摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

道畦谷北尾根から荒地山に登り、金鳥山経由で岡本に下る。

3月30日の金曜日、花見を兼ねて芦屋川沿いをそぞろ歩いて来た。

平日だけにハイカーの姿は少ない。いつも通り道畦谷への道に入る。

トラバース路に入った途端に、鮮やかなミツバツツジが迎えてくれる。

今年は急に暖かくなったので、ツツジも山桜も一斉に咲き始めたよう。

私設ベンチ前の山桜の大木も満開となっていた。饅頭で小休止。

やや日陰なイメージのトラバース路も、今日はいつになく明るい。

宝泉水から道畦谷右岸の道に入り、小さな谷を一つ渡ると尾根の

末端。踏跡があるが今までは、何処に行くものか分からなかった。

先日來、何度か此の付近を歩いて、道畦谷左俣の右岸尾根であ

ると確信が持てた。明確な切り開きと踏跡が細尾根に続いている。

予想通り展望岩に出た。荒地山東面の景色がすこぶる良い。

今日は大人しく北尾根の一般道を歩こうと思っていたのだが、

北尾根の支尾根に、岩が点在しているのを見て気が変わった。

この展望岩は頂部こそ緩やかだが、両側がスッパリ切れ落ち

ている。複数で来た時には、不用意に動かないようにしよう。

道畦谷に一旦下って、対岸の尾根に取りつけないかと思うが、

猛烈なシダ藪に阻まれて、結局第2堰堤の左岸天端まで登る。

シダ藪と樹林の境を、数十メートルも登ると岩場に出る。シダの藪

漕ぎはもうしないと思っていたが、この先、家族は藪に溺れかけた。

先ほど展望岩から眺めたより、灌木が多くて楽に通してはくれない。

この付近もダムの建設工事中は、架線場として使わていたようで、

太い鉄杭が岩に打ち込まれているが、当時の作業道は残ってない。

北尾根の一般道は、かなり北側に回り込んだ所から取り着くので、

此のルートの方が楽に思えたのだが、踏跡らしきは見当たらない。

大きな岩を越えて行くと、ようやく北尾根の一般道と合流した。

少し登れば、岩のベンチと卓子があるプラトーに着いた。休憩。

今日の昼食は家族の作った控えめな甘さのアップルパイと、コン

ビニで頂いた試供品の無糖カフェラテ。春は新発売の商品が多い。

北尾根はやがて芦屋ゲートからの道に合流し、荒地山頂上に着く。

山腹には沢山の巨岩がある荒地山だが、山頂付近は至って平凡。

休憩せずに通過する。後は幾つかの巨岩を巡ってみようかと思う。

最初に立ち寄ったのは、黒岩一段下にある平頂の岩。30年ほど

前、西宮に住んでいて、家族とよくこの岩に日向ぼっこや昼寝を

しに来ていた。今日も知らない内に10分ばかり眠ってしまった。

高座谷の源流に下り、右岸の尾根に上がると展望岩がある。この

岩は名前があったはずだが思いだせない。荒地山南西面を望む。

芦屋から金鳥山が桜に彩られているのが見えて、岡本に下ろう

と思うが、その前に寄りたい所があって、横池への細い道に入る。

横池を右に見る辺りで、南側の踏跡に入って行くと高さ数メートル

の岩塔が唐突にある。回り込むように登っていけば頂部に立てる。

岩塔自体の高さは大したことないが、両岸が切れ落ちているので、

そこそこ高度感も味わえるし、四方が開けていて解放感も感ずる。

この付近は展望岩にはこと欠かないが、中でも一番好きな場所だ。

元の道に戻って、保久良神社へ向かって下って行くと、道の脇に

錆びた鉄塔がある。放置されているようで立入禁止の看板も無い。

なんと中央に鉄梯子があって登ることが出来る。禁止されていな

いなら登ってみよう。けっこう揺れる。(良い人はマネしないでね。)

上から2段下の踊り場は,鉄板が一枚抜けている。ここまで登る

と風も強いし、怖くなってもう降りる。勿論、展望はすこぶる良い。

途中出会ったご婦人に聞くと、「米相場を伝える旗降り場じゃな

いかしら。」という事だ。なるほど明治時代に使われていた物か。

ただ戦時中、金属供出されなかったのは何か理由があるのかな。

金鳥山の桜並木は思ったより長く続いた。長い間、神戸市内に

住んでいながら来たことがないのは、不明の至りで恥ずかしい。

保久良神社というと梅が有名だが、規模から言えば桜のほうが

遥かに凌駕している。伸びやかに枝を伸ばしている様子が良い。

昨年の台風によるものだろう。桜の大木が根元から倒れていた。

土に張っている根は、ほんの僅かなのに満開に花を咲かせてる。

その生命力に感動しつつ、岡本に下りそのまま家まで歩いて帰る。

芦屋川の桜から始まり、徒歩圏内だが中々見所の多い一日だった。