5月20日正午頃に芦屋市内の城山で、熊を見たという通報があった
という。このニュースは京都で見ていた。少し間が空いたがその付近
と絡めて、横池に行ってみようか。開森橋から手前に見えるのが城山。
阪急の駅前広場には、何の注意書きも無かった。山芦屋町内も至って
普通。高座滝への道から右に外れ、城山口に向かう。前を御爺さんが
一人歩いておられる。登山口の岩に座り「85才だから此処までしか
よう来ない。」と話して下さるが、舗装路では我々より足は早かった。
その御爺さんの背後に、芦屋市が作った注意喚起の張り紙が立掛けら
れていた。「熊とおもわれる目撃情報」と少々トーンダウンしている。
登山道を進むと道畔谷への水平路が閉塞されている。令和6年度まで
治山工事が続くというが、問題はこの道は歩道として認めないという
張り紙があること。工事後も通行できるかどうか分からない事になる。
かつて西山谷は普通の登山コースであった。今も神戸市の公設道標が
残っている。ところが六甲砂防事務所は通行権を認めず、堰堤工事後
迂回路を設けなかった。昭和60年の灘高生事故の原因と思っている。
城山の頂上ベンチから。ここまで出会った方は10名以上。ほとんど
ご近所のご老人達。毎日軽装で歩いておられるよう。とても緩い空気
が流れている。ニュースから数日間、別に何も変わってないんだろう。
北上すると高圧鉄塔がある。建替え工事中で鉄塔の上には6名の人が
作業している。芦屋市の張り紙では此処が発見場所との事。なるほど
広く伐採されており、警戒心の強い熊を遠くから見る事が出来たかも。
更に北上すると鷹尾山(272m)頂上。ところでハムと家族も過去
3回、熊に出遭っている。だがその話を人にしても、大抵は話半分に
しか聞いて貰えない。犬じゃないとか、そんなに大きくなかろうとか。
城山は高級住宅街にあるので大型犬を飼っている家も多いが、むしろ
飼い犬が独りで散歩してたら怖い。その昔ならシンナーを吸いに山に
来ていた中学生も多くいた。黒パーカーのフードを被っていたらとか。
通報した目撃者にはそんな疑問も呈されただろう。さて高座の滝への
分岐にも芦屋市の張り紙が有った。以降は見なかったので、さし当り
城山登山口から此処までが注意箇所という事だろう。割合に狭い設定。
新神戸線一八鉄塔。さてこの記事を書いていると、25日17時頃に
別の目撃情報もあったと報じられた。我々が見かけたのは子猫だけだ。
猪の気配も感じなかったのは、熊を恐れて避難してるからかも知れず。
11時30分だが、お腹が空いたので昼食にしよう。カットフルーツ
のパックにチャーハンを詰めて来た。話題は過去遭遇した熊のことだ。
双方の記憶が若干違うのが面白い。備忘の為記事にして残しておこう。
険しい荒地山を見上げる。最初に出遭ったのは湖北の赤坂山から三国
山へ歩いていた時のこと。ハムが先で家族は3m程離れて歩いていた。
強い獣臭がすると思ったら、仔熊がハムの前を横切って逃げて行った。
呆然とする間もなく、ハムと家族との間を、親熊が猛然と仔熊を追い
かけて行く。もし家族がハムと近かったらぶつかっていたに違いない。
二回目は上越国境。平標山から谷川岳に向かう稜線で幕営していた時。
テントから5m程離れて炊飯していた。家族が大きな犬がいると言う
ので振り返ると熊がテントの横を歩いていた。此方の気配に気づいた
熊はたちまち登山道を走り去って行った。その後ろ姿は今も忘れない。
三回目は信州の岩菅山から志賀高原に向け、長い林道を歩いていた時。
家族が退屈の余り「熊でも出て来ないかな」と言うと、次のカーブを
曲がった所で出遭った。数秒見合って我々が後ずさりすると、一目散
に斜面を逃げて行った。でもこんな話を山仲間にしても、誰もまとも
に聞いてはくれない。ところでハムの田舎は熊の多い所で、高校の裏
を走る小浜線で、毎年一頭は轢死して新聞記事になる。その話の方が
よほどウケが良かったりした。ここまでの熊というのはツキノワグマ。
北海道にいるヒグマとは違う。大雪のクワンナイ川を遡行して源頭部
にヒグマの足跡と糞を見た時には、怖くてコッフェルを叩きまくった。
その事を今も家族に笑われる。そんな昔話をしながら荒地山頂上から
高座谷に下って来た。この谷間は登山道が錯綜して非常に分かり難い。
公設道標には進入禁止と記されているが、何の理由なのかは分らない。
