月曜日は天気が良いという予報だったが、何処へ行こうか思いつ
かず、前日の夜9時過ぎになって、ようやく行きたい所を決めた。
段々と計画のストックが減って、季節に合うコース選びが難しい。
摩耶堰堤の乗り越しから木ノ袋尾根を望む。数年前まで向かって
左に縦長、右には丸い岩場が見えていたが、樹木が茂ったせいか
丸い岩場が見えない。休憩に度々利用したので東側の様子は分る。
今日は縦長の方の岩場を、西側から巻き上ってみようという計画。
杣谷道を淡々と歩き木ノ袋谷出合。石階段を少し上がると小谷が
左から流れ込む。岩場に至るだけなら、木ノ袋尾根の一般道から
トラバースすれば簡単だが、それではつまらない。まだ歩いた事
のない小谷を遡行して、出来れば縦長の岩場の基部に着きたいと
考えた。中途半端な位置にある道標。昔は谷道があったからかも。
水流はすぐに消えて伏流となる。二俣が現れる。明らかに左俣が
本流と思われ進むが、後で右俣の方が、僅かに標高の高い所まで
伸びていると知る。入り口は狭いが、中に入ると谷らしくなった。
真南を向いているので、照葉樹の森の中でも快晴の今日は明るい。
ゴーロの積み上った河原を登って行く。尾根道に比べると傾斜が
緩い。という事は詰めは、その分だけ急傾斜になると予想される。
石油ストーブの残骸が幾つか落ちている。近くには灯油用の赤い
ポリタンクもあったり。木ノ袋谷の治山ダム建設時に飯場小屋が、
この上にあったのだろう。此処から少し上がるとまた二俣がある。
此処は明らかに右俣が本流だと思われてので、一旦そちらに進む。
だけど方向的には、この辺りで左に寄らないと縦長の岩場の下に
出ないと思われる。それで思い直し、左俣を探ってみる事にする。
ところが左俣は、すぐに岩場に突き上げて終わる。英語のガリー
より、仏語のクーロアールの方が似合う魅力的な地形。よほど登
ろうかと考えたが、自信も無く本来の目的地でもないので止めた。
中間尾根を渡って右俣に戻る。土砂の詰まった急峻な谷を上る
と右側に別の谷が登ってきていた。入り口近くで別れた二俣の
一方だろう。面白い地形だ。そちらには入らずにそのまま進む。
南北に細尾根が平坦に伸びている。南端は小高い岩場で、左俣
のクーロアールを登れば、此の辺りに突き上ったかと思われる。
その岩場からは樹幹越しに、目的の岩場が望めた。その間には谷
があるので、右側から回り込んでいく必要がある。そもそも今日
歩いた谷からは、直接には岩場の基部に行けないという事になる。
プラトー上には踏跡がある。ダム建設時の作業路跡だろう。もう
薄くなっているが、足裏に感じる固さが獣道のそれとは全く違う。
多少藪が育ってきているが、切開きがあるので楽に歩いて行ける。
北側へ進むと右手にスカイラインが見えて、そちらに登って行く
踏跡と、更にトラバースしていく二手に分かれた。右に上がって
みると木ノ袋尾根の一般道。西から谷が突き上げ尾根が狭まる所。
再びトラバースする踏跡に戻る。その道が西に向うようになると
上方に岩場が見えた。恐らく休憩によく利用する丸い岩場。頂部
は少し傾斜があるが、二人なら昼食を摂るのに適当。展望も良い。
更に西に進むと目的の岩場の基部が見えた。急斜面を強引に登り
真下まで行ってみる。家族が覗き込んでいるのは大きなクラック。
二つあり、そこを登って行けないか考えたようだが我々には無理。
真下から見上げると、上部に方形の岩が乗っている。目的の岩場
に違いないだろう。人工登攀の練習に良さそうだが、見る限り古
いピトンは残ってない。六甲学院山岳部は来なかったのだろうか。
基部を西側に回り込んでみる。この写真は大きな倒木の根の部分
に立って写している。岩場に生えてた大木が豪雨で剥がれ落ちた
よう。此処で簡易ハーネスを着けて、補助ザイルを出す事にする。
同じ巻き上るにしても、なるべく小さく巻きたい。岩場と土砂の
斜面の境目辺りを斜上して行けそうだ。岩の上に土砂が薄く乗っ
