正月の広島旅行で使った青春18きっぷが一回分残った。ヤフオクで
処分しようかと思ったが、値崩れしていて売れない。という事は逆に
安く買うチャンスかも。残三回分を送料込みで3000円で落札する。
8日に切符を受け取り、宿の予約や山行計画も一気に作る。9日朝は
6時半に家を出て、JR土讃線善通寺駅に10時34分着。市役所前
から出るバスは11時7分発。讃岐うどんを食べる時間はあるだろう。
駅前通りを10分ばかり歩いた所にあるお店。7時から15時までの
営業。讃岐うどんの店って昼食時間帯にしか開いていないことが多い。
チェーン店で味気なくも思うが、山行前に食べられるのはラッキーだ。
かけ小と、ぶっかけを頼む。慌てて七味を掛け過ぎた。特にぶっかけ
が旨かった。初心者には理想の腰のある讃岐うどん。この店は茹でて
から30分経った麺は無料で客に持ち帰らせる。そこが秘訣だろうか。
11時6分市役所駐車場から市民バス吉原コースに乗車する。車内は
お婆さん数名で和やかな雰囲気。運転手さんに山歩きなら違うバス停
の方がとか、時刻表持ってるか等と心配して貰う。曼荼羅寺前で下車。
この市民バス空海号は無料。コミュニティバスには何度も乗っているが
初めての経験だった。四国八十八か所第七二番札所の曼陀羅寺の境内を
拝観して、七三番札所の出釈迦寺に向かう。正面に奥の院が見えている。
石碑や石灯篭がやたらと多い出釈迦寺の境内から、我拝師山と中山の
鞍部に向う。大平正芳氏の奉燈を見ていたら「乗りませんか」と声が
掛る。無料の送迎車があるようだ。ありがたいがもちろん歩いて上る。
断ったものの中々急な舗装路である。路傍に歌碑が沢山ある。普通の
山で見られないような物が多く、初めてなら飽きる事は無い。20分
ほどで、捨身ヶ嶽禅定という名の出釈迦寺奥の院の屋根が見えて来た。
30分で山門に到着したが、奥の院に背を向け中山(439m)へ進む。
この山系は全体が五岳山と呼ばれ、五つのピークがあって縦走もでき
るが、今回は見所の多い中央の三山だけを歩いてみよう計画している。
一段上がると我拝師山の展望が大きくなる。鐘楼の前に金色の仏像が
あり、朝日を浴びて輝いている。林道を同じペースで歩いて来られた
方達が見える。余程此処まで来れば景色が良いですよと言いたかった。
視線を北に転じれば多度津や丸亀辺りの平野が見える。標高は低いが
平野と岩山の対比は見応えがある。灌木の生えた斜面を九十九に登る
が、岩場は以降現れない。鞍部から20分弱で中山の頂上に到着した。
疎林だが平たい頂上に展望はない。石造りの仏像と絵馬を掛ける為の
傘つきの杭がある。恐らく五岳全ての頂上に同じようにあるのだろう。
うどんを食べたばかりで紅茶だけで小休止。一休みしたら鞍部に戻る。
再び我拝師山を望む。奥の院背後の岩場が、弘法大師が7歳の時に身
を投げたという謂れの捨身ヶ嶽だろう。岩場には赤い色の地蔵らしき
像が見えている。此処から見ると何処をどう登るのかと思われる絶壁。
鞍部まで下り山門脇を奥の院に進む。昨日関西でも強風が吹き荒れた。
この寺の山門も一部崩れたという。無料送迎車は頻繁に往復している
ようで、参詣者は幾人もいらっしゃる。本堂では回向が行われていた。
鐘楼前の黄金色の仏像は意外に小さい。輝いて大きく見えていたよう。
ところで我拝師山の頂上への道は何処だろう。一瞬見当たらないなと
思ったが、本堂の床下を潜る通路があった。道標はないが抜けて行く。
登嶺者の方へという看板によると、飲食や危険行為は禁止とあるので、
クライミングは禁じられるのだろう。香川県には寺の所有地である為、
登山自体も出来ない山もある。それを思えば決まりを守って歩きたい。
中山から見て、とてつもなく険しく見えた岩場も、取りついてみれば
階段状で緩やか。要所に鎖やロープもあるが登りなら使わないだろう。
逆コースを紹介するガイドもあるが、此処は下りより登りに歩きたい。