新しく精緻な私設道標があった。下部の地図に色々地名が記してある。
横池の北側から打越山間に、甲南パノラマ道という名が付されている。
大昔の名に違いないが、間伐されて再びその名に相応しくなったかも。
五分岐から魚屋道に出て少し南下すると、横池(雄池)の畔に出る道
がある。いつもは池の南側の稜線道を歩くので、此処は初めて歩いた。
雄池の東端に出るが睡蓮の花が閉じている。まだ時刻は13時16分。
5月中ならば13時頃でも咲いていたのに。ネットで調べると花期は
10月までという。だが枯れた葉が目立つようになっている。どうも
睡蓮の生態は分からないが、花を目的に横池に来るにはもう遅いよう。
いつものように雌池の畔にある大岩で大休止。早速、パンダトンボと
呼ばれるコシアキトンボや亀が近寄って来る。暑くて荒地山の登りで
は家族もバテていた。凍らせて来たペットボトルも半分は溶けている。
二度目の昼食というかオヤツ。JR芦屋駅近くのパン屋さんで頂いた
クロックムッシュとキッシュ。冷蔵庫から適当に持ってきた黒ビール。
これは合わなかったな。日陰は涼しくて体力も回復したように感じる。
雌池西端から。鬱蒼とした森に囲まれて雄池に比べ目立たなかったが、
定番撮影スポットになりそう。紅葉や雪景色の折に来てみたいと思う。
甲南パノラマ道の名は、六甲山系がハゲ山だった頃に付いたのだろう。
此方の間伐は神戸脊山で見るより、その度合いが強い。60%程度の
強度間伐が行われたよう。パノラマとまでは言えずとも前方には市街
が透けて見えている。でも立ち枯れした松の木を残したのは何故かな。
6月5日一人で昼食休憩をした新神戸線一四鉄塔。家族にも見せたい
景色なので寄って行こう。緑色のプラケースは苗木を保護する為の物。
植林されているのは落葉樹。成長した頃はもう此処まで来れないかも。
鉄塔下は正にパノラマ展望台。六甲最高峰から摩耶山掬星台まで一望
にできる。草地なのでシートを広げるのもよし、腰掛けるのに適当な
切株も幾つかあったりする。日差しはキツイが吹き抜ける風が爽やか。
打越峠も雰囲気が変わった。朽ちた伐木ベンチも入れ替えられたかな。
改めてポンポン山で見た、すっきりした私製ベンチが好ましく思われ。
峠からは打越山の頂上に向かおう。短いながら初めて歩く区間のはず。
最初は尾根を巻き、やがて緩やかな主稜線を辿るようになる。荒地山
までは沢山のハイカーと会ったが、その後は雌池で一組を遠くに見た
だけだった。この付近で人に会わないのは珍しい。妙な静けさがある。
打越山(482m)到着。此処も間伐されて梅田のビル群から、宝塚
辺りまで遠望できるようになった。さて此処からどうしよう。南下し
5日に歩いた関電巡視路に出ようと思ったが、藪が濃そうで止めよう。
一旦住吉川に向かう道を下り、しばらくで十文字山へ向かう道に入る。
この辺りクルクル登山道が向きを変えるので、歩いている方向が分ら
なくなってしまう。南へ行きたいのに北や西に向かっている気がする。
六甲山系の一般道にしては草深い道が続く。しかし要所に公設道標が
あるので、迷う事なく進んで行ける。不人気の理由は眺望がない以外
にもありそうだ。そもそも十文字山ってどんな場所か情報が全く無い。
立派な針葉樹の植林帯を下って行く。嫌いな人工林だが、七兵衛山や
八幡谷のように過密なパラダイスを下るよりは、はるかに気分が良い。
やがて雑木林に入ると山腹を巻くように、平坦な道がしばらく続いた。
道路跡らしき細長い草地に出る。左が日本山妙法寺でありフェンスが
巡らせてある。どうやら十文字山の標高点はその中らしい。宗教施設
にしてはモダンな建物が二棟見える。立入禁止でそれ以上は分らない。
草地を突っ切ると舗装路に出る。地理院地図によると左へ下る脇道が
あるはず。注意しながら歩いて行くが、気づかずに住宅街まで下った。
十文字山は立派な名前だが、頂上に立入れないのが不人気の理由かな。
住宅街に入るとすぐに見覚えのある場所に出た。6月5日に大谷川の
入渓点を探しに上り下りした階段。下って行くと甲南大学北校舎脇に
出る。その後は甲南大学の正門前を通って、JR摂津本山駅へ向かう。
7月1日に阪急芦屋川駅北側公園に行くと、クマ注意の張り紙が掲示
されていた。デザインも内容的にもアップグレードしている。2度目
の目撃通報で行政の認識も改まったのだろうか、相応の注意が必要だ。