摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

ウマヌファ岳(450m) 桴海於茂登岳(477m)・・・石垣島

f:id:aw2q:20190416140051j:plain

石垣島旅行2日目。今日の天気予報は午前中曇り、12時頃に前線が

通過して雨が降るという。そして明日そしては曇り、明後日は晴れと

いう予報だった。予定通り展望の期待できない順に登ることにしよう。

f:id:aw2q:20190415144702j:plain

平得東のバス停6時55分通過の3系統バスに乗車する。行き先表示

は伊原間となっているが、時刻表に東回り一周線とあるように、米原

を経由してバスターミナルに戻る周回バス。空港で通勤客を降ろすと

f:id:aw2q:20190415144722j:plain

我々を含め3組の観光客だけ。伊原間で16分間停車し平野行に接続。

8時に発車すると舟越から峠を越え、太平洋から東シナ海沿いに回る。

浦底湾越しに桴海於茂登岳を望むが、またしても頂上はガスっている。

f:id:aw2q:20190415144740j:plain

富野で乗って来たお婆さんは5名の乗客を見て、「今日はお客さんが

多いね。」と言っておられた。8時30分米原ヤシ林入口で下車する。

県道を西へ少し進んで、知花食堂前の脇道を、山に向かって南下する。

f:id:aw2q:20190415144804j:plain

月桃(げっとう)という優雅な名前の植物。ショウガの仲間というが

見た目からは分からない。白い花かと思いきや、蕾が開くと中は黄色

い花弁。花の香りを嗅いでみるが無臭だった。むしろ葉が香るそうだ。

f:id:aw2q:20190415144829j:plain

そんな珍しい花を見ながら歩いていると、ほどなく道は直角に曲がる。

そのまま進むと米原ヤエヤマヤシ群落地。道標もなく道らしきも見当

たらずに、椰子記念館の駐車場まで進むが、どうも違うと戻ってきた。

f:id:aw2q:20190415144850j:plain

やはり突き当りの砂糖キビ畑から入るのだろう。左手の畔を進んでみ

ると、密林に入って行く道があった。改めて写真を見ても何処か分か

らない。すぐにイノシシ除けのフェンスに扉があるので道なんだろう。

f:id:aw2q:20190415144921j:plain

この付近は、かつて歩いたことのあるマレーシアの森より植物が濃密

で、正に熱帯雨林という感じだ。写真はサキシマスオウの板根。取水

パイプに沿って歩いて行くと沢に出たが、踏跡は見当たらなくなった。

f:id:aw2q:20190415144942j:plain

一旦戻って斜面の道に入る。いつもは嫌いなマーキングだが、今日は

全面的に頼ることにした。粘土質の斜面は何処も固く、踏跡を足裏で

感じる事もできない。踏跡自体が地形と関係なくふらついている感じ。

f:id:aw2q:20190415145012j:plain

やがて踏跡は右手の沢を渡り、斜面を登って行く。尾根に乗るまでは

十分に道と言えるレベル。幅も広く良く踏まれている。ひとしきり登

ると踏跡は左手に斜上して行くが、尾根筋と変わって陰湿な雰囲気だ。

f:id:aw2q:20190415145036j:plain

可愛いキノコだと写真を撮っていたら、足元に何かうごめく者がいる。

家族の靴に着いた黒い物も動いてる。小さなヒルだった。慌てて虫除

けスプレーをかけると、ポロポロ落ちる。軍手で掴んでもすぐ取れる。

f:id:aw2q:20190415145055j:plain

鈴鹿ヒルに比べれば扱い易いが、血を吸う事には変わりない。先行

していた家族は20匹以上、後ろのハムも10匹ほど引き剥がしたが、

全部取れたとは思えない。歩いていると次から次へ這い上がってくる。

f:id:aw2q:20190415145119j:plain

