摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

徳裕山(1614m)・・・・・・全羅北道・茂朱郡・・・2015年5月24日

当初、茂朱(ムジュ)の町に、泊まるつもりだったのだが、バスの始発が

午前8時20分と遅いので、昨日の夕方、九千洞までバスでやって来た。

着いたのは大型ペンションの立ち並ぶ観光村で、一番地味な宿を選ぶ。

一泊40000Wと高かったが、三連休の初日で泊まれただけましかも。

気温が上がる前に標高を稼ぎたいので、翌朝は午前6時半に宿を出る。

上の写真は、私達が泊まった宿ではないが、どの宿も車で溢れている。

公園入口に雪川峰〜香積峰(600m)出入統制中の看板があった。

これは全く予定外の事。14日間、頂上からスキー場側に下山できず、

九千洞に戻らなくてはならない。この時は、不運だなと思ったのだが。

公園の入口から白蓮寺の間は、舗装された車道が6kmも続くのだ。

私達の足では、上り2時間・下り1時間半はかかる。渓谷沿いの道は、

九千洞三十三景と呼ばれているが、韓国にしては地味な風景が続く。

無理やりに三十三景を選んだようで、1mほどの段差に瀑布と名が

付いていたりする。渓谷を見物する為の橋が架かっていたりするが、

脇目もふらずに先を進む。どうせ帰りも、同じ道を歩かねばならない。

車道を2時間近く歩いて、白蓮寺(ペリョンサ)の山門に到着した。

この先、本堂の下で谷コースが分かれ、伽藍を通り抜けると尾根

コース。前後するほとんどの登山者は尾根コースに向かって行く。

それもその筈、谷コースは4.6kmに対し、尾根コースは2.5km

しかない。だが谷コースなら相当登った所で水が補給できるだろう。

スキー場側には下山できないので、下りは尾根コースで戻ってくる。

谷沿いの道は、国立公園としては細く歩き難い。朝早いのでか

この道で稜線に達するまでに、すれ違ったのは2組だけだった。

ところで徳裕山(トギュサン)は、韓国4番目の標高の山である。

今まで登らなかったのは、山頂近くまでスキー場となっていて、

ゴンドラに乗れば山頂に、徒歩20分程度で到着する山だから。

何となく登る気がしなかった。谷は段々と広く明るくなってきた。

オスジャグルまで400m。ハングルのスという文字が、水かと

と思っていたが、道は谷を離れ斜面を登って行く。そろそろ補給

した方が良さそうだ。行動食を食べ水を思いっきり飲んでしまう。

500mlのペットボトル6本に、谷水を補給する。とても冷たい。

今回、最初の山で水不足に陥ったのがトラウマになっている。

今日も快晴で、尾根筋に出れば暑いだろう。重いが仕方ない。

オスジャグルは案内板によると、呉秀子窟という漢字だった。

スは秀という字で、水には関係なかった。てっきり水場のある

洞窟だと思っていたが、韓国の人は勘違いしないのだろうか。

呉秀子窟からは、韓国の山らしく階段道が現れる。歩みは遅い。

雲長山・九峰山の疲れが足に出る。足が攣らない事を願うのみ。

階段道が終わると、クロフネツツジが見られるようになった。

今回、乗り気でなかった徳裕山を選んだのは、地理的要因の

他に、標高の高さにある。ツツジが残っているかもと期待した。

どうやら、その期待は的中したようだ。花の色が薄く新緑に

埋もれてしまいそうだが、大輪の花弁はフワフワとキレイだ。

登るにつれ周囲の木々の背が低くなって、下生えのツツジ

目立つ様になってきた。花を眺め乍ら歩くので、登りの辛さも

感じずにすんでいる。道の傾斜も次第に緩やかになってきた。

この標識の所で、一気に四囲の展望が開けた。標高1470m。

正しければ、標高1594mの中峰まで100m以上の標高差だ。

