摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

木ノ袋谷の支谷から寒谷北尾根608ピークに直上する

先週末からは、天気の良い日が続くのに、ずっと家でグズグズしていた。

流石に何処か行きたくなって、3月13日の火曜日にようやく家を出る。

朝から快晴、気温20度近くまで上がるという。六甲道から杣谷へ向う。

平日だがハイカーの姿もチラホラ。摩耶堰堤の下で休んでいるとお一人

登って行かれた。木ノ袋谷出合までは淡々と歩いて行く。雪解け水でも

あるまいが、杣谷の水量が常より多い。出合に着いたのは既に正午過ぎ。

木ノ袋谷に入り堰堤を一つ越える。次の堰堤との中間辺りで、右岸から

は支谷が流れ込む。二段の小滝となっている。家族が傾斜の緩い下段の

小滝を登ろうとするが、足場にした岩がボロボロと崩れ登れそうにない。

今日は撤退用のザイルも持って来ていないし、諦めようかなと思ってる

と、家族は「行けそうだから行くよ!」といって、右側壁を巻いて行く。

まあフリーで下れそうな所までは、登って行っても大丈夫だろうと思う。

上段の滝(見た目は壁)は、右岸に土砂の崩れた所があって、そこから

巻けそうに思えた。まだ崩れたばかりのような柔らかい土砂に、ステッ

プを刻み乍らズリ上がって行く。さほど困難も無く上段の滝の上に出る。

滝の上は大小の岩屑で詰まり伏流していた。ドラム缶は堰堤工事の際の

遺物だろう。この他にも古タイヤ等を散見する。昭和の頃の山仕事では

廃物を放置する事も多かった。残念なことだが、当時の認識はそんな所。

もっと暗い谷かと思っていたが、存外に両岸が低く明るい日が差し込む。

これなら左右の尾根にエスケープも可能か。ところで前方が見通せない。

岩壁が立って詰まりそうにも見える。とにかく進んで確かめるしかない。

岩壁を穿つ様に谷は続いていた。ガレが途切れ、露出した河床に水流が

ある。沢用の足拵えは用意していない。ビブラム底の家族は、「滑って

怖い。」とか言ってる。階段状でスタンスも多いのでそれほどではない。

登っていると感じないが振り返って見るとかなりの傾斜。目指すは寒谷

北尾根の608ピーク。尾根道の険しさを考えると此の先どんなだろう。

一直線に稜線に突き上る谷かと思いきや、この付近では細かく蛇行して

いる。次は何が現れるか、登れるのかと不安と期待が半分づつ。それが

段々と楽しくなってきた。此処まで来れば詰まっても尾根へ逃げれそう。

背後に長峰山が見えている。現在地の標高は、六甲線一三鉄塔ぐらいか。

今回の山行で一番恐れていたことは、寒谷北尾根中腹の鎧のような岩場

の連なりの通過箇所。標高から考えると、此の付近がそうだったのかも。

傾斜が落ちた訳でもないのに谷が広がる。そこに針葉樹が林立している

という不思議な雰囲気の場所が現れた。記憶の範囲では初めて見る風景。

谷はガレで埋め尽されている。こんな所でも、杉は大木まで育つものか。

振り返るとやっぱり急傾斜だ。落石を恐れて交互に動いたり、平行に登

って来たりした。だが寒谷第一ルンゼよりは若干緩い傾斜かと思われる。

巨大な落石に打たれて、表皮が剥がれてしまった杉の木。何十年もの間、

常に落石の危険にさらされていただろうに、真っすぐ立っている生命力。

此処で、ミニ・クリームパン2個づつの小休止をとり、再び歩き始める。

右岸は険しい岩壁が続くが、両岸の尾根は低く、木も少ないので明るい。

すると谷の中央に、まるで巨人に捻じ切られたような大木が倒れていた。

何があったのか想像がつかない。2分割された倒木の間を歩いて行ける。

不安定な岩が多いので家族が先行する間、岩陰で待機する。前方が明る

いので主稜線も近いだろう。どうやら最後まで詰めることが出来そうだ。

傾斜が一段と上がって、階段状の岩場に落葉が積もる。浮石がないので、

ガレよりも登り易い。短い谷だったが最後まで楽しく登ることが出来た。

寒谷北尾根608ピークに飛び出た。ドンピシャっていう感じで爽快だ。

此処はミツバツツジの群生地だが、花芽は固く開花はまだ一か月以上先。

608ピークからは南東斜面を適当に下って、寒谷の上流に降り立った。

下流から2番目の堰堤に向かうと、そこに右岸から流れ込む支谷がある。

杉の巨木が林立する支谷の入口。2月9日に来た時には、小滝は凍って

いて、左岸の斜面を下ったが、今日は水心を歩いて行ける。傾斜は緩い。

今日は寒谷一郎に会いに来た。付近では一番高い杉だけど、特徴がない

ので合っているか分らない。家族は抱きついて「気」を探ってると云う。

五郎にも挨拶して行こう。・・って知らぬ間に登ってるし。「少し気を

感じる。」らしい。でも老木なのであんまり負荷をかけてはいけないよ。

山寺尾根に出た後は、水平道を歩いて史跡公園へ抜ける。ベンチで小憩。

今日の谷は、はたして我々に登れるのか分からずに入った。不安ではあ

ったが、発見も多く楽しかったし、何より登りきれてとても嬉しかった。

木ノ袋谷は堰堤が多いのと、暗いので嫌っていたが、今日は快晴なので

陽光が谷底まで届いていた事も楽しめた一因であった。曇りだと印象は

全く違ったものになったはずだ。三宮に所用があるので青谷道を下った。

この山行は、長峰大好きさんのInstagramを参考にしました。感謝です。