摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

毎峰山(1286m)・丹楓山(1150m)・・・・・・江原道・寧越郡・・・2016年10月10日

今回の韓国旅行は、太白タッカルビを食べにきたようなもので、

山は二の次だが、その中では今日登る、毎峰山から丹楓山の

縦走登山がメインイベント。だが登山口までの交通が不案内。

隣町の太白市から上東に行き、寧越郡内バスに乗り換える計画だ。

朝6時のソウル行き市外バスが上東に寄る。上東に行く人は余程

少ないらしく、案内の人に何度も聞き返される。乗客も我々だけだ。

上東に到着したが、市内バスの停留所が見当たらない。市外バスの

切符売り場の人に聞くが、「市内バスもタクシーも無い。」と言われて

パニクッってしまった。慌てて乗って来たバスが走りだすのを止めた。

目的地の「アシネ」まで乗せてほしいと頼む。運転手さんはアシネを

知らなかったが、上東から乗って来た人が、知ってるから案内すると

言ってくれ、本来は市外バスの停車しない所で下してもらった。感謝。

下してもらったのは、市内バスのバス停だから、切符売り場の人が

市内バスが無いと言ったのは、此処に来ないという意味だったかも

しれない。近くに毎峰山(メポンサン)の道標もあったのでホッとした。

農家の飼い犬の吠えられつつも、道標の示す方向にあるいて行くと

木橋があり対岸に渡る。その後は、支流沿い林道を歩いて行くが

道標が一向に現れない。荒れた雰囲気の所で、行く先が不安になる。

それでもひたすら林道を進むと、やがて草刈りされた山道になった。

相変わらず道標はないが大丈夫だろう。実際の所、コルまで綺麗に

草が刈ってあった。家族はどんどん進み、ハムは遅れがちになる。

午前8時40分。登山口からは2時間近くも掛って主稜線に出た。

ここに二つ目の道標があった。毎峰山の頂上までは後800mだ。

ハムがバテて、此処で20分ほども休んでる。これが後で響いた。

コルからは穏やかな尾根道が続く。落葉樹林だが紅葉というほど

の色付きではない。眺望も無いし、やや退屈だが静かな道が続く。

午前9時。コルから約30分で毎峰山頂上に到着。韓国にしては

簡素な山名碑がある。残念ながら樹林に囲まれて展望は皆無だ。

元よりガイド本には写真は無く、事前にどんな山頂か知らなかった。

この展望の無い山頂で30分も休んでいる。あとは稜線漫歩して、

丹楓山(タンプンサン)まで、楽に縦走できると思っていたからだ。

北の樹林越しに大きな山塊が見える。昨日歩いた咸白山だろうか。

南側は断崖絶壁であることは知っているが、樹林に囲まれた道を

歩いている限り展望は無いので、穏やかな山稜のように思われる。

小ピークを越える所で、藪を分けて南側の岩場の上に出てみる。

険しい岩場が東西に連なる。山頂からこの涯上を歩いてきた訳だ。

西側には秀麗な丹楓山の姿が見えた。標高は130mほど低い。

緩やかな稜線が此方に伸びてるように見える。先行きに不安は

覚えなかったが、これがとんでもない間違いだとすぐに思い知る。

道標があった南側へは、道路沿いの上東休憩所までの下山路。

西側を指す道標の「クムデンイゴル」とは、一体何処なんだろうか。

でも、道標の差す西向きの尾根筋を歩けば、丹楓山に着くだろう。

何も考えずに西向きの尾根筋進んで行く。ところがしばらくすると

踏跡も無くなり急激に下るようになった。細かった尾根が斜面に

消えてしまった。樹幹越しに見る丹楓山との間には深い谷がある。

明らかに迷ってしまった。道標があったのだから道はあるはずだと、

やや北向きに斜上して行くが、道に出合わない。もう一度道標まで

登り返そう。結局1時間ほども無駄にして、元の道標まで戻って来た。

やはり道標は西を指している。もう一度、用心深く道を探すがない。

先の尾根とは別の、西北方向の尾根を下ってみるが、やはり違う。

もう一度登り返して、地図を見直してみる。どうも道は分岐から

西ではなくて、一旦北方向に伸びてから西へ転じているようだ。

(帰宅後、見直すと北ではなく北東の尾根であったようで、以下の

コース取りも、マーキングも迷った人の付けたもののようです。)

