摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

段ヶ峰 倉谷遡行

8月に入っても摩耶山には、まとまった雨が降っておらず、渇水状態だ。

まだ18切符が残っているので、播但線生野駅から、段ヶ峰の倉谷へ

行くことにする。初めて登る沢だが、JR駅から近いということで選んだ。

生野駅からは歩いて2時間ほどかかるが、行きはタクシーに乗って来た。

倉谷林道の分岐点まで、2220円だった。思ったよりも高いが仕方ない。

分岐からすぐに広場があり、沢登りの方が駐車され、沢支度の準備中だ。

広場で朝食を済ませて、倉谷林道を登って行き、一の滝から入渓する。

先行の4人組の方々が、ザイルを出して、側壁を登攀中。我々も沢用の

足拵えに替えたりして順番待ち。この時点では、陽が差して晴れていた。

15米の一の滝。この滝には不動明王が、祀られていて行場となっている。

滝の落ち口脇は、コンクリで土台が固められていて、興趣を削がれる所だ。

我々も右側側壁のガリー沿いに登って行く。意外に高度感があって楽しい。

一の滝を越えると、しばらくで沢筋一杯の滑床が現れる。50米程だが、

とても気持ちの良い所だ。ただ残念なことに上部のガレ場からの落石で、

埋もれている所が多くて、遡行図に記載があるほどは、ナメは続かない。

遡行図にも記載のあったガレ場だが、崩落の範囲が広くなっているようだ。

不安定な岩が多くて、通行には十分注意したい。これも倉谷の一面である。

ガレ場を抜けると、すぐに小滝が連続するようになる。滝・ナメ床・ガレ場と

次々と現れたが、やや大味な感はぬぐえない。播州地域の沢に入るのは、

初めてだが、遡行図を見た感じでは、こういった雰囲気の沢が多いようだ。

連続する小滝を抜けていくと、二