日帰りできるのに宿泊したのは、京都府出身なのに市内の事は、何も
知らないというハムのコンプレックス。四条烏丸から市バス201系
統で出町柳へ。叡山電車に乗り換え市原駅まで。何れも初めての乗車。
昨日の戸寺から出発しなかったのは、嵐山までの距離を勘案したのと
叡山電車に乗ってみたかったから。二ノ瀬まで行くつもりが7月豪雨
の土砂崩れで市原止まり。標識・北山24から55までパスしている。
市原駅7時。まず近くのローソンで冷凍の飲料を2本調達して、府道
38号線を西に向かう。最初は巨大なゴミ処理場の下を通って行くが、
鞍馬川が沿うようになれば気分的にも楽になる。今日も一日曇り模様。
北山56(山幸橋)の標識でトレイルに合流する。此処にもクマ出没
注意の看板があり、2年前の目撃情報が付記されている。餌の少ない
夏季に畑に出るのだろうか。此の山域では放たれた猟犬のほうが怖い。
進んで行くと何だか柵のある草地に出た。さらに奥には養蜂の巣箱が
沢山置いてある。もしかするとその熊さんは蜂蜜を狙っていたのかも。
此の辺りはゴミも多いし、私有地の関係で道がジグザグして悩ましい。
やがてトレイルは杉の植林帯に入る。おそらく今日は一日こんな所を
歩くのだろう。自然を求めてきたのに人工林を歩くのは、日本の山で
一番嫌な部分だが、北山では避けられない。淡々と先に進んで行こう。
道が沢に沿うようになると風倒木が多くなる。これも2年前の台風の
仕業かな。トレイルは通れるように切ってあるが、それ以外の通行は
困難だ。となれば古いガイド本をあてにせず、直近の記録を探したい。
山幸橋から小峠までは標高差270mだが、昨日の疲れが残っていて
足が重い。蒸し暑さも同じで既に汗びっしょり。度々休んで水を飲む。
こんな調子で嵐山まで歩けるのかと心配になる頃、前方が明るくなる。
8時38分、小峠に到着。ここで小休止して朝食代わりの菓子パンを
頂く。先々人家のある所を通過するので、飲料の自販機はあるはずと、
水分も多めに摂取する。20分程休んで緩やかな林道を氷室に向かう。
京都市北区西賀茂氷室町。山間の地だが休耕田が一つも無く、美田が
広がる。集落は形成せず一つの敷地に数戸の住宅が建っている。標高
380m。名前の通り宮中に献ずる氷室のあった所。水利も良さそう。
9時36分、京見峠に到着。氷室からずっと車道歩き。ネットの各種
記事からは読み取れなかった点。それに名前に反して峠からは市街は
見えず、少し下り僅かに樹幹越しに望む程度。休憩予定は先に延ばす。
京見峠から上ノ水峠へは、最初の急登をこなすと山腹を緩やかに横切
る道となる。自然のウッドチップが敷き詰められ、雑木も多少混じる
歩き易い道だ。南側の視界が開ける所もあって、市街地を遠望できる。
10時35分、上ノ水峠に到着。この先に崩落地があり通行止めとな
っていた。小さな地形なので迂回しても遠くはないが、崩落してから
数年たっている様子で、補修しないならコース自体変えるべきだろう。
上ノ水峠から北側へ迂回すると舗装林道に出る。案内に従って行けば
梅雨の雨を集め、満々と水を湛えた沢ノ池の着く。江戸時代に作られ
た灌漑用のため池だ。周囲の山の低さに比して巨大な池で少々驚いた。
池畔に休憩ポイントも多く、此処を目的としたハイクも楽しいだろう。
さて池の外縁を半周するようにトレイルは続いて行く。大した上りも
ないのに尾根に出ると市街が見えてきた。どうも太秦から嵐山のよう。
12時30分、栂尾に到着。沢ノ池からは標高差280m程の下りだ。
これが中々堪えた。自販機でエナジー系の飲料を買って一気飲みする。
高雄は初めて、高そうな料亭が並ぶ様子に興味は尽きないが先へ進む。
栂尾から槙ノ尾まで国道162号線を歩いた後、標識に従って指月橋
に向かう。なるほど紅葉の名所だけある。錦秋の頃に来れば良さそう
だが人出も凄いだろう。道路わきの駐車余地は全て有料で一日千円也。
