとも出会
うようになった。京都市内から沓掛山ピストンだけの方が多いようだ。
大きな風倒木帯もあるが全て処理されており、跨いだり潜ったりする
事はない。ただ全く標高が下がって行く様子がない。ほとんど平坦な
道を歩いて行く。実際は徐々に下がっているが感覚的には得られない。
展望所に出た。風倒木によって出来た空き地を私的に整備されている。
ベンチの工作が中々に秀逸だ。丸太を此の場所で厚い板に加工されて
いる。チェーンソーでも難しいと思うがどんな方法があるのだろうか。
生木を故意に伐採されているのは感心出来ないが、展望は確かに良い。
左側には比叡山から比良山系まで望める。正面に大文字山。右手には
音羽山。桂川の流れも見えるのが何とも良い。下山するのも此の方向。
展望所からは桂坂野鳥遊園敷地の上端を通るようで、道が複雑になる。
手書きの案内図には、阪急上桂駅まで3km1時間半と記されている。
そんなに掛かるの?ってガッカリしたけど、実際には約50分だった。
道はようやく徐々に下降していく。ストンと急傾斜が現れると竹林の
道となる。長岡京辺りほどに綺麗な竹林ではないが、金網で囲われた
筍畑と思われる処もある。盗掘除けにかオモチャの蛇が20匹もいる。
竹林を抜けると墓場に出た。いつもなら墓石の写真は載せないように
してるのだが、正面に京都タワーが見るスッキリした風景なので敢え
て掲載した。このまま住宅街を直進していけば阪急上桂駅に突き当る。
14時前に上桂駅に到着した。馬堀駅からは5時間半も掛かっている。
ネット上の記録よりかなり遅い。それにしても二人共凄く疲れている。
最初の上りを除くと、アップダウンも余り無かったのに何でだろうか。