摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

高島トレイルから野坂岳へ 弐日目

高島トレイル、大御影山での一泊。やっぱりシュラフカバー1枚では

寒かった。芝地を選び、家族に多いと文句を言われつつ、銀マットも

2枚持って来たので、地面の冷たさは感じなかったが、なぜだか寒い。

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ウィスキーを360mlを持って来たが、ほぼ一晩で飲んでしまった。

4時半には明るくなり起き出す。白米1日2合は家族の言う通り多か

った。夕食、朝食でも食べきらず、昼ごはん用にオニギリにしておく。

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5時20分、まず大御影山(950m)から抜土(570m)に向け

て下り始める。標高380mも下る訳だが、大谷山(813m)へ登

り返しが小さいので、この間は此方向きの方が歩き易いかもしれない。

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昨日、三重岳から見た通り、長大な尾根が緩やかに下って行く。昔に

琵琶湖岸から若狭に抜けるのに、この道が選ばれた理由が分る。ただ

トレイルは820m付近で近江坂とは分れ、東向き斜面を下って行く。

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標識を追って急斜面を下りきると、水場の有る抜土(ぬけど)に至る。

林道に出る手前には広く平坦なキャンプ適地があったが、杉林に囲ま

れているので暗くて湿っぽい。とりあえず水は多めに補給しておこう。

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普通のアジサイは若葉や花芽を鹿が食べるらしいが、どうもガクアジ

サイやコアジサイは嫌いなよう。その為に他の植物が食べられた後に、

コアジサイが繁茂しているようだ。淡々と登れば大谷山主稜線に乗る。

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緩やかな稜線を歩いて行くと急に開けた所に出た。石庭(いしば)と

記された標識があったので此の場所の名前かと思ったが、麓の集落名

だったよう。草原に白い岩が点在し気持ちの良い所。日本海も見える。

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草原の道を歩いて一段上ると、大谷山の頂上。高島トレイルの標識も

あるが、福井県美浜町が作った古い山名板もある。大谷山へは冬季に

山スキーで一度来たことがあるが、茫洋とした山容で印象は薄かった。

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眼下に2キロ以上続くというメタセコイアの並木が見えた。JRマキ

ノ駅からスキー場までは、5キロ程度なので山行の往還に一度歩いて

みたいものだ。さて大谷山から三国山まで旧知の道を歩くことになる。

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寒風にかけての草原の道。一見山スキーに適しているようだが、傾斜

が緩すぎて面白くない。それに冬は季節風が吹き抜け、常に強風にさ

らされる。温暖化が進んだ昨今は、スノーシューハイクが盛んらしい。

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寒風のピークに到着する。変わった山名というよりは、地名だろうか。

実際に山の頂上という雰囲気はない。琵琶湖の対岸には鈴鹿の山並み

が見えているが、同定できるのは霊仙山だけで、その他は分らないな。

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中央一番高く見えるのが三国山。赤坂山はその右だが尾根上の小突起

にしか見えない。写真左側奥に見えているのが、今日の目的地である

野坂岳。こうしてみると三国山と尾根続きだと言う感じは全くしない。

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大谷山から続く草原の稜線歩きに、少々飽きてきた。体力的な疲れが

あるのかもしれないが、歩いていて楽しくない。それはそうと寒風か

三国山の間で、6人のハイカーに出会った。いずれも単独の男性だ。

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赤坂山(824m)頂上に到着。尾根続きに見えた三国山(876m)

との間は深い谷がある。360度の展望で人気があるのも分る。ただ

僅か50mの差とはいえ、山塊の主峰である三国山には見劣りがする。

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明王の禿げを通過。岩場というよりも崖地。この区間ですれ違った人

の半数が熊鈴を鳴らしていた。とてもよく響き遠くからでも聞こえる。

少々煩いほど。随分昔に三国山ツキノワグマに遭遇したことがある。

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赤坂山から一旦大きく下り、三国山の上りに掛る。草原の道が終わり

落葉樹林に入ると何故だかホッとする。三国山は水の豊富な山で山頂

手前400mの所に沢水が流れている。更に1リットル補給しておく。

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11時5分に三国山頂上到着。2年前の3月にも訪れている場所だが、

印象が全く違い戸惑う。狭い山頂と云う点は合致するが、樹林に囲ま

れ展望が得にくいせいか別の場所のような気がする。山頂の岩の上に

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立って、ようやく琵琶湖方面の眺めが得られるに過ぎない。これでは

赤坂山に人気が集中するのも分る。日陰に座り込んで昼食休憩。昨夜

炊いた米飯の残りを食す。熊鈴を鳴らすハイカーが来たところで退散。

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三国山頂上から北向きの踏跡を辿る。山頂から数十米下った所に池が

あった。驚くべき保水力である。昔は雨乞い信仰の対象になったので

はと思うが、山頂に祠や社の類は現存しない。此処にもカエルの卵が。

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さて高島トレイルを離れ三国山から野坂岳を目指す訳だが、地図上に

道は記載されていない。とりあえず少し北側の高圧鉄塔までは踏跡が

あるだろう。敦賀側の人が巡視路を利用し、三国山に登っているはず。

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その予想は的中というか、鉄塔の多い若狭地方の山の歩き方。自分も

