岡本商店街に買い物の用事が有るが、その為だけに電車賃を使うのは
もったいなくて行きあぐねていた。しばらく雨が降ってないので沢に
入るのもどうだろう。すると昨夜0時頃に雨音を聞く。明けると晴れ。
なら行ってみようと用意する。阪急岡本駅に着いたときは10時半と
遅いスタートになった。さて問題は何処から入渓するか。登山口下の
駐車場奥が良さそうに思えたのだが、立入禁止のロープが張ってある。
仕方なく登山口を少し入った所から下降することにした。河原までは
20m程の高さがある。昨夜の雨でズルズルぬかるむ急斜面。ゴミも
散乱しており気分は最悪だ。他に良い入渓地点はなかったのだろうか。
その斜面を見上げる。結局この日一番の危険個所は此処だったと思う。
河原を少し進めばゴルジェ入口。気を取り直して遡行の用意をしよう。
ところがザックから出て来たのは、自分のフェルトシューズではない。
家族の沢タビだった。23cmで勿論入らない。山行に忘れ物をする
事は多いが、沢歩きに足回りを間違えたのは初めて。苦労し入渓した
のに引き返すのも嫌だ。見た所さして難しくなさそう。行ってみよう。
古い取水設備を越えてゴルジェ内に入る。両岸が立って中々の雰囲気。
右岸上方には歩道があるので、落石の危険もあるかとメットは被って
いる。奥には二段の小滝が見えている。難しいようなら戻って来よう。
滝の傾斜は緩いけど、滝壺というか淵が深い。へつるのは無理なので、
スマホやイヤホンをビニール袋に仕舞い込む。恐々右岸の縁へ入って
水中の足場を探ると、腰までの深さで渡りきれた。小滝自体は階段状。
滝上にもう一つ淵がある。此処も深かったように思うが、一度濡れて
いるので気にならない。僅かに濁りがあるのは、昨夜の雨のせいかも
このゴルジェはごく短いはずだけど、出口が見えずまだまだ続きそう。
この淵は右岸をへつって行く。この上の右岸には岩壁の切れ目があり
太いロープが下りていた。遡行の為なら中途半端な位置で、何の目的
か分らないが、逃げ場がないと思っていたので、気分的には楽になる
この淵も深そうなので、右岸をへつる。ところで今日履いているのは、
スニーカータイプのシューズ。流れの中はそうでもないが、緑色の藻
がある所は恐ろしく滑る。そういや底はほとんど擦り切れていたよう。
前方に左岸に渡る橋が見えて来た。今までの小滝よりは傾斜がきつい。
左岸のバンドから越えられそうだったが、少し外傾していて良く滑る。
怖いのでやはり腰まで浸かって右岸の縁をへつり、流心に取りついた。
小滝で手こずっていたら、頭上をスタスタと御老人が歩いて行かれた。
何も言われなかったのでホッとする。橋の左岸には廃れた御堂がある。
神社でも寺でもなさそうなので、青谷にあるのと同じ行者堂なのかな。
橋を潜った先にある八幡滝。直登は難しいが左岸側壁から越えられる。
部分的にコンクリで階段状にしてあったりする。2年前の冬に越えて
いるが、すぐ堰堤に詰まるし、藪が濃くて一般道に戻るのに苦労した。
なので一旦遡行は中止し、橋を渡って右岸に戻り一般道を歩いて行く。
次に出会うのが八幡滝第二副堰堤。いつ来ても此処の水は澄んでいる。
川底の砂が白いだけではないと思う。鉱物質が染み出しているのかも。
堰堤上の河原は草が茂っていて戻る気にはならず、一般道をしばらく
歩いて行く。八幡谷森林歩道に入って左岸に渡った所で再度入渓する。
既に支流を二つも分けているので、めっきり水量は少なくなっている。
ところで今日の主目的は八幡谷の源流部に行く事。ゴルジェの通過は
二番目の目的。中流部の遡行は、つまらなければパスしても良いかな。
そう思い始めたが、姿の良い斜滝が現れ気を取り直す。流心を越える。
斜滝の上で八幡滝第三副堰堤を越えると、次に巨大な堰堤に突き当る。
堰堤名八幡滝第三砂防ダム。高さ20m、長さ75mもある。此処も
左岸から越えたが、傾斜が緩く藪は薄いのでそれほど苦労していない。
しかし大きければ大きいほど堆砂の量は多い。堰堤から相当離れても
川底は堆積した土砂で埋まったままだ。両岸が立っているので、正に
廊下を歩いてるようだ。もう変化はないかと思った頃に小滝が現れる。
高さ3mほどかな。立っているが流心に細かいスタンスが沢山あって
登れそう。そこで取りついてみるが、底のすり減ったスニーカーでは
もう一つ自信が持てずに降りて来た。左岸の泥の斜面を巻いてしまう。
