山へは行く気がしないまま、家でネットを見ていた2月29日のこと。
串本の温泉宿が3月1日のみ、2食付き3980円という値を出して
いた。大阪からの送迎バスも無料の期間だったので、思わず申し込む。
二日酔いで目を覚ました3月2日。外は小雨が降っている。チェック
アウトの11時近くまで宿にいたが、外に出ると青空が広がっていた。
帰りの送迎バスは午後3時発で、それまでの4時間をどう過ごそうか。
大島に渡ろうとJR串本駅まで行ってみたが、本数の少ないコミュニ
ティバスは出たばかりで、次の便では午後3時までに帰ってこれない。
仕方ないので橋杭岩でも見に行こう。駅からは徒歩20分ほどの距離。
道の駅の土産物店も覗く気にもならず、交通量の多い国道42号線を
東に進むと、峠の所に階段がありお社があった。ここが中々の絶景で、
ちょっと橋杭岩を見直す。頭上を大きな猛禽が優雅に風に乗っている。
さらに42号線を進むと、弘法の湯という素朴な共同浴場前から海岸
に降りる。違う角度で橋杭岩が見えるかもと、かなり歩いたが、真裏
になって景色は変わらない。扁平な玉砂利が珍しく退屈はしなかった。
再び橋杭岩まで戻ってくると、かなり潮が引いている。まだ々時間が
余るので、中間辺りにある弁天島に見えた赤い鳥居まで行ってみよう。
緑色の海藻を踏むと滑りやすいが、平坦な岩場をずっと歩いて行ける。
転がっている巨岩は、津波によって崩れた橋杭岩の一部分だったそう。
全長は850mだというが、観光写真等で紹介されるのは弁天島まで
の半分くらい。特にこの辺りがメインか。やはり近づくと迫力がある。
宿に表示してあった干潮時刻は確か16時だった。鳥居までは水際の
岩を渡り歩いていく。やけに立派な鳥居からは奥に小道が続いている。
小道は垂壁に突き当たって終わり。ごく小さな石造りの祠があるだけ。
蛭子大明神という立派な石柱があるので、かつては神社があったかも
知れない。背後の岩場の上に出る道はない。右手から登れそうだけど、
摩耶山ならともかくも、観光地ではそういう事をする気にはならない。
そこで鳥居まで戻って弁天島の南側へ回り込んでみた。それにしても
暖かい。家族は長そでTシャツ一枚になっている。体感温度は20度
以上あろう。巨岩の上に座り込んで、テルモスの氷水で小休止しよう。
対岸に見えるのが大島。本当はコミュニティバスで渡り、金山登山口
で下車し、展望台まで1km歩く予定だったが、バスの時刻を調べて
おらず乗り逃がした。一旦落胆したけど橋杭岩が楽しめ良かったかも。
13時40分そろそろ戻ろう。うろうろしている間にも潮はどんどん
引いていた。来た時には岩の上を歩いて来たのに砂浜が露出していた。
この砂浜は粒子が細かいのか、コンクリートの様に固く締まっている。
橋杭岩の向こうでは扁平な玉砂利の浜だった事を思うと、東西の浜の
様子が全く異なっていて、地味に興味深い。地学的な事に関心がある
訳ではないが、歩いていて飽きない。このまま帰ろうと思っていたが、
弁天島の裏手の岩が立派なので見に行こう。濡れた岩がやや滑り易い。
家族はどんどん先に進んで行くが、ハムは恐々歩いてるので遅くなる。
それでも今の時節柄、こんな所で転倒骨折なんかする訳にもいかない。
近づいてみれば思っていたよりの迫力。遠望していたのとは全く違う。
気が付けば14時になっていた。そろそろ帰ろう。2年前に嶽ノ森山
の帰りバスの車窓から橋杭岩を眺めたが、さして関心は持たなかった。
なので今日も来る気は無かったし、時間を持て余してなければ一瞥で
終わりだったろう。天気も恵まれ思いもかけず楽しい時間を過ごせた。
宿には14時40分に帰り着く。大型バスに10名の乗車で帰阪する。