そこで道標ある分岐から、北方向の尾根を下ってみた。だけども

道が無いことには変わりない。もう分岐から上東休憩所へ下山し

ようかと思った頃に、赤いマーキングが続いているのに気づいた。

午後12時20分。まだ時間的には余裕があると思えた。この印が

丹楓山に向かうのか分からないが、とにかく進んでみることにした。

しばらくはマーキングを辿れたが、再び見失い谷へやみくもに下る。

谷へ下り着いた。地図にはこの谷にも道があると記されているが、

踏跡さえ見当たらない。ただ見上げると西の尾根は低く容易に取り

付けそうだ。あそこまで登れば、尾根にちゃんとした道があるはず。

だが登り着いた尾根にも道はなかった。獣道位の踏跡があるだけ。

登山が国民的娯楽の韓国で、地図に道が記されていて道標もある

のに、こんな踏跡程度ということは、今まで経験したことが無かった。

樹林越しに見えるピークが丹楓山かと思いきや、小さなピークを

幾つも越えて行くことになる。毎峰山からはスッキリした尾根の

ように見えたのだが、実際にはアップダウンの激しい尾根だった。

尾根上の踏跡は頼りないもので、しばしば見失う。落葉に覆われて

足裏の感覚でしか確かめられない。柔らかい所を踏めば外している。

山名の「丹楓」とは、紅葉という意味なのだが、モミジの木は少ない。

北側に咸白山が見える。方向的には間違ってないはずだが、本当に

この山が丹楓山なのかな。半信半疑になってきた。何しろガイド本は

持っていても、文章は読めないので10cm四方の地図だけが頼りだ。

幾つかのピークを越えてきた。その度に山頂かと思うが、先にまた

高いピークをみてがっかりする。そんな繰り返しが疲労が増大する。

でも、どうやら最後のピークのようだ。道標と立派な道があるはず・・。

確かに此の先、此処より高所はない。木に付けてあるテープには、

丹楓山1180mと書いてある。だが、道標も良く踏まれた登山道も、

山名碑も無かった。時刻は既に午後2時30分。さあ、どうしようか。

まだ朝食も昼食も摂っていなかった。緊張感を持っていると空腹は

感じないのか。上東で買いそびれ、今日の食料は二人でパン1個。

マンモスパンという名のジャム入りの大きなパン。半分だけ食べる。

薄い踏跡が西へ伸びているので進む。家族に言わせれば、ここ

以降は不安は感じなかったそうだ。だが相変わらず時折、踏跡

を外して、岩場に行く手を阻まれたり、まだ確かなものではない。

1180mピークから1時間。踏跡を追って幾つかの小ピークを

越えていく。午後3時を過ぎた。もう今から毎峰山に引き返し

ても明るい内に下れない。不確かでも西へ進むよりないだろう。

前を行く家族が「あった!」と声を上げる。丹楓(タンプン)山の

山名碑と道標。それに登山道も。ガイド本のコースタイムでは

毎峰山頂上から2時間45分なのに、実に6時間30分も掛った。

山名碑に標高1150mとあるが、ガイド本には1180mピークに

丹楓山と記されている。最高所が必ずしも頂上とされないことは、

日本でもあることだが・・・。此処も展望は東側に少しあるだけだ。

山頂からは急坂をロープにすがって下って行く。もう迷う心配は

ない。ホッとするが、この時も碌に先のことを考えていなかった。

帰ってから写真を見直すと、毎峰山の道標は上東邑の立てたもの。

丹楓山の道標は中東面が立てたもの。違う行政機関なので、両者

間の道は、何方も整備する気はないようで、歩く人も少ないらしい。

山頂から1時間半で麓の村まで下ってきた。次はバスの心配だ。

丹楓山を振り返る。ガイド本にあった小さな写真のとおりだ。

その写真を見て登ろうと思ったのだが、展望の無い山だった。

案内板があったが、1150ピークまでの道しか記されてない。

バス停には午後5時到着したが、村人に確かめると最終バスは

10分前に通過していた。緑田まで歩けば寧越行きのバスがある。

緑田(ノクヂョン)までは1時間半もかかった。6kmぐらいかな。

歩きながら何が失敗の原因か考える。休憩時間の取りすぎか、

地図を確かめなかったからか。いや一番の原因は体力の劣化。

午後6時40分発の寧越行きのバスに間に合った。少しは運も

残っていたようだ。もう疲れたから、今日は寧越で泊まりたいな。



今日のBGM・・・・・・とっとこ味噌太郎