フェルトシューズなら登れたはずと思いたい。3m滝の上は極短いが、
この谷では唯一のナメ状。次に現れた2m程の滝。巻くのは容易だが、
あえて流心左の苔の生えた所にスタンスを求め越える。憂さ晴らしだ。
またしても大堰堤。水量に比して大きすぎると思うのだが、県の作る
治山ダムではなく、国の作る砂防ダムだから何か理由はあるのだろう。
堰堤名は八幡滝第四堰堤。高さ15m、長さ58m。左岸から越える。
やはり堰堤上は長い堆積地が続く。下流のゴルジェに次いでこの谷の
独特の景色だと思うようになった。まず右岸の壁が立ち、進むにつれ
左岸も立ってくるが川床は埋まったままだ。この状態がしばらく続く。
ゴルジェ状の出口には10m程の斜滝。中段が二俣になっていて左岸
から支流が入る。本流より流量が多い。詰めれば風吹岩の近くに至る。
階段状で普通に歩け一般道に出るが、振り返ると結構な高度感がある。
斜滝上は不思議な石組み。交差する森林管理歩道を水流から保護する
為のものだろうか。この付近は完全に伏流している訳で、本当に此方
が本流なのか一見すると疑わしい。路傍の岩に座り込んで小休止する。
打越峠に向かう一般道から離れて遡行を続ける。涸れた5mの斜滝は
普通に立って歩ける斜度だ。大雨の時は此の滝幅一杯に水が流れるの
だろう。平常時と増水時の流量の差がとんでもなく大きいと思われる。
枯れた河原を進むと大きな堰堤に突き当る。水抜き穴が目と口に見え
る。水流が有れば泣き顔だ。左岸に明瞭な巻道があり、急傾斜なので、
残置ロープまである。八幡滝第五砂防ダム。高さ16m、長さ38m。
堰堤の上も急斜面なので踏跡に従って斜面をへつる。そこそこの通行
があるようだ。堆砂がうず高く積もった河原に下り、遡行を続けると
高さ4m程の斜滝に出会う。写真は険しく見えるが普通に通過できる。
再び水流が現れると奥の二俣。左俣の方が幅が広く、かつ掘れている。
しかし水流があるのは右俣と、ちょっと不思議な感じだが目指す所は
右俣の奥にあるに違いないと確信して進む事にする。但し本流は左俣。
緩やかな斜面の流れを追って行く。下生えの少ない疎林で気持ち良い。
水流に沿って踏跡がある。徐々に傾斜が上がり、岩が積み上がるよう
になるが流量は一向に減らない。やがて今日の主目的の場所に着いた。
土管から勢いよく流れ出す水流。これは横池の雄池の水抜き穴である。
近寄ると有機的な匂いがする。大昔は雄池と雌池は繋がっていたはず。
そして増水時は雌池西南端から流れ出て、八幡谷を穿ったと思われる。
水抜き穴から5mも上がれば、雄池畔の道に着く。ヤマボウシの木が
ある所。そういえば雄池の南側では一番低い箇所。6月5日に此処で
大きな瀬音を聞いた。何故かと思って自分の目で確かめたかっただけ。
昼食は雌池畔の大岩の上。急に思い立ったのでオニギリを作って貰う。
具材が無いと云うのでウインナー。座り込むと亀が三匹近寄って来る。
餌をくれと亀さんに見つめられながらの食事は、多少気まずさがある。
小滝を登れなかった言い訳に靴の底を写して置く。爪先部分は剥がれ
掛かっているし、アッパーに穴が開いている。メーカーの公式通販で
3500円だったかな、でも余り良い靴ではなかった。又探さないと。
見上げると水面から5mの高さにモリアオガエルの卵がある。普通は
日陰にある事が多いが、日に照らされて干乾びたりしないのだろうか。
雌池は生き物の多い所で、この日もメダカやトンボ等見て退屈しない。
食事を終え雄池の畔に睡蓮を見に行ったのは15時。5月25日より
花の数は格段に多くなっていたが既に閉じている。和名ヒツジグサは
未の刻(14時)に咲くからとも云うが、横池では閉じ始める時刻だ。
さて八幡谷は予想以上に堰堤が多かったが、退屈しない程度に見所が
次々現れ楽しかった。出発が遅くて睡蓮は閉じていたが、それはそれ。
魚屋道でJR甲南山手駅へ下ろう。大阪湾の上に夏雲が浮かんでいた。
この山行はYAMAPに掲載された、Jo999さんの5月29日の記録を参考
に行いました。感謝します。尚、西天上谷も参考にさせて頂いています。
今日出会った動物。
雌池にいる亀さん。到着した時は15m程も離れた対岸の倒木の上で
二匹重なって日向ぼっこしていたのに、昼ごはんの用意をしていたら
知らぬ間に近寄って来ていた。それと知って小魚も沢山集まって来る。