摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

木ノ袋谷の支谷を寒谷北尾根608ピーク北側コルへ詰める

この日の天気予報は降水確率0%、ピカピカの快晴のはずだったが。

家を出る頃には、既に高曇り。その後も青空が広がることはなかった。

それでも此の季節は外せない事情がある。六甲道から杣谷に向かう。

長峰坂から杣谷道へ。摩耶第5堰堤を右に見る辺りのミツバツツジ

この株は例年開花が記憶にあるが、年々大きくなっているように思う。

摩耶第3堰堤を越えると、杣谷の右岸に山桜の大木があった。これは

記憶にない。土砂崩れで周囲の樹木が消え、目立つようになったのか。

木ノ袋谷出合でしばし小休止。その後ヘルメットだけ被って入渓する。

キブシ科の木が、花序を簾のように垂らしている。すぐに伏流となる。

第一堰堤(治山ダム)を越えて、3月13日遡行した支谷を左に見て、

さらに木ノ袋谷の奥へと進む。何度来ても険しさに身が引き締まる。

第二堰堤を越え、寒谷北尾根の岩塔への取りつきを過ぎれば、未だ

歩いたことのない領域だ。とりあえず手持ちの装備は全部持って来た。

第三堰堤は左岸から越す。残置ロープが多数あるが、なぜだか堰堤

には向かわず斜面を登って行く。我々は途中から天端へトラバース。

堰堤上からの景色が凄い。屹立した尾根に挟まれた深い谷。写真が

下手で表現出来ていないが、これほどアルペン的な景色が摩耶山

あるとは思いもよらなかった。深緑の森に山桜の淡い色が映えている。

第三堰堤を越えると右岸から支谷が流れ込む。此処が堰堤から見た

深い谷であり、今日の目的の谷だろう。フェルトシューズに履き替えて

簡易ハーネスを装着するが、撤退用の装備で積極的に登る気はない。

出合から数十メートルも進むと小滝に突き当たる。3月13日のルンゼ

のように巻かなければならないかと思ったが、階段状で容易に登れた。

小滝の上には廃棄されたドラム缶があった。堰堤工事の際の物だろう。

その他にもゴミが散在している。尾根から転がって来たのだと思われる。

両岸が立って凄みが増してきた。ただ傾斜はそれほどではなく。さし

当たりの注意は落石を起こさない事。家族が先行する間は待機する。

巨大なチェックストーンの先には、濡れたナメ滝が鈍く光って見える。

この付近が寒谷北尾根の中腹を、鎧の様に巻いている岩場だろう。

「傾斜は緩いから落ちても大丈夫。行け!」と家族に言ったものの。

いざ取り着いてみると、指先をかけたホールドがボロボロと崩れる。

落ちたところでヅルヅル滑るだけと思えばこそ、何とか登って行けた。

ナメの上端にあった岩は完全に浮いている。誤って加重をかけると、

間違いなく滑り落ちていく。複数で入渓する場合、最も危険な要素だ。

ナメを登りきりゴルジェの出口。喉のような場所を通過する。前方が

明るく開けている。標高から考えれば核心部を通過したと思われる。

今までとは変わって、崩れたばかりの様な柔らかい土砂の詰まった

谷を登って行く、相変わらず落石が起る危険があるので交互に動く。

この谷の源頭は岩壁だった。直登は出来ない、左右どちらに行こう。

左は土砂の急斜面。右は岩場のよう。「どっちでもいいよ。」と言えば。

家族は右手の岩場のガリーを登っていった。得意の突っ張り系だ。

ハムは詰まりそうなので、ガリー左側のカンテを登り上部に抜けた。

すぐ上に稜線が見えて、コルに登り詰める。写真では分り難いが、

ヒカゲツツジミツバツツジ・ドウダンツツジ・山桜が咲く爽快な所。

コルからは寒谷を挟んで、掬星台が見える。桜が咲いているよう。

今日の目的は遡行だったのだが、目標は少し南側の608ピーク。

ミツバツツジの群生地。一年に1週間程の開花期にこそ訪れたい。

東側の斜面は日陰になるのでツボミも多いが、若葉が出ている株

は少ない。これだけ良い状態は何年も通っているが初めてのこと。

稜線上は、ほぼ満開。この付近は掬星台から見ても開花が分かる。

西側斜面は日当りが良いので、既に開花してから数日経っている。

ツツジの藪の間に座り込んで遅い昼食にする。今日は目的と目標、

その両方が満足できる結果だった。こんな山行二度と出来ないかも。

食事を済ませると寒谷北尾根の登山道を辿り、オテル・ド・マヤの

ジャグジー脇へ抜けて全縦路へ。子供の丘下の山桜も満開だった。

平日なので掬星台は外国人観光客ばかり目立つ。桜は満開にな

っており、例年よりも早く散るだろう。5月連休まで持ちそうもない。

ケーブル駅で家族のスマホを見ると、万歩計アプリは15000歩を

示していた。凄い所を歩いたと思ったのに、歩数は全然イケてない。

この山行は長峰大好きさんのコメントを参考に致しました。教えて

頂かなければ、怖気づいて行くことはなかったと思います。多謝。