摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

寒天山道・天望尾根を経て、六甲堰堤から長峰山へ登る

2月23日の記事を書いていた時、地形図を見ていると、六甲堰堤から

等高線の間隔の開いた尾根が、長峰山の主稜線に伸びている。確か

登ったことがあるはずだが、こんなだったか印象が違う。行ってみよう。

前日までの天気予報では、3月3日の土曜日は一日中、晴れマーク。

家族は所用があるので、一人JR甲南山手駅まで歩いて、31系統の

市バスに乗り終点の渦森台へ。この時は、油コブシ経由で行くつもり。

住宅街の最上部まで歩いて行くと、高羽道の入口があった。初めて

来た登山口だが、公設道標があるし案内板もあるという充実ぶりだ。

東側の寒天山道の登山口に比べると、はるかに分かり易く好ましい。

意外にも、随分と広くて立派な部分もある。坊主山と油コブシとの

鞍部を目指している訳だが、昔は相当の交通があったのだろうか。

右上に気になる物が見えたので、良く踏まれた道に入って行く。

多分、そのまま進むと寒天山道に出るだろうが、油コブシ経由

でも、天覧台へは大して距離は変わらないので、それでも良い。

気になった物というのは鋼製堰堤。荒地山で珍しいと思ったが、

此処にもあった。説明板よると阪神大震災の後に、短い工期で

堰堤を完成させる為に、この工法を採用したとある。なるほど!。

各々の堰堤が必要か否かは別として、鋼製である理由は分かった。

知らない道は歩いてみるものだ。堰堤下の道を東に進むと、伐採地

に続く。道なりに歩いて行くと、やがて寒天山道に合流して天覧台へ。

天覧台には12時20分着。ミニあんぱん2個とコーヒーで小休止。

空は高曇りとなっている。昔は山岳事故の起きそうな連休等には、

実際より悪い予報が出ることが多く、「オオカミ予報」と言っていた。

今は消費やレジャーを促する為か、週末や連休には殊更良い予報

が出るような気がする。六甲ケーブル山上駅のバス停からで、一段

下に下る。草が繁茂しやすい場所だが、今日は草刈りがしてあった。

天望尾根は名前に反して、展望のない尾根だが、下り始めの所で

一か所南側が抜けている。展望台と書いた小さな私製看板もある。

北側には堡塁岩の見える所もある。冬枯れの季節に歩く特典だ。

後は照葉樹林の中を、六甲山らしいミヤコ笹の小道が延々と続く。

この道は、山羊戸渡のアプローチに、今まで何度か使っている。

JR六甲道駅から車道を歩くことを思えば、天覧台経由にしても

好ましかったから。今日も六甲堰堤へ行くのが目的で下っている。

尾根道の真ん中に「電話」と彫られた石柱。この標識は道沿いに

幾つもあるが、道の真ん中にあるのは此処だけなので良い目印。

天望山への道とアイスロードへの分岐。此処で北側に下って行く。

出だしの急傾斜には、コンクリ階段が施してある。戦前に阪急が

経営していた六甲登山架空索道に関連した遺構なのか。或いは

その頃ロープウェイに平行して、歩道として整備されていたかも。

アイスロード入口まで下ってきた。この時はすっかり曇り空に

なった。薄暗く街灯のセンサーが反応したのか、点灯している。

六甲堰堤は近い。車道を歩いて行くと目指す尾根が正面に見え

た。写真の右端辺りから取り付き、尾根に乗ってしまえば、後は

楽だろう。左側から2月23日に登った谷。行きつく所はほぼ同じ。

尾根自体は、2013年2月に登っている。その時は六甲川右岸

の廃道を上流からアプローチし、堰堤の北側から登った。天端

の先は崖で取りつくのは難しそうだ。下流から登ることにしよう。

六甲川を渡渉し対岸に取りつく。これが中々に急峻。北側から

取りついた時には、急峻な部分は短かったように覚えていたが、

六甲堰堤の天端と、同じ高さまで登るのも、けっこう苦労してる。

下から見ると、まるで緑のペンキで塗られたかのような巨岩。

近づくと深緑の小さな葉が密生している。蔦の一種か初めて

見る。この岩に詰まり北側の尾根に逃げる所が一番急だった。

意外に人が多く入っている。測量の為だろう、ピンクのテー

プが諸所についている。この急傾斜での仕事は大変だろう。

でも何の為の測量や境界杭の設置なんだろう。それは不明。

傾斜が落ちて尾根に乗ったという感じの所。南東に先ほど

歩いてきた天望尾根が見える。六甲にしては針葉樹が多い。

5年前も同じ場所で写真を撮っている。たぶん此処に到着

して、山場は過ぎたなと、ホッとした気分になったのだろう。

北寄りの支尾根と合流する所に大岩がある。その上が明るい。

大岩から少し登ると、大きな倒木が展望ベンチになっていた。

六甲山トンネル入口の料金所が正面に見え、ドライブウェイ

が蛇行して、斜面を登って行く様子も、手に取るように見える。

その後は、標識杭に沿った切り開きを選んで登って行ける。

枯れたネザサの藪を抜ければ、斜度も落ちて主稜線も近い。

飛び出したのは、やはり公設道標「な48−4」辺り。疲れ

ていることもあるが、曇り空では天狗塚まで行く気もしない。

時刻は15時。道端に座り込んで、2度目の昼食。ミニあん

パン3個と不味いインスタントコーヒー。もう下ろうと決めた。

今朝は知らない道を歩き、新しい発見があった。帰りも遠回り

だが、JR摩耶駅へ歩いたことのない道を選んでみる。すると

畑原通りでトタン張りの稲荷神社を見て、思わず入ってみる。

平五郎稲荷という。鳥居には朽ちた物あったが、トタン張りの

本殿内は極めて清らか。今も篤い信仰を得ているのが分る。

ハムには狐の意匠が、芸術的いや違う。時代を超えた工業

デザインの様に見え感動する。知らない道は歩いてみるもの。