礼文島3日目、昨夕から降っていた小雨は明け方に止むが、相変らず
周囲の山はガスに包まれている。天気情報アプリによると湿度98%、
しかし日程の都合で今日は礼文岳に登り、利尻島に戻らねばならない。
バスの本数は限られているので戻っては来れない。濡れたテントを撤
収し荷物を全部持って行く。道道まで10分足らず、自由乗降区間な
ので手を挙げればバスは停まる。6時42分、昨日と同じ高校生3名。
10分程で内路(ナイロ)に着く。海沿いのバス停がそのまま登山口。
道路を挟んだ所にはトイレもあり、国立公園の体裁は整えられている。
看板が無くて民家と見えるが、北側には商店があり自動販売機もある。
荷物を何処かにデポしたいのだが、車道から見える所に置きたくない。
とりあえず登山道に入って適当な場所を探そう。ところが取りつきは
急な斜面が続いて置き場が見つからない。この日一番つらかった箇所。
ようやく尾根に乗り平坦になった所でデポしておく。礼文島には熊や
鹿、猪といった大型の野生動物はいないらしいので、荷物を荒らされ
る心配はない。荷は軽くなったが、気温も湿気も高くて汗が引かない。
しばらくするとトドマツの森に入る。ガイド本には簡単に記してある
のみだが、関西では見られない林相だけに嬉しい。利尻山では樹林に
魅力を感じなかったせいもある。ほぼ平坦かと思える道を歩いて行く。
次はダケカンバの森が現れた。トドマツと同じ様な白い幹だが針葉樹
と落葉広葉樹と全く違う種類。天候には期待できないが、こんな森を
歩いているだけでも興味深い。ただ北海道内の人は見飽きているかも。
登山口から2km。山頂までも2kmの中間地点。とりつきを除くと
緩やかな道が続いた。標高は220m程。この場所に道標があるのは、
かつては、起登臼(キトウス)からの道との合流点だったからだろう。
ここまでは休憩に適した場所がなかったが、乾いた露地があったので、
座り込み菓子パンの朝食を摂る。すると男性一人が下山して来られて、
元気に挨拶して頂いた。山頂方向はガスに包まれて、判然とはしない。
登山道の傾斜が上がり、樹林から灌木へ、そしてハイマツ帯に入ると
小ピークに達する。此処にも休憩に適した岩場があって、しばらくは
座ってガスが晴れないか見ていたが、気配もないので山頂に向かおう。
浅い鞍部に下り笹とハイマツの斜面を登り返す。風は強くガスは次々
流れて行く。ときおり青い空も見える。このまま快方に向かうと思え
るのだが、低山と言えども海風の影響を受ける離島ではままならない。
すぐに先程いた小ピークさえガスって見えなくなる。展望が効かない
分、山野草に目がいく。姿の通りの名で「ネジバナ」という可憐な花。
家に帰って調べると意外に日本全国で見られるというが、初めて見る。
8時57分、礼文岳頂上到着。コースタイムより少し遅いがまずまず。
帰りのバスの時刻を考えると、頂上に1時間は居られる。ガスが上る
のを待ってみよう。晴れていれば360度の展望、一等三角点がある。
南西の風が強く吹いている。利尻山を見る事はかなわぬまでも、海岸
線ぐらいは見えないだろうか。東西に細長い山頂の東端に座って待つ。
しかし流れるガスは再び濃くなって、視界は数十メートルまで落ちる。
もはやガスというよりは雲の中にいると言った方が正確だろう。風上
を向けば、カメラのレンズもすぐ曇ってしまう。海上を湿気を含んだ
風が流れ、礼文島に突き当たると、雲が沸き上がる様子が頭に浮かぶ。
待っている間は暇なので、山野草の写真を撮ってみる。日頃は興味が
なく、マクロ撮影の経験も少ないので、失敗が多くて歩留まりが悪い。
イブキトラノオ(伊吹虎の尾)。名前の通りに伊吹山に多く自生する。
ハナイカリ(花碇)。これも全国に分布しているらしいが、登山口の
案内板にネジバナと共に写真が載ってたぐらいだから、礼文岳ならで
はの花なんだろう。山頂の一角に群生しているが他所では見なかった。
10時まで待っていたが諦めて下山する。途中で単独ハイカー3名と
すれ違う。登山道脇にずっと咲いていたヨツバヒヨドリの花。種子が
ハイカーの衣服に付いて広がったのかな。地味な花だが癒してくれた。
下るにつれて青空が垣間見えるようになる。デポしていた荷物を回収
して、内路の港が見える所まで下ってきた。海が色がやけにキレイだ。
旅行は残り2日間ある、このまま晴れて欲しいと願わずにいられない。
バス停まで下り東屋で休んでいると、途中で擦れ違った単独の女性が
下ってきた。家族が少し話をしていたが、やはり山頂では何も見えな
かったらしい。12時23分のバスが来る頃には、再び曇り空となる。
現在、利尻・礼文間のフェリーは1日1便だけの運航。病院前で下車
し漁協のストアーでビールとピーナッツを買う。随分乗客が多い。阪
急旅行社の団体客や、視察らしき背広の一団。14時10分鴛泊着岸。
フェリーターミナル近くの漁協ストアーに寄って、見切り品の鳥団子
とスンドウブの素を買う。レジの人が何か言ってるが曖昧に応諾する。
富良野産のスイカが700円になっていたので、デザート用に買った。
港から徒歩20分で「ゆーにキャンプ場」。まだ時刻が早かったので
空いていて前回と同じ場所に張る。まずスイカを半分食べる。何だか
疲れてしまい温泉に行く気もせずにボーとしてたら、日が暮れてきた。
もう夕食を食べて寝てしまおう。鳥団子は今日が賞味期限と知ってた
が、レトルトのスンドウブの素は、なんと2か月近く前に切れていた。
まあ美味しく食べれたので可。夕食後に残りのスイカを食べお腹一杯。