鈴鹿のように木の上から、ポタポタ落ちてくるのはいない。数回立ち

止まっては引き剥がしていたが、キリがない。あるだけの虫除けスプ

レーを吹き付けて進むことにした。家族は既に何か所も咬まれている。

f:id:aw2q:20190415145141j:plain

踏跡は桴海於茂登岳の標高300m前後の斜面をトラバースして行く。

後から考えると此の一帯がヒルの生息地であったよう。ウマヌファ岳

との鞍部を流れる沢に出た所で、もう一度ヒルを剥がし沢沿いに進む。

f:id:aw2q:20190415145201j:plain

平流沿いに20分以上も歩く。興味深い特異な地形だ。花崗岩の真砂

の河床は、周囲の林相こそ違え鈴鹿の源流域に似ている。奥の二俣に

到着。前方にウマヌファ岳への道、右手背後には桴海於茂登岳への道。

f:id:aw2q:20190415145219j:plain

まずはウマヌファ岳に登ろう。沢筋から尾根に出るまでは良かったが、

そこからの踏跡は迷走状態。非常に緩やかな斜面を、僅かに登ったり

下ったり。その上やたらジグザグに進む。踏跡自体が迷っているよう。

f:id:aw2q:20190415145239j:plain

一つ岩を越えると、ようやく傾斜が上がる。ヒルや踏跡を辿ることに

追われ気づいていなかったが、陽が差している。後から知ったが此の

日、石垣島北部で31度を記録したというが、さして暑さは感じない。

f:id:aw2q:20190415145316j:plain

山頂が近づくと、昨日と同じリュウキュウチクの藪となる。踏跡はし

っかりしているが、前方を行く家族の姿が数メートル離れると見えな

くなる。ふとダニはいないかと気になるが、今さら考えても仕方ない。

f:id:aw2q:20190415145338j:plain

前方を歩いている家族が声を上げる。岩の上に出て展望が広がったら

しい。なるほど藪の斜面はまだ続くが、巨岩が山頂にかけて点在する。

その最下部の一つに乗った。上空は薄い雲に覆われてはいるが明るい。

f:id:aw2q:20190415145404j:plain

振り返ると野底から島北部の山々。ところで家族は木ノ袋尾根で捻挫

した足が完治していない。整形外科で処方された痛み止めを服用して

いる。登りはまだ良いようだが、長い下りが続くと痛みが増すようだ。

f:id:aw2q:20190415145427j:plain

二段に積み重なった巨岩に突き当たれば頂上直下。我々は左から回り

込んだが、岩の隙間を潜って行くこともできそう。此処にも石造りの

香炉があって拝所だったようだ。炉の中には古い硬貨が沢山入ってる。

f:id:aw2q:20190415145505j:plain

積み重なる巨岩の中で一番高い岩に乗る。おそらく此処が頂上だろう。

昨日登った於茂登岳はガスに覆われている。まずは靴を脱ぎズボンを

めくりヒルを探す。やはり数匹いた。血を吸って丸々したのもいたり。

f:id:aw2q:20190415145659j:plain

今日の昼ごはんは、ホテル近くの「よろずストアー」で買ったお弁当。

沖縄の弁当というと、容器から溢れるほど盛ってあることが多いけど、

石垣島は控えめな感じ。値段も350円と相応で特に安いと思わない。

f:id:aw2q:20190415145536j:plain

昼食を終えたら位置を変えて、眺望を楽しもう。積み重なる巨岩の隙間

が笹に隠れている。落ち込まないよう慎重に歩く。前方は桴海於茂登岳

この山に海は隠れるが、ウマヌファ岳からの眺望に奥行を与えてくれる。

f:id:aw2q:20190415145805j:plain

北側の岩に乗ると川平湾がすっきり見えた。湾の背後に前嵩(263m)。

陽が差しているので、。ややガスっぽいが海の色が綺麗だ。予報では曇

りだったが、5日間でこの日が一番ましだったり、不安定な天候が続く。

f:id:aw2q:20190415145837j:plain

