摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

辺山(458m)・・・・・・全羅北道・扶安郡・・・2015年1月4日

韓国の西海岸にある辺山半島は、全体が国立公園に指定されている。

中央部には、400m前後の山もある。今まで登山口へのアプローチが、

分からず行きあぐねていた。今回の旅行の最終目的に選んでみたが・・。

バスターミナルで、観光パンフと時刻表を見た結果、辺山まで行って、

タクシーでナヨチに行くのが良さそうだ。結局、ガイド本や国立公園の

公式サイトの案内では、行き着けそうにない。7時25分のバスに乗る。

辺山行きの乗車券を運転手に見せると、「辺山の何処へ行くのだ」と

聞かれ「ナヨチ」と答えると、わざわざ事務所まで聞きに行ってくれて、

辺山ではタクシーの横に停車してくれた。やはり乗客は我々二人だけ。

辺山集落からナヨチまで、4300Wだった。歩けない距離でも無い。

案内板とトイレ位しかない閑散とした登山口。バスも来ないはずだ。

分かり難い国立公園の案内図。右側が北で、右上から左下へ歩く。

凍てついた道を登って行くが、どうも足が進まない。低山とはいえ、

8日間連続して山歩きした疲れが、どっと出てきたようだ。そもそも、

辺山という山はあるのかも分かっていない。それはなぜかというと、

地図上に辺山という山はなく、半島の名前が辺山にすぎないのかも。

何しろ400m前後の山が幾つもある丘陵地帯。山脈は成しておらず、

どこが主峰なのか分からない。朝食休憩を入れ、ゆっくり登って行く。

展望の無い樹林帯を登り、峠状の分岐から、北に登ると双耳峰の

サンソン峰。北側の方が高いようで、私製の山名板が一つあった。

手元の韓国100名山という本は、此処を辺山(458m)としている。

だが、国立公園の案内図には、山名すら記されていない。どうも、

トレースは多くあって、登山者は立ち寄っているのだが、公式には

寺院の敷地で、立入禁止のようだ。南峰からは、月明庵が見える。

サンソン峰から下り進んでいくと、尾根筋に柵が設けられていた。

此の先は、仏教の聖地とのことで、入域は厳しく禁じられている。

ここで道は左手に下り、やがて月明庵の石垣の下を通って行く。

庵というには立派なお寺なので、拝観しようと石段を上がると、

最上段に大きなチャウチャウ犬が2匹いて、吠えて入らせない

恐ろしげな唸り声も立てるが、なぜか尻尾を盛んに振っている。

一旦は拝観を諦めるが、石垣下を南側へ回ると、犬も来るが

全く吠えないし、近づくと先に立って、境内へ案内してくれたし、

去り際には見送ってくれた。正門を使えるのは住職だけかも。

月明庵からしばらくは平坦だが、その先は急に下るようになる。

対岸にゴツゴツした岩山が見える。あの山を越えねばならない。

その為には一旦、谷底に下り登り直すことになる。まだ道は長い。

先ほどまでは穏やかな樹林の道だったが、こちら側には大きな

岩場が多い。南斜面なので下るにつれ、道の雪は消えてしまい

途中からは、アイゼンを外して下って行く。下るのも何だか辛い。

足元にはダム湖が見える。賑やかなハイカーの声も聞こえてくる。

2キロほど下流に駐車場があって、そこまでは車でも入れるのだ。

湖の奥に、直沼滝(ジックソポッポ)があり、往復する人も多いよう。

ここまで一人のハイカーとも出会っていないが、谷へ下り着くと、

今までとは打って変わって道は広くなり、多くの人が歩いている。

湖畔の展望台からの眺め。写真だけだと静かそうだけど、周囲には

20人近い団体がいて、とても騒々しい。休憩せずにすぐ先に進もう。

湖の奥から展望台を振り返る。まだ団体さん達は写真撮影に忙しい。

湖水には5cm程の氷が一面に張っているが、気温はさほど低くない。

直沼滝の手前で、団体さんに追抜かれた。この後別の団体もきて、

展望台の周囲は人であふれた。そうか今日は日曜日なんだ。長く

旅行していると曜日の感覚が無くなる。隅に座りビスケットの昼食。

展望台から直沼滝を遠望する。韓国に来る前には、凍ってたら、

キレイだろうと思っていたが、それほどには気温は低くなかった。

滝を越えると沢筋は、やけに平坦になる。気温も上がって道の

雪も溶けている。緩やかな道だが、一旦下って又登るのは辛い。

谷筋から離れ峠に登りつく。ここからも来蘇寺(ネソサ)に下れる。

だが、西にそそり立つ観音峰(カンヌンポン)へ寄らればならない。

峠からは道の雪もほとんど消えている。下ってくる人達もアイゼンは

付けていない。頂部に登りきると、やっぱり団体さんが休憩していた。

だが登って来た岩山は、前衛に過ぎない。西に観音峰が見えた。

一旦、鞍部に下り登り返すと、来蘇寺への道との三叉路に辿り着く。

此処から観音峰をピストンして、下る計画だ。もう少しだけ頑張ろう。

此処にあった案内図が分かり易い。ちゃんと上が北になっている。

左端に、辺山(509m)という山名が記されているが、その場所は、

立入禁止区域のようだ。その為に、他の地図に山名がないのかも。

観音峰へは、北側の岩壁をトラバースして行く。気温が上がって、

ツララが溶けて落ちてくる。カラカラと音を立て大きな塊が転がる。

と思ったら、次には岩塊も一緒に落ちてきた。急いで通過しよう。

観音峰の頂上に到着。期待に反して、灌木に囲まれて展望は悪い。

山名碑は無いし、道標とベンチがあるだけだ。まずは一休みしよう。

韓国でこれだけの登山者がいるのに、山名碑の無い頂上は珍しい。

南側にだけ少し抜けた所があり、来蘇寺(ネソサ)が見下ろせる。

想像以上に大きなお寺だ。これなら扶安に帰るバスもあるだろう。

他の方向は眺めも無く、登って来た人も多くは、すぐに歩き去る。

さきほどの三叉路まで来た道を戻る。この岩壁の氷塊が溶け、

落ちていく。約200m程トラバースする間には、遮る物も無い。

家族が疲れて、歩みが遅くなるが、何とか無事に通過できた。

三叉路まで戻れば、後は来蘇寺へ下るだけだ。後ろから来る、

イカーにどんどん追抜かれるが、気にもせずのんびり下る。

振り返れば、観音峰南面の険しい岩場。確かに山頂にだけ、

毛が生えているように、木が密生している。展望が無いはず。

登山道は来蘇寺の伽藍より、少し南側に出た。拝観はせずに、

そのまま観光客と一緒に、山門を抜ける。逆コースの場合は、

拝観料を払う事になる。それも嫌なので今日のコースにした。

来蘇寺の門前は、飲食店や土産物屋で賑やかだ。30分程で、

扶安行き市内バスが発車した。今日は全州まで行って泊まろう。