だが実際はどうだろう。かなり疲れ切ってはいたのだが、眺望と

ツツジの花に気を取られ、ここからは、それほどに辛くなかった。

もう中峰の頂上までは一投足だが、経験的に本当の山頂よりも、

一段低いピークの方が、展望が良くキレイなことを知っている。

あえて急がず、ゆっくり登って行く。北側に聳えるのが主峰の

香積峰(ヒャンジョク峰)であろう。人影がチラホラ見えている。

頂上近くのクロフネツツジは、まだ蕾のものも多く三分咲ぐらい。

一週間後に着たらどうだったろうかとか、仕方ないことを考える。

地元の摩耶山でさえ、ミツバツツジの最盛期に歩くことは難しい。

快晴に恵まれ、クロフネツツジも咲いていた事を、幸せに思おう。

中峰(1594m)の頂上は、狭く細長い木製のデッキ。自然保護の

ため、周囲に立ち入ることはできない。休憩に適した所ではないが、

その展望は正に360度ある。思わず周囲の展望に見とれてしまう。

南側の主稜線には道があり、コースタイムで9時間ほどの南徳裕山

まで続いている。南徳裕山にも山小屋があり、宿泊して縦走ができる。

韓国で宿泊できる小屋は、雪岳山・智異山・徳裕山の三山にしかない。

徳裕山は、標高1614mの割には、マッス(量感)が感じられないが、

山頂近くまで、歩かずに登れる割には、自然が豊かに残されている。

食わず嫌いのように、今まで登ら無かったことを、少々反省しつつ、

中峯から山頂(香積峰)に向かう。今までと打って変わって広い道。

山頂への路傍にも、クロフネツツジが咲いているる。満開は少し先。

南西に立派な山容の山が見える。すぐに同定できないが伽耶山

だった。標高は1430mなのだが、周囲の山から抜きんでている。

山頂(香積峰)直下にある香積峰待避所。国立公園直営の山小屋。

小屋の前の、幾つかベンチは、昼食を摂るハイカーで埋まっていた。

待避所から、緩やかな階段道を登って行くと、徳裕山頂に辿り着く。

徳裕山の頂上は、木柵に囲まれたうえ、地面は石畳が施されている。

広いせいか、さほど人工的な感じは受けない。人が少ないせいかも。

写真左側の山名碑は存外に地味だ。木製標識の方が目立っている。

快晴で陽射しはキツイく、日陰もないのだが、風が吹けば爽やかだ。

600m先のスキー場のゴンドラ駅には、長い乗車待ちの列が見える。

山頂とゴンドラ駅間が通行止めでなかったら、きっと大混雑だったろう。

ゴンドラ駅のある雪川峰への道の入口は、横断幕で封鎖され、公園の

レンジャーも監視している。その理由は直訳すると、絶滅危惧種・特産

種等の生息地保全、及び、春季山菜不法採取の予防ということらしい。

そのおかげで、我々はのんびりと昼食休憩する事が出来た。昼食は、

レトルトごはんと韓国海苔だけ。宿に共用の電子レンジがあったので、

朝、ごはんを温めて来た。コンビニで買うキムパブよりも美味しいかも。

山頂で1時間も休んでいた。大展望に去り難い気分だが下りも長い。

午後1時になったところで、尾根コースから白蓮寺へと、下り始める。

白蓮寺への下山路は、急な階段道が断続的に続く。一直線に下る

効率的な道ではある。午後1時過ぎ、まだまだ多くの人が登ってくる。

白蓮寺に到着。明日は釈迦誕生日の祝日であるが、静かな佇まい。

朝と同じ車道を下って行く。さすがに疲れて来た。渓谷の見所に

寄る気もせず、ひたすら歩くだけ。この長い道を観光客の方達は、

手ぶらで白蓮寺まで往復されるようだ。信仰心によるものなのか。

九千洞の観光村は、駐車場から車が溢れ、いたる所に路上駐車。

昨日は、泊まる事が出来ただけでラッキーだった。三連休の中日。

バス停へ着くと、次のバスは1時間後。暑い中、ただ待つしかない。