摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

黒滝山(266m)・・・・・・広島県竹原市・・・(2016年1月4日)

広島を午前8時前に出て、三原回りで呉線忠海(ただのうみ)駅に

到着したのは、10時を過ぎていた。実は、18年前に一度来ている。

おぼろげな記憶の中には、屹立した岩山とアオハタ本社が残っている。

その時は大久野島に行く為だったので、黒滝山の名さえ知らなかった。

大勢の観光客と下車する。聞こえてくるのは英・仏・中国語と賑やか。

何故かフランス語が一番多い。ウサギの島として大久野島は人気の様。

駅前から此処までは、フェリー乗り場に向かう人達とぞろぞろ歩いて

いたがポツンと二人だけ取り残された。黒滝山に登る人はいなかった。

国道沿いにも黒滝山の道標が、幾つも設置されていて迷いようもない。

鄙びた旧街道の路地を抜けて行く。前方の黒滝山は実に秀麗な山容だ。

18年前に見た時も、登れるのかな。登ってみたいな。と思ったろう。

ここまで幾つの道標があったろうか。これだけ登山者を歓迎する町も

珍しいと言える。町の皆さんの気持ちも嬉しくて気分が高揚してきた。

突き当たるのが地蔵院。仏教寺院のようであり、そうでもないような。

地蔵院脇から墓地の中を抜けると、黒滝山の中腹を横切る車道に出る。

車道を西に進んで、舗装された登山道に入る。準備体操をしなければ

ならないようだが、何をしたらわからないので先に進む。良いのかな。

相変わらず舗装された登山道を歩いて行くが、退屈することなどない。

風雅な石仏が次々と現れるし、また乃木将軍腰掛岩なんてものもある。

霊水池という透き通った清水もあった。地元の方が毎日来て清掃され

ているに違いない。舗装路にもかかわらず清らかで気持ち良く歩ける。

ただ時間が無いのでゆっくり見物も出来ない。先を急ぐ。2時間程で

登山を終え12時23分の列車に乗りたい。神戸着は5時過ぎになる。

平山郁夫画伯のスケッチの場。氏は県立忠海高等学校の卒業生という。

58・59・60代総理大臣池田勇人、ニッカの竹鶴政孝氏も卒業生。

アトラクションの極めつけは、「幸福の鳥居くぐり」。ミニ鳥居形を

くぐることが出来れば、幸福になれるというのか?。家族は通れたが、

ハムは肩が抜けなくて通れなかった。嗚呼、正月早々縁起でもないな。

展望の良い休憩舎がある。但し「休憩5分」と看板に指定されている。

5分といわず10分でも休憩したいのだが、急いでるので通り過ぎる。

ことごとく看板の指示を無視しているが、罰が当たらない事を祈ろう。

休憩舎からは爽快な尾根道となる。道中、最も気持ち良い箇所だった。

何でもない風景だけど、道の清掃、路傍の草抜きもされているようだ。

一見の他所者が気持ち良く歩けるのも地元の方のおかげである。感謝。

長寿の亀岩。カメに似た岩はよくあるが、目を付けてあるのが面白い。

神仏習合というのであろうか、石仏あり、ミニ鳥居あり、亀もありだ。

山頂直下の観音堂に到着する。戸に鍵は掛っておらず、お参りできる。

観音堂の前も絶好の展望台である。双眼鏡も設置してある。お爺さん

に連れられた、小学生二人の兄弟達が、楽しそうに交互に覗いている。

観音堂の裏にある烏帽子岩。右手から鎖場があるので、登って行ける。

もっとも普通の道もあるので、何も鎖場を通らなくても登れるのだが。

石鎚神社と記された鳥居をくぐって鎖場を登って行く。石鎚山にある

鎖場を摸したのだろう。規模は比べるべくもなく簡単に登れてしまう。

烏帽子岩の頂上に到着。麓から見上げる黒滝山の切っ先は此処だろう。

18年の間、記憶の片隅にあった、宿題を片付ける事が出来て嬉しい。

尖鋒ゆえに標高は低いながらも、登頂感を味わえる。もちろん展望は

最高。今朝の中国地方は濃霧に覆われた。その水分が残っているのか

春霞のように靄っている。空気が澄んでいれば景色はもっと良いはず。

北側にはもう少し高いピークもある。最高所はどこかと探して見よう。

振返ると烏帽子岩の上で孫二人が立って、お爺さんが記念撮影してる。

北側のピークは細長い頂上稜線となっている。だが何処が最高所かな。

山名碑なり山頂を示す道標を、探すが一向に見つからない。どうやら、

この辺りが黒滝山の頂上らしく、手前の標柱に山名碑があったようだ。

山頂からは白滝山(350m)に続く道や、西側に回り込む道があり

惹かれるが、列車の時刻が迫っている。時間が無いので元の道を戻る。

登りと同じコースを忠実に下って、12時前に忠海の街に戻って来た。

とても楽しい2時間だった。時間が許すなら白滝山まで行きたかった。

忠海駅の待合室内には、黒滝山の詳細なパンフレットが置いてあった。

これだけ力が入ってるのに、山名碑が無いのは画竜点睛を欠くという

もの。それだけが残念だが、幸せな気分で、三原行きの電車に乗った。