清滝川に沿って車道を下って行く。此の先にも料理旅館が並び、川床
が設えてある。鴨川の川床とは違い崖の上にオープンな宴席が設けら
れている。韓国の山にも似たような店があるが、値段は桁違いだろう。
京都一周トレイルは公式ガイドマップを販売する為か、その他の情報
が少ない。京都市公式サイトは概念図さえなく、マップを買えという
スタンス。標識はしっかりあるので下調べもほとんどせずやって来た。
故に此の付近は交通量の少ない林道を歩くと、勝手に思い込んでいた。
高雄から最初の内は幅広い道だったが、段々と細くなり潜没橋を渡る
と歩道となる。こんな橋があるとも全く知らず、それはそれで楽しい。
梅雨が明けてから一週間も経たないので水量も多い方だろう。夏場に
歩くなら、常に流水を見るこのコースは悪くない。気温もいくらかは
低いはず。水質もやや濁りを感ずる程度で、ありがちなゴミも少ない。
清滝の手前で両岸の壁が立ち川沿いに進めなくなる。一旦支流に入り
車道に出る。辻には5つの道標が立ち賑やかだ。相当に古い石柱にも
高雄への道案内が記してあるので、昔から歩かれている道なんだろう。
14時、清滝に到着。高雄とは様子は違うが、観光客相手の飲食店が
立ち並ぶ。飲料水を1本補給。渡猿橋の袂に西山1の標識があったが、
欄干の陰になって見過ごす。京都バスの停留所まで行って戻ってきた。
幼児連れで川遊びしている人が多い。高雄もそうだったが下流だけに
水量も多いし流れも速い。上から見ていると流されないか心配だけど
どうなんだろう。ペットのアヒルや犬を水浴させてる人もいてカオス。
渡猿橋から落合橋までは金鈴峡と呼ばれているらしい。これが中々に
ワイルドな道が続く。なぜか京都一周トレイルの標識が見当たらなく
一瞬道を間違ったと思う程、東海自然歩道の標識が俄然存在感を増す。
一応コンクリで歩き易いよう固めてあるが、遊歩道と言うレベルでは
ない。一歩誤ればとは言わないが、二歩三歩と誤ればどうか。前を行
く家族が幾度かつまづいている。相当に疲れている様子で心配になる。
川岸の岩が平たくなった所で休憩しよう。四条烏丸のマクドで買った
ソーセージマフィン(110円)。旅行先の朝食や弁当代わりによく
買う。味には飽きたが値段のわりに腹持ちが良い。落合までもう少し。
15時、落合の潜没橋。北山コースは終始山の中を歩くと思っていた。
ところが高雄から此処まで、ずっと川沿いの道。今日はこの区間の印
象が一番強く、山歩きと言うより川歩き。対岸に渡り少し登れば車道。
潜没橋から上がった所が落合橋の東詰め。そこから六丁峠までは2年
前に嵐山から保津峡へ歩いた道と同じだ。九十九な車道を黙々と歩く。
峠からは暗い杉林の車道で、嵐山までこんな道かとうんざりしていた。
だが清滝への道と合流したとたん様子が変わって吃驚。文化財保護法
に基づく重要伝統的建造物群保存地区だそうで、一瞬タイムスリップ
したかと思う。前後の茅葺屋根は鮎料理店。下れば白壁の民家が続く。
トレイルの標識に従って行けば、二尊院前から小倉山。観光客向けの
瀟洒な収益物件が立ち並ぶ。ただし新型コロナの影響で観光客の姿は
まばら。竹林の道で他の人が、写り込まないなんて近頃ない事だろう。
16時30分、渡月橋に到着。人力車の客引きばかりが目立っている。
さてアプリによると市原から距離は26km、上り1213m、下り
1326m。行動時間は9時間。休憩時間は30分と昨日より少ない。
渡月橋の西詰から北山を望むが、今日は一度もピークらしい所に立た
なかったな。汗みずくのまま電車に乗る気はしない。阪急嵐山駅との
間にスーパー銭湯があるので入って帰ろう。各種割引で平日800円。
銭湯もまたガラガラで2時間ゆっくり入浴した。というか長湯過ぎて
却って疲れが増したようだ。人気のない阪急嵐山駅から夙川駅に帰る。
疲労は半端なく翌日は二人共寝込んでいた。六甲全縦なんて到底無理。