前嵩から下山して次は屋良部岳を目指す。大嵩西入口のバス停に戻る
が、適当なバスはないので崎枝交差点まで1km強の距離を歩く。そ
の間タクシーが拾えたら、6km先の北側の登山口へ回るという計画。
もちろん流しのタクシーなんて走ってる訳ないが、川平湾に客を送った
帰りの車が通るかも。だが通過する車の8割はレンタカーで、タクシー
は1台も通らず、その場合林道を歩いて山頂直下まで行く計画だったが、
でもやっぱり林道歩きは楽しくない。6kmなら歩けない距離でもない。
交差点で少しを休み、北側登山口へ向け歩き出す。すると崎枝集落手前
で、客を乗せたタクシーが来た。手を挙げると止まって「何処行くの?」
「すぐ戻るから歩いてて。」後席は家族だったのかな。交差点まで行き
戻って来たよう。だが北側登山口は運転手さんも知らないという。とに
かく走ってもらうと、御神岬の分岐から1km程の路肩に看板があった。
草刈りがされた直後だったのが幸運。草が繁茂してたら行き過ぎていた
ろう。崎枝集落の手前から1120円の運賃。運転手さんも初めて来て
「へえ、こんな所から。」と言われていた。他に目印となるものはない。
運転手さんに色々話を聞いてみたかったが、看板を見落とさないように
気を張っていたので殆ど会話出来ず。野底マーペーには登られたことが
あるよう。崎枝には小中学校があるが遠足で山に登ることはないようだ。
登山道は良く踏まれている。これまで登った石垣島の山とは林相が違う。
温帯照葉樹林といった感じで南洋らしさを感じない。北風が吹き込み気
温も20度位と涼しとい。此処ではヒルの心配はしなくても良いだろう。
大して傾斜も上がらない道を淡々と歩いて行くと、リュウキュウ松の大
木が路傍にあった。根本の周囲は3mはあるだろうか。見上げると多く
の枝が中途で折れている。度重なる台風に耐えて育った存在感を感じる。
ようやく傾斜が増すと巨岩が次々に現れる。さらに急傾斜をこなして
暗い照葉樹の森に入ったと思ったら、次の瞬間パッと視界が広がった。
6畳ほどの岩のテラスは、北側の展望が効いて御神岬の灯台が見える。
ガイド本にテラス1と記述の有る所だ。平たい岩に座り込んで一休み。
バスの車窓から見ると何処がピークだろうと思うほどの、凡庸な丘陵
だったが登ってみれば、尖峰の上かのような展望が得られる不思議さ。
東側には午前中に登った前嵩が手前に、桴海於茂登岳、ウムヌファ岳、
ひと際大きい於茂登岳。よく見ると前嵩の鞍部から野底マーペーが頭
だけチョコンと出ている。カーラ岳以外の今回歩いた山全部が見える。
テラス1での眺望に満足した後、再び照葉樹の森に入ると、三角点が
ある。昔は櫓が組んであったり、標識の旗竿があったり周囲は伐採さ
れてたが、今はチップが埋め込んであるので藪の中でも構わないよう。
三角点から南東側へ少しで巨岩に出会う。此処が実質的に山頂だろう。
この形は何に似てるかな。ガイド本にはテラス2と無機質な名が記さ
れているが本当かな。これほど個性的な巨岩に名前はないのだろうか。
上に登るとクジラの背のよう。山々の展望は同じ、南側には海が広く
見える。とても風が強いので家族は座り込んでいる。上着を着ていな
いハムは寒い。麓から見た平凡な山に、こんな展望所があるとは驚き。
北風を避けて岩場の南側に座り込む。今日2回目の昼食。離島ターミ
ナルの売店で買った名物。金城かまぼこ店がたぶん元祖。かまぼこの
中にジューシーが入っている。もう一つは類似品で黒米が入っている。
金城かまぼこ店のジューシーは270円とお高いが、家族に言わせる
と断然美味しいそうだ。ハム的にはどっちも同じように思うんだけど。
サーターアンダーギーの残りがデザート。まあまあ石垣島らしい食事。
南側に見えているのは竹富島。30年前に行ったが、1時間もいると
飽きてしまった。その右奥に黒島が見えるはずだが平たい島で今日は
見えない。黒島では当時はキャンプ指定地だった仲本海岸で3泊した。
サンゴ礁が素晴らしく、リーフ外側のドロップオフでもシュノーケリ
ングしたり、まだ観光地化してなかったので楽しかった。南西側には
小浜島。その向こうに西表島が見える。南風見田ノ浜でキャンプした。
そこに定住者が二人いた。離婚して旅に出たという青年と、自給自足
の生活をしている仙人の様な爺さん。でも駐在さんが注意しろと言い
に来た。濃密な一泊二日だった。十分に展望を楽しんだので下ろうか。
僅か5分で林道に降り立つ。此処から崎枝交差点まで4km位のはず。
やっぱり林道往復はつまらなかったろう。家族の足の問題もあるので
我が家の節約ポリシーには反するが、結果タクシーが拾えて良かった。
グネグネと蛇行する林道を40分も下るれば、崎枝集落が見えてきた。
まる北海道のような広い田園風景。さて屋良部岳で予定の山行は終り。
天候は今いちだたけど、雨が降らず毎日行動できたのでまあ良しかな。
崎枝バス停で時刻を見ると20分も待てば川平行きがある。オマケに
観光して帰ろう。ただ川平で次のバスターミナル行きは14分後。そ
の次は2時間後になるので、駆け足で川平湾だけ見に行くことにした。
もちろん30年前にも一度来ている。晴天でエメラルドブルーの海が
とても綺麗だったとかすかに覚えている。当時は湾の一面に真珠養殖
の筏があったはず。今は一基もなく、海の美しさが増しているだろう。
曇りでも十分綺麗だ。今朝見た離島ターミナルはまるで飛行場のよう。
離島に渡る大勢の観光客で賑わっていた。外国人の姿も多いが、高齢
者の団体の元気の良さに驚かされたりした。石垣島の観光業は絶好調。
それも新しい空港が出来て、更にLCCが就航するようになったから、
島の人も気軽に大阪に買い物に行ったりできるだろう。そんなことを
思っていたら残り4分しかない。慌てて川平公園前のバス停に向かう。
同じバスに乗って来た外国人観光客の中にも数組が、我々と同じように
14分間の観光を試みていた。たくましい。バス停から見る前嵩はなか
なか険しい姿だ。川平から登るコース無いのかな。あれば歩いてみたい。