て踏み抜きそう。家族が「体重が軽いから、私が先に行こうか。」
というが、今日は先行したい気分。この付近は南向きで土も落葉
も乾いて滑り易いし、朽ちた木が多い。灌木は静荷重でもグラつ
く。真下で確保する家族に、岩を落としそうで北側斜面に逃げる。
結局ザイルは着けたものの、土砂の急斜面ばかり登って、岩場の
頂部と同じ高さまで来た。前方に二本の松の大木が生えている所。
肉眼では方形の大岩が見えたが、写真では藪が随分込んで見える。
中間ビレイは取らずに来たが、頂部に出る手前が、手掛かりがなく
基部まで切れ落ちているので、一本だけビレイを取って頂部に至る。
松の大木で家族を確保する。沢登りでこんな事してたら日が暮れる。
家族には「道具が歩荷の重しにしかなってない。」と皮肉を言われ
るが、積極的に登る体力も技術も既にない。安全を期すのも仕方な
いだろう。それでも目的の場所に来れて、まずまずの達成感に浸る。
おおよそ180度の展望。東側には長峰山が見える。隣の丸い岩場は
成長した樹木に隠れている。その間は階段状の岩場で、トラバースし
て来る事も不可能ではないかも。但し此方に上がる最後の所が渋そう。
南は杣谷から灘区や東灘区の市街。それに六甲アイランドが望まれる。
杣谷には摩耶堰堤、摩耶第二堰堤。摩耶第三堰堤が城壁の如く見える。
手前のこんもりした木々の盛上りが、先程歩いてきたプラトーである。
西側に山寺尾根、寒谷南尾根、寒谷北尾根が険しい。ほぼ同じ標高に
北尾根の岩塔がある。あそこから此方を見て、東側の丸い岩場ならば、
休憩場所に良いだろうと探した経緯がある。2013年6月3日の事。
昨日の夜に急に「明日は山に行こう。」と言ったので、用意もなくて、
朝、家族の作ったオニギリだけ。「写真を撮るなら卵焼きでも付けれ
ば良かった。」と家族は嘆くが、長居したい場所でもなく十分な食事。
昼食後は上部に抜けて一般道を目指す。頂部からは傾斜も緩むようで、
ザイルは解いてしまう。一段上がると平たい場所で、かつては架線場
だったろう、錆びたワイヤーが放置されている。過去に一度来ている。
その上には扁平な巨岩があるが、やはり古いワイヤーが散乱している。
治山ダムは大嫌いだが、工事が終わった頃、この場所は絶景の展望が
得られたに違いない。少々羨ましく思う。今は樹木が茂り展望はない。
頂部から一般道に出るまでは5分と掛からない。記憶ではもう少し岩
の積み重なる所があったように思うが、それは西側の丸い岩場からの
記憶だった。「上から来れば簡単じゃない。」と、家族は不満そうだ。
下から登るから楽しいんだと思うがまあ黙っておく。一般道を辿ると
木ノ袋尾根の頭も近い。4月に入れば、ミツバツツジ。その後はシロ
バナウンゼンツツジが咲き誇る所だが、今はまだ芽吹きも見られない。
木ノ袋尾根の頭から笹薮の中の道を通って、アゴニー坂の鞍部に着く。
実質的に今日の山行の終了点。毎回ホッとする瞬間だ。それはそうと
数年前に比べて此処に来る途中の、踏跡の様子が随分と変わっている。
10年前は治山ダム建設の作業路だったのだが、ハイカーが多く通る
ようになって道筋が変わった。どちらかというと以前の方が効率的だ。
掬星台の手前ではドウダンツツジ(満点星)が満開。今日の唯一の彩。
掬星台の星の駅前では、野良猫が餌をくれる人を待ってスタンバイし
ている。西宮浜にも数十匹の野良猫が居るが、こんな殊勝な姿は見た
事がない。掬星台では思いのほか、猫同士の餌の獲得競争が厳しそう。
掬星台からの視界もクリア。特に大阪市内のビル群が良く見えている。
平日だがハイカーの姿はそこそこある。月曜が休みの人は多いのかも。
下った水道橋商店街で、やけに野菜が安かったので大量に買って帰る。
この山行は、kurokuwa65さんの山レコ記事 (2019年1月3日)
を参考にさせて頂きました。有難うございました。休憩場所に不向き
だろうという理由で、見逃していた岩場を再発見する事が出来ました。
今日のBGM