南西に底原ダム。さして期待していなかったウマヌファ岳だが、今回の

旅行で登った山の中では一番。熱帯雨林から真砂の源流域と、道中に変

化もあり、山頂からの眺望も素晴らしい。もっと登られてもよいだろう。

f:id:aw2q:20190415145900j:plain

奥の二俣まで戻り対岸の道を、桴海於茂登岳に向かう。此方の道の方が

よく踏まれているのでウマヌファ岳より、登る人は多いのかもしれない。

ガイド本には、旧日本軍のかまど跡とか、塹壕があると記されているが、

f:id:aw2q:20190415145924j:plain

樹林に埋もれていたのか、見つけられないまま登って行く。下りに利用

したい別の登山道の分岐があるはずだが、それも分からないまま。展望

も無垢単調な山道だ。リュウキュウチクが出てくれば、山頂も近いはず。

f:id:aw2q:20190415145947j:plain

ひとしきり藪を分けて登って行くと、背を越す藪の中にポツンと石柱が

あった。これは琉球政府と刻印とされた旧の三角点ということだ。周囲

に展望はないが、東側に藪を分けた痕跡と、北側には踏跡が続いている。

f:id:aw2q:20190415150014j:plain

東側に藪を分けると岩がありその上に立てば、なんとか眺望が得られた。

北東方向にピークがある。新しい三角点はそこにあるというが、藪を漕

いでまで行く気にはならない。その向こう浦底湾の美しい青色が際立つ。

f:id:aw2q:20190415150103j:plain

旧の三角点から北側に数メートル下ると、平たい岩があり展望が開ける。

細長い川平湾の全景が見て取れる。ポツポツと浮かんだ雲の姿が面白い。

写真には写っていないが、右手には巨岩が累々と積み重なる所も見える。

f:id:aw2q:20190415150130j:plain

さて下山はガイド本に記されてある西側のコースに入りたい。頂上から

ずっと右手を注視して下ってきたが、踏跡らしきは見つけられなかった。

見つけたのは日本軍の壕跡だけ。仕方ないヒルは嫌だが元の道を下ろう。

f:id:aw2q:20190415150210j:plain

道に被さる倒木に太い蔓。と思ったら大きな蛇だった。逃げてくれない

ので迂回した。サキシマスジオ(先島筋尾)という名らしい。再びヒル

の攻撃が始まる。先を歩く家族の踵には、黒い斑点が次々に増えていく。

f:id:aw2q:20190415150309j:plain

トウキビ畑に出た後ヒルを引き剥がした。靴も脱いで探すが完璧でない。

人により耐性が異なるのか、家族は咬まれた時は痛むがその後は大丈夫。

一方、ハムは痛みは感じないが、数日後まで腫れと痒みが引かなかった。

f:id:aw2q:20190415150456j:plain

帰りのバスの時刻までは2時間以上ある。知花食堂で「そば」を頂いた。

鰹節の出汁が香るやさしい味。小が350円、大が450円で値段も優

しい。おまけに白い果肉のパインも頂いた。美味しかったです御馳走様。

f:id:aw2q:20190415150542j:plain

それでも時間を余すので、米原キャンプ場を見に行こう。三十数年前に

一泊した。当時は無料。長期滞在者が多い事で有名で、テント宛に郵便

が届くという噂もあった。それだけに雰囲気は悪く一泊だけで退散した。

f:id:aw2q:20190415150603j:plain

昔は防風林の外と砂浜にサイトがあったが、今は内側の整備された平地

に設けられている。一人一泊400円なので、長期滞在者はいないよう。

場内には海用品のレンタル店が有ったりして、観光地っぽくなっていた。

f:id:aw2q:20190415150626j:plain

米原16時22分の11系統バスでサンエー前まで帰ってきた。「よろ

ずストアー」でマンゴー味かき氷150円。家族に今日の感想を聞くと

ヒルに咬まれたけど最高!」と言う。確かに充実し楽しい一日だった。