摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

六甲川 山田堰堤上の岩稜尾根から長峰山の肩へ

当ブログにリンクを張らせて頂いている長峰大好きさんのインスタグラム。

2月17日に投稿された写真一枚目、六甲川右岸の険しい岩稜にフォーカ

スされている。そこは難しそうだが、南側の谷なら登れるのではと思った。

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短くて急峻な谷のようだが、その分水量は少ないだろう。手持ちの道具

類は全部持ってきたが、足回りはハイキングシューズ。神戸市バス16

系統に乗車して終点で下車、表六甲ドライブウェイの旧道を歩いて行く。

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ところが新道との交差点の先は通行止めになっていた。今日は日曜な

ので工事は行われていないが、平日のハイカーの通行はどうなのかな。

当初金曜に予定していたが、天候をみて日曜にしたのは良かったかも。

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路肩が崩れ落ちたのか、谷側一車線分の穴が開いている。六甲堰堤を

過ぎると前方に件の岩稜が見えてきた。何度も歩いているのに気付い

ていなかった。その南側に主稜線に突き上げる目的の谷が見えている。

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長峰大好きさんの写真は、さらに旧道を登った所から撮られたもので、

山田堰堤や上流の河原も写っていてもっと迫力がある。北側の谷は歩

いたことがあるが、目的の南側の谷は傾斜がキツイようで不安になる。

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山田堰堤の上で河原に下る。何度も通過している場所だが、此処に谷

が流れ込んでいるとは知らなかった。ガレの押出しがあるだけで伏流

している。取り敢えず簡易ハーネスを装着しメットを被って入渓する。

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ところが入渓するとすぐに人工物が行く手を遮る。六甲砂防事務所の

設置した観測機器だった。谷幅いっぱい塞いでいるので遡行できない。

その代わり左岸に建設時の作業路跡が残っている。そこを巻いて行く。

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最初に見た観測機器の上にもう1基ある。ようやく谷に降りれるかと

いう所で、上を見上げると更に1基。おまけに太いケーブルが3本上

流に延びている。それ故に遡行意欲を無くしてしまう。右手を見ると

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陽光を浴びた岩場がある。人工物のある寒々とした谷間に嫌気がさし、

誘われるように基部へトラバースした。これがドライブウェイから見

えた岩稜末端なのは間違いない。直登は難しいが左から回り込めそう。

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岩屑の詰まったザレ場を登る。この時はまだ様子を伺う程度の気持ち

だった。どうせ詰まって谷へ戻ることになるだろうと。後から考えれ

ば、この岩稜は3段に分かれていて、まず1段目を巻き上ったようだ。

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下段から中段の取りつき。とても脆い岩相で落石を起こさないよう

細心の注意を払う。岩場自体は階段状で立木に手掛りを求められる。

というか2段目の印象は薄いので、さして難しくなかったのだろう。

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やはりリッジの左側から回り込むように登っている。先行する家族

は「此処まで登ったら上へ抜けるしかない。」と云う。その意味は

下るのは難しいし、懸垂下降するとザイルの回収が出来ないとの事。

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確かに木々は密生しているしザイルは絡まりそう。無理に引くと落石

を誘発するだろう。先行する家族に上方の様子を聞くと、「何とか登

れそうだ。」と返ってくる。2段目を終えると小さなテラスがあった。

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此処でザイルを出す事にする。家族は「え~こんな所で?」と不満そ

うだが、我が家の家訓の一つに「有るものは使え!」というのがある。

いざ詰まってしまうと、ザックからザイルを取り出すのも一苦労する。

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先行した家族が「右側のリッジを登っても良い?」と聞いてくる。確か

にボコボコした岩場で一見すると登り易そうに見えるが、岩塊ごと剥離

しそう。「止めてくれ」と返すと土砂の詰まった凹角を斜上して行った。

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家族が登りたいと言ったリッジが上の写真。小さなホールドは腕力でも

確かめられるが、この大きさでは体重を預けた時に脆さを知る事になる。

サウスロード下の岩場で、大きな岩塊が割れて墜落した事を忘れたの?。

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家族は中間ビレイもろくに取らずに登っている。上段の核心部。細かい

スタンスはあるが手掛りが乏しい。左手は土中の細い木の根。右手は土

砂を押さえつけるようにして抜けるが、浮き岩の多い所で動作は限定的。

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抜けた所で振り返る。山羊戸渡入口のヘアピンカーブ。右には山田堰堤。

まあ写真を撮っているぐらいだから安定はしているが、滑落すると六甲

川の河原まで落ちそうだ。家族はこの上の大きな松の木で確保していた。

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確保地点から上も岩場は続くが一気に傾斜が落ちた。念の為にザイルを

