摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

桜谷出合から生田川上流を遡行する

豪雨から丸4日経ったが、まだまだ摩耶山の谷も増水しているだろう。

朝の内こそ晴れていたが、天気予報では一日中曇りだという。だが日

延べしても、水量が減ずるばかりなので、思い切って行く事にしよう。

ケーブルカーには、大勢作業服姿の方々が同乗された。豪雨後の設備

点検だろう。摩耶ビューライン・六甲ケーブル・山上バスは平常運転。

但し、阪急六甲からの記念碑台及び、掬星台行きバスは運休中である。

桜谷道を下り生田川に降りると、ちょうど正午。河原の岩に座り込み

昼食を摂る事にした。昼ごはんは家族が作ったバナナパン丸ごと1斤。

水量は落ち着いている。徒渉点も靴は濡れるだろうが普通に渡れよう。

昼食を済ませ、桜谷出合の徒渉点から入渓する。前回は2015年7月。

台風による豪雨の8日後に入渓している事が、その時と比べると水量は

明らかに少ない。これは少々意外に思われる。水の濁りは予想を上回る。

50米も進むと左岸から支沢が、滝となって流れ込む。徳川道沿いの沢。

登ってみたくなるが、すぐに徳川道が交差するので、興醒めするだろう。

次には丸い釜が現れる。水が澄んでいれば、大台・大峰級の淵なのだが、

残念ながら水質が悪くて魅力はない。家族が見上げているのは、右岸の

ヌクト・ゲートロック。風化して樹木が密生しているので判然としない。

この釜に流れ込むナメ滝2米から上流、シェール道が交差する手前まで

が第1のハイライトである。水質の悪さも一時忘れるほどの区間となる。

スケールは20分の1にも満たないが、一瞬、クワゥンナイ川のナメを

思いだすが、まあ想像力を逞しくしなければ、摩耶山の沢は楽しめない。

それでも川幅一杯に広がったナメは壮観である。河床の岩が黒いのは苔

が生えているからだろう。花崗岩なので、本来はもっと明るい色のはず。

この付近は左岸の一般道とは少し離れているので、静かな沢歩きが楽し

める。距離にすると200米足らずだが、滑や淵が次々に現れ飽きない。

徳川道と別れたシェール道が交差するが、その徒渉点を過ぎると小さな

堰堤がある。三枚岩にアプローチする時に左岸を越えるお馴染みの堰堤。

流れ落ちる水流に、今日は厚みが感じられる。左岸から小さく巻き上る。

続いて三枚岩から下ってくる岩尾根の末端が流れを遮る。もう少し変化

が有っても良さそうな場所だが、此処を過ぎると一旦平流となっている。

それはそれで雰囲気は良い。日本の山は何処も彼処も林道が敷設されて、

どんな山奥へ行っても、本流遡行の気分を味わえる所は少ない。奇しく

も生田川沿いには林道が無い。普通の事のようで、これって実は珍しい。

神戸市民の水源として守られているからだとは思うが、この水質の悪さ

はどうしてかな?。そんな事を考えてると、カメラを水没させてしまう。

という訳で以降は、古いスマホで撮影している。すっかり曇り日差しが

なくなり暗い。此処は新穂高の609ピークから、西に下る岩稜の末端。

しばらく岩場が続いて、ミニゴルジェ風な所で終わる。面白い地形なの

だが、それ以上に水質の悪さが気になる。雨で濁っているだけではない。

豪雨後に遡行する場合、このような平流でも危険はある。水流の中にあ

る岩より、岸際の岩が土台の土砂が削られて、不安定になっている場合

があるのだ。直径1米位の岩が動き、足を挟まれそうになった事がある。

その為、それなりの注意を払って歩いている。シェール道の木橋が外れ

ていた。片一方がワイヤーで固定されているので、流された訳ではない。

次の木橋も同じ。わざと片側だけ固定して水流の圧力を受け流す仕組み

なのかな。力のある人が何人かで移動させれば、元に戻す事が出来そう。

前方を堰堤が遮る。八州嶺第三堰堤の副堰堤である。その上には大きな

正堰堤が見えているが、右岸から正副2基の堰堤を一気に巻いてしまう。

堰堤上は真砂の堆積地。シェール道では、最も降雨の影響を受けやすい

場所で、歩道が長期間に渡り水没する事がある。泥汚れが2米程の高さ

の枝葉についている。だが前回は泥汚れが3米程の高さまで達していた。

神戸地方気象台によると、前回遡行した8日前2015年7月17日の

神戸市は、267mmで観測史上第3位。本年7月5日は205mmで、

7月6日は166mm。それぞれ4位と5位の降水量と記録されている。

今回の豪雨は降り始めからの雨量は過去にない規模だが、2015年の

豪雨は急激に増水し山に雨水が溢れたと想像できる。因みに2008年

都賀川水難事故の日の降水量は、35mmという局所的集中豪雨だった。

八州嶺第三堰堤を越えてから、水質が良くなった。もちろん一昨日歩いた

七曲り谷のように澄み切っている訳ではない。水に浸かっているのが嫌に

ならない程度。この付近からの100米程が明るい滑で第2のハイライト。

遡行するのは3度目だが、水質悪化の原因が、八州嶺第三堰堤だと初めて

気づいた。右岸からは獺東谷が流れ込む。この付近はシェール道沿いでも

落葉樹が多くて気持ちよく歩ける部分。今日は曇り空でやや暗いのが残念。

シェール道が右岸に上がり、林道状となる手前。此処の木橋は外れていな

かった。穂高湖堰堤下まで遡行することはできるが、この先は平凡な流れ

となるので遡行を終了する。スニーカーに履き替えて、シェール道を辿る。

とても湿気が多く暑くなってきた。掬星台に着く頃には雨も降りだす始末。

梅雨が明けたというのは本当だろうか。水道筋商店街で野菜を買って帰る。


今日のBGM