そうしていた。明瞭な踏跡が続く。問題は鉄塔の先。今回改めてネッ

トでは調べていない。推理小説の結末を先に読んでしまうようなもの。

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まず越前嶺南線一六九鉄塔。続いて湖東線一八鉄塔。その先は藪にな

っている。ほんの少し藪を分けて北側に進んでみると、なんと古い道

跡が現れた。やけに薄くなった踏跡も、道跡に沿うように続いている。

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昨日歩いた近江坂より幅広く、深く掘れている。荷車も通ったのでは

ないか。ゆっくりと九十九に下って行く。落葉や枯枝が詰まって歩き

難かったりするので、踏跡はショートカットしたり、離れたりしてる。

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上の写真では深く掘れた道跡の、左上に踏跡が続いている。鉄塔があ

った標高800米付近から、標高560米の鞍部へ、北西よりに一気

に下る部分。此処では持参した地理院地図を確認しながら歩いて行く。

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鞍部に到着。倒木があって分り難いが、道跡は美浜側へ下っていった。

さて鞍部の北側は尾根が広く、踏跡が散逸してしまってる。まあ北側

の高みに上って行けば間違いないはずだ。やや北東よりに登って行く。

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下生えのない広い尾根は何処でも歩けるし、獣道も多くて踏跡を失い

がち。せめてコンパスで、北に向かってることを確かめようとしたら

そもそも持って来ていなかった。それで地理院地図を見ようとしたら

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ポケットにない。鞍部で休憩した時にハンドタオルと一緒に落とした

みたいだ。予備は持って来ていない。野坂岳へは真っすぐ北に向かっ

て行けば良いので難しくないはず。太陽はどっちと見上げるが曇り空。

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次第に尾根が狭まると踏跡も明瞭になる。境界石柱や測量用のプラ杭

が短い間隔で続いている。この辺りでは今日中に下山し帰宅できるか

なと思っていた。やがて前方に高みのないピークらしき所に到着する。

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そういや大御影山や三国山でも、ラインを送れたんだから地図アプリ

で現在地が分かるかも。立ち上げてみると何故だか彦根市内にいるこ

とになってる。悲しい。帰ってから調べると866標高点だったはず。

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少し下ると前方に三角形の大きな山。その左手に敦賀湾が見えてきた。

野坂岳に違いない。思っていたより遠い。それに随分下って、かなり

登り返さなくてはならない。やっぱり悲しい。今日中の帰宅は諦めた。

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866標高点からの下りで境界石柱を追っていたら、踏跡が90度東

へ折れる所を直進してしまった。大分下ってから尾根が続いていない

事に気づき登り返した。疲労困憊というほどではないが、疲れてきた。

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此処まで下生えのないブナ林だったのに、急にヤブっぽくなる。鹿の

忌避植物が多いのかも。反対に踏跡はかえって明瞭になった。しばし

座り込んで休憩する。先ほどから小雨がパラついていたが止んでいる。

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なんだか広い所に出たと思って振り返ると山からの巡視路との合流点。

山と云うのは黒河川沿いの集落の名前。昭和50年頃には村の奥に営

林署の分署や官舎があり、家族連れの職員が常駐していたと記憶する。

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少し登ると巨大な鉄塔。その銘板を確認して驚く。大黒部幹線四三八

鉄塔という。黒部から438本目の鉄塔なのか。普段二桁の鉄塔しか

見ていないので壮大な数に思える。鉄塔巡りしたら面白そうだが大変。

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鉄塔の基部に座り込んで、行動食の鈴カステラを食べる。エネルギー

を補給しておかないと、野坂岳の頂上まで持ちそうにない。東側には

岩籠山が。さらに旧知の嶺北の山が見えているはずだが同定できない。

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頂上までは歩き易い道が続く。そもそも野坂岳と三国山間を歩こうと

思ったのは、30年以上前に家族の知人が2月に山スキーで縦走した

と聞いたから。その時は物好きなと思ったがずっと記憶の底にあった。

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最早山スキーをする体力はないが、無雪期に歩くことはできるはずだ。

人生でやり残していた小さな一つ。それに歩きたかった三重嶽や大御

影山とを組合せたのが今回の計画。登るにつれて樹木の背が低くなる。

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敦賀市街が見えてきた。路傍に白い岩が点在している。石灰岩なのか。

そういや市内にはセメント工場が多い。敦賀の町は昔から白く見える。

光線のせいではなく実際に、コンクリート造りの建物が多いからかも。

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17時10分、野坂岳(914m)頂上。三国山から6時間も掛った。

日没は19時半頃だ、明るい内に下山して今日中に帰宅できるかも知

れないが、疲れたのでもう一泊して帰ろう。山頂には避難小屋がある。

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夕食を済ませた19時頃、水平線には雲が多い。今日は綺麗な夕日を

見れそうにない。昼間に降りかけた雨も上がって、上空は抜けている。

体力的に持つか不安だったが歩けた。これなら熊野古道も行けるかも。

 

今日のBGM


Heaven - Avicii (Cover) [REMAKE]