鹿児島中央駅6時20分発の山川行きに乗車し、山川駅で一両編成に
乗換えて7時57分開聞駅に着く。この駅には1988年に来ている。
32年前の運賃は1060円。今の1310円とそれほど変わらない。
もっとも列車も同じ型式の気動車なので償却済み。山川駅からは沿線
の枝が窓を頻繁に叩いた。一日3往復では仕方ない。前は駅のホーム
から開聞岳全景が望めたが、南側の木が成長したのか全く隠れている。
開聞駅で下車したのは我々二人だけ。でも車が頻繁に追い越して行く。
過去の記憶を手繰ってみようとするが、この付近は全く思い出せない。
古い写真を見ると広々した草原だった。徒歩30分で麓の公園に着く。
32年前は屋久島の宮之浦岳のついでに寄った。その時は山頂で幕営
している。今回は指宿温泉に一泊したいと思ったが、GOTO景気と
いうのか、満室ばかりで手頃な宿は取れなくて、鹿児島からの日帰り。
8時30分、2合目登山口到着。この案内板によるとコースタイムは
往復5時間半。いや高齢者だから6時間半だろうと家族に窘められる。
ガイド本では4時間半。数分の内に5人もの単独ハイカーが行かれた。
平日だが混んでそうな予感。その結果を先に言うと非常に混んでいた。
この日出会ったのは上りで15名、山頂で20名、下りでは50名程。
百名山の一つなので遠来のグループや、旅行社のツアー客もいたよう。
道は一本なので地図も見ずじまい。登山者の数に比べて道は良くない。
溶岩礫の道は踏み固めれることもなく、ザレた部分が多い。その反面
一定の緩い傾斜が続くので歩き易くはある。しばらく展望は全くない。
5合目まで登って展望所があった。東の方向が開けて錦江湾が見える。
だが再び照葉樹の森に入り、展望皆無の道が続く。こんな道だったろ
うか。確か7合目からはスッキリした展望が得られたと思うんだけど。
確かに7合目手前で岩の上を歩くようになり、同時に展望も得られた。
だがそれほど長い区間でない。再び樹林に入る手前では西側に屋久島
や薩摩硫黄島が見えた。種子島は平たいので霞の下のようで見えない。
東側には佐多岬が細長く見える。7合目以降は火山岩の上を渡り歩く。
泥の付いた靴底がしばしば滑る。道幅は狭くて擦れ違う余地は少ない。
上りはまだしも、下りでは頻繁に路傍へ寄って道を譲る必要があった。
それにしても展望が無い。或る意味単調でさえある。後からトレイル
ランニングの人達が十数名登って来られたが、景色に気を取られない
ので向いてるのかも。我々も下りは半ば駆けるようにして降りている。
8合目を過ぎた所で展望所があった。北側には桜島や池田湖が見える。
西側には枕崎に続く海岸線が伸びやか。この付近から明らかに山体を
グルッと回っている感じがして、この山ならではの面白みが出てくる。
アルミ梯子で大岩を越える。その後も岩の積み重なる道が続くが周囲
の樹々の背が高く、やっぱり期待したほどの展望は得られないままだ。
いやいやこんな山だったかなって、家族と言い合いながら登って行く。
山頂の手前で同時刻に登山口を出た若い女性が降りてきた。山頂では
大勢の人が弁当を食べてて、写り込むので写真も取れないと、問わず
語りに話される。どうやら辟易として、すぐに下って来られたようだ。
10時30分、開聞駅から2時間半で山頂に到着。確かに大勢の人が
食事中で写真を撮るのも苦労する。団体客が同じプラパックの弁当を
食べている様子は、彼女の美的感覚には相容れられなかったのだろう。
その気持ちは分からなくはない。我々も20分以上団体客が下山する
のを待って写真を撮った。手前には池田湖。中央遠方には桜島、右手
に霧島山群が見える。32年前も此の岩の上に立ち写真を撮っている。
その時の写真と見比べると山頂の照葉樹が大きく成長している。今は
180度位の展望。岩の上に立つと、かろうじて屋久島の山が見えた。
そうこうしていると11時を過ぎている。人も増えてきたもう下ろう。
12時30分、2合目登山口。山頂での休憩を含め4時間で往復した。
まあ成人並みかな。一時間一本のバスに間に合わない。ふれあい公園
内の食堂で昼食を摂ろう。名物の板そば(大盛り600円)を頂いた。
路線バスに乗りヘルシーランドで下車。次のバスが来る1時間で温泉
に入って行こう。ところが予想に反し広大な園内で、露天風呂に行き
着くまでに15分を要し、入浴時間は30分足らず。随分慌ただしい。
今日は女湯が開聞岳を望む広い方で、もっと長く入っていたかったと
家族がしきりに言う。料金は500円と此の付近の温泉としては高い
が、観光気分は味わえたかな。開聞岳を遠くから眺められるのも良い。
温泉の背後にある竹山は険しい岩山で、それだけでも見応えがあるが、
仰向けに寝ているスヌーピーに似ているという。そういえば耳もある。
再びバスに乗って山川駅へ。最南端の有人駅とあるが、現在は無人駅。
それにしても此の気動車は半端なく揺れる。行きも帰りも車内は通学
の高校生で一杯。みんな賢そうだし大人しい。自分の時代は男女別に
客車が決められて、喧嘩するので教師が一人添乗してたりしたのだが。
17時過ぎ鹿児島駅に下車すると、寒くてダウンジャケットを着こむ。
今日の宿は鴨池港の近く。錦江湾を挟んで桜島と正対する。部屋から
の景色が楽しみで選んだ。日没前に到着出来たのでまあ良しとしよう。