熊本県旅行の二つ目の山は、阿蘇外輪山の俵山を選んでみた。何より
空港に近い山というのが理由。登山口に阿蘇空港行きのバス停がある
ので交通も至極便利だ。頂上からの阿蘇山の眺めも期待できるだろう。
宮地中央15時30分発の熊本市街行き、快速バスたかもり号に乗車。
木の香湯温泉入口で下車する。この近くにも温泉施設はあるが熊本地
震以降は休業中だ。まずバス停から西へ斜上して観音桜公園を目指す。
まずは言い訳を。このコースを選んだのは、モンベルの店舗で貰った
阿蘇のパンフレット。観音桜公園から護王峠へは太線が引いてあった。
公園の案内図にも護王峠入口と記してあるので、迷わず行けるはずと。
車止めを越えて農道を進んでいく。入り口にこそ峠を示す古い道標が
あったが、以降は何の表示もない。たぶん此処だろうという分岐から
峠を目指すがどうも違う。分らないまま進むと農道は廃道状態となる。
高みに向かう限りは大丈夫と考えていたが、とうとう道がなくなった。
杉林の中の谷筋に沿って登って行く。やがて尾根筋に出たが道も踏跡
もなかった。そこからは強引に棘の木の多い藪を分けることになった。
獣道を拾って進んでいくと、やがて背の低い笹の斜面となり、背後に
阿蘇山が見えてきた。東外輪壁を直上する尾根に乗ったのだろう。右
には岩壁も見えるが、進行方向は笹原が続いているので大丈夫だろう。
左側には外輪山の主稜線が見えてきた。下の禿げたように見える所が
恐らく護王峠。随分方向違いの所に上がってきた。観光気分で来たの
で地理院地図も無し、スマホの地図アプリもダウンロードしていない。
笹原を詰め上ると俵山頂上手前の三差路。外輪山縦走路として整備
されている。観光ハイクなのに藪を分けるはめになり、「ごめんね」
と謝ったら「着いたから良いじゃない」と、家族は全く屈託がない。
阿蘇山の眺望が良い。中岳の火口から噴煙が立ち上っている。右隅
には根子岳。ちょこんと天狗峰が突き出ている。あそこの上に登ら
ねば根子岳に登ったとは言えないだろう。さてもうすぐ日が暮れる。
分県ガイド「熊本県の山」には山頂広場とあったので、平坦かと思
っていたが、俵山の山頂は岩のゴロゴロした傾斜地だった。どうも
筆者の使う単語が理解できない。編集部で統一的な校正をするべき。
それでも山頂の一隅に傾斜の緩い草地を見つけ仮泊する。昨日ほど
地面の冷たさは感じなかいが、やはり夜明け前に寒さで目が覚めた。
一昨日の天気予報では雨の予報だったが、風もなく穏やかな夜明け。
寒いので朝食も摂らずに、5時半には「萌の里」に向けて下山する。
別にアニメとかの聖地ではなくて西原村の物産館。熊本空港行きの
バス停もある。薄いガスは雨雲では無くて、朝霧によるものらしい。
下って行くと杉林に入る。植林でなく自生するものか、枝分かれし
た杉ばかり。因みに高森町には高森殿の大杉という千手観音の様な
大木があって名所になっている。更に下ると植林された普通の杉林。
退屈な暗い人工林の中の道が続き展望も無い。一箇所だけ北側に架
線跡が抜けていた。阿蘇車帰風力発電所が見え、その向こうに伸び
やかな外輪山の稜線。このコースは登りに使うと単調で辛いと思う。
ようやく杉林から牧野に出てきた。来る前には写真を見て、俵山は
草原の山だと思っていたが、実際は暗い杉林の山だった。まだ朝食
を、摂っていなかったので、舗装路に座り込んで菓子パンを食べる。
「萌の里」には標高差にして300mほど下らねばならない。牧野
に入り景色は良いが、既に山歩きという感じはなくなってしまった。
来るまでは、草原の山歩きを楽しみにしていたのに、実際は違った。
谷間へ下って行く舗装路を離れ、尾根の踏跡を辿るようになっても、
その意識は変わらなかった。これは山歩きでないという感覚が強い。
家族も「登りだったら絶対歩きたくない!」とかブツブツ言ってる。
景色は良いんだけれども何故だろうか。スイスに行ったことのある
家族に、彼の地でのハイキングの様子を聞くと、牧野はリフトで通
過してしまうらしい。それはそうと牛って急斜面でも平気みたいだ。
下方に「萌の里」の施設が見えてきた。到着したのは7時20分頃。
バスの時間まで2時間近くある。施設の周囲は広大な公園になって
いる。ヤギ牧場を見学したり、テントを乾かしたりして時間を潰す。
9時11分、空港経由熊本市街行き快速バスたかもり号に乗車する。
20分で空港到着。17時30分発の便なので時間はたっぷりある。
空港から2km弱のホテル・エミナースは温泉施設やレストランが
リーズナブルな料金で利用できる。入浴した後はサラダバー付きの
食事で、3日間の野菜不足を補った。それでも余る時間は空港のカ
ードラウンジで焼酎の試飲を楽しんだり、土産物を物色したりする。
ジェットスターの運賃は、関空から熊本往復が諸々込みで2人合計
7720円。ともかく予報に反して、好天に恵まれたのが何よりだ。
山歩きの部分は消化不良だが、温泉も楽しめ、まず々満足な3日間。