解かずに20mほど進んだが、この先に難しい所は無さそうと思われた

し休憩に良さそうな場所があったので、紅茶とビスケットで小休止する。

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休憩後、もう一段上がってザイルを解く。長峰山の東面は何処も急峻な

斜面だが、尾根は割に広い傾向がある。その点この尾根は両側が切り落

ちて異彩を放っている。岩質さえ固ければ、面白いルートかもしれない。

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中央が山羊戸渡の632ピークだろうか。手前はイノシシの戸渡しと勝

手に呼んでいる尾根。さして難しくはなかったが、こうしてみると結構

急峻。イノシシの作る獣道が無数にあり、それを利用して登って行った。

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この付近まで来ると此の尾根にも、獣道が現れるようになる。左右の谷

から乗り越えて行き来している。登るにつれて尾根の幅は広がっていく。

ただ傾斜は急になる。この辺りは長峰山東面の尾根の共通点とも云える。

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南側の斜面に人工物が見える。どうも砂防事務所の設置した観測機器の

ようだ。確かめてはいないが、もしかすると下流で見たケーブルは此処

まで通じているのかも知れないな。とすると遡行価値は余り無さそうだ。

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下生えのない急斜面を登って行く。展望もなく単調なアルバイトが続く。

山田堰堤の標高は391mで、長峰山の標高は687mに過ぎないので、

その差300m足らず。まして一般道には標高600m付近で出るはず。

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その標高差200m程の登りに四苦八苦している。脚力の衰えは明らか。

ようやく笹薮帯に入れば一般道の有る主稜線も近い。3年前に花を咲か

せ枯れてしまったまま。又青々とした笹薮に戻るのはいつになるだろう。

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行き着いた一般道は、伐採地と関電巡視路分岐の中間あたり。地理院

図を見て予想していた場所より、かなり高い所。それはそれで嬉しいが、

地図を読めていないという事だ。昼食は天狗塚で摂ろうと山頂に向かう。

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枯れた松が伐採されて、展望が広くなった天狗塚。予想最高気温12度

ということだったが、微風なので体感温度はもっと高い。空気も乾いて

いて爽やかだ。初めてのルートを無事歩き通せ、つい気も緩んでしまう。

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今日の昼食はパンデュースのドゥミ・バゲットにスモーク・オイルサー

ディンのサンド。パンの美味しさは変わりないが、その味に負けずにオ

イルサーディンがしっかりと主張してくる。半分ずつで二人とも大満足。

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さて下降は伯母野道を伐採地手前まで戻り、道を外して南側の谷に入る。

上の写真では緩やかに見えるが、実際は急斜面が続く。過去2度登って

いるが下るのは初めて。下るにつれ斜面に転がる岩が多くなり、やがて

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白い御影石が積み重なる場所に飛び出る。六甲道辺りの展望も抜けている。

韓国の山ではよく見られる地形で、もっと大きな巨岩が積み重なり長さも

数百メートルに及ぶ。案内板等には岩塊流と漢字がふってあることが多い。

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小規模だが六甲山系では此処だけではなかろうか。ところで此処に来た目

的は周囲を取り巻く、ツバキの花が咲いているのではと思ったから。確か

に大きな蕾が鈴なりについているが、開花している物は僅かしか無かった。

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谷をそのまま下ると砂防ダム上の崖地に出てしまうので、やや右岸よりの

斜面を下って行く。ダム建設当時の踏跡が薄っすら残っているのでそれを

拾って行く。ダムを見下ろす地点からは、棘のある木が繁茂して苦労する。

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スリットダムの水抜きに座り込んで小休止。銘板を確認すると平成25年

10月完成の天狗塚堰堤。完成直後に来ているが、もうそんなに経ったか

と思う。当時は土砂むき出しの所だったが、すっかり藪が生い茂っている。

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伯母野山町への道は未だ通行止めなので、篠原台21丁目に降りて来た。

今日は山頂下で20名程の団体一組に出会っただけ、その方たちも天狗

塚には上がられず、そのまま杣谷峠に向かわれた。意外に静かな日曜日。

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初めてのルートを無事歩き通せたことを祝して、ケーブル下駅からバス

に乗る。家族が「下りでバスに乗るのは初めてじゃない?」とか云うが

そんな事はないと思うけど。終点まで乗り御影クラッセで買物して帰る。

 

今日のBGM・・・先週と同じShape of Youだけどアレンジでこんなに


Shape of You - TRiECHOES (Ed Sheeran Cover) | Traditional Japanese Harp "箏 KOTO"