捨身請願之聖地と木札のある所に、地蔵が祀られていた。これが中山
からもよく見えていた像。昔話に笠地蔵というのがあるので、気持ち
は分からぬでもないが、帽子や衣服は本来の御姿を見えなくしている。
岩場をあっさり通過すると、一気に傾斜が緩くなる。照葉樹の疎林を
歩いて行くと我拝師山の頂上に到着した。時計を見ると13時30分。
鞍部から20分も掛かっていない。標高差150mあるが意外に近い。
頂上は樹林に囲まれているが北側に抜けた所が有り、瀬戸大橋を望む。
やはり仏像と絵馬掛が設置されている。腰を下ろす所も無いのですぐ
下る。次に登る筆ノ山との鞍部(大坂峠)は標高133mに過ぎない。
標高差350mを一気に下ることになる。そもそも標高481mの山
なので、ほとんど下山するのと同じじゃないかとか愚痴りながら下る。
初めは照葉樹の林の中を一直線に道が下り、幾度か滑りそうになった。
照葉樹と雑木林との境に展望所があった。正面の筆ノ山もニョキっと
した感じで、登り返しがきつそうだ。右手奥には讃岐富士と呼ばれる
飯野山が見えているが、同じく富士型をした山は其処らに幾つもある。
ようやく大坂峠に下り着いた。頂上からは30分以上もかかっている。
峠には簡易水道の貯水槽と幾つか案内板がある。五岳山縦走ルートの
の案内もあるが、こんな低い所まで下ると、縦走という感じはしない。
西日を受けて明るい樹林の中を登って行くと、20分で五岳山の一つ
香色山への分岐がある。今回は寄らないかったが、筆ノ山は此処から
ピストンで済ませておき、香色山へ向かえば良かったと後から気づく。
分岐からしばらくで丈の高い草地となる。右手に見えるのが大麻山で
標高は616mある。山頂から尾根通しに下って行くと琴平山を経て
金刀比羅宮に下り着く。左手の白い建物群は陸上自衛隊善通寺駐屯地。
やがて岩盤の露出した道となる。左手は絶壁となっており、さきほど
下って来た我拝師山が、西日の影となり黒く大きい。ほどなく筆ノ山
頂上に着く。その上品な名前に反して、人工的で荒れた感じの場所だ。
直径5mほどの穴が二つあり頂上を狭くしている。何の遺構だろうか
四角く縁石が残っている。鉄パイプの櫓もあるが今は使われていない。
中山は隠れているが、その先には五岳山の一つ、火上山が見えていた。
筆ノ山頂上から西山登山口へ下る道は、それほど歩かれていないよう。
やっぱり縦走する場合は香色山から大坂峠に向かい、途中の分岐から
筆ノ山を往復するのだろうか。この道を通ると大回りになってしまう。
下山した後は県立こども病院裏手のうどん屋さんに行く。このお店は
18時までの営業。完全セルフのお店で、自分で麺を湯通しからする。
既にてんぷらは売り切れだった。玉数と温冷の選択しかないメニュー。
初めての我々に丁寧に説明して頂いたのが嬉しい。家族によると出汁
の旨さは此方が一番だったという。麺は茹でてから時間が経っている
ので、開店直後や昼時に来れば違った食感だったろう。とにかく満足。
まあ本場で讃岐うどんを食べた経験は、四回位しかない初心者の感想
なので聞き流してもらいたい。帰りは第七五番札所、善通寺の境内を
通って駅に向かう。隆盛という言葉が思い浮ぶほど立派な伽藍が並ぶ。
善通寺駅へ戻る途中振り返ると、我拝師山と筆ノ山の間に夕日が沈む。
その姿は韓国全羅北道の鎮安から見る馬耳山と似ている。両者ともに
名刹があるのも同じ。高松駅に着いたのは17時40分すっかり暗い。
誤って高松港側に出たら、その都会的な様子に吃驚。瓦町の宿に行く
途中では、丸亀町商店街がミラノのガレリアの様な華麗さで再び驚愕。
先日の広島でもそうだが、神戸ってどうなんだろうかと思ってしまう。
今日の食費
かけうどん(温) 小230円、ぶっかけ(冷)小290円。
宮川製麺所
うどん小(1玉)190円、うどん中(2玉)280円。
ときわ軒(高松市瓦町)
からあげ丼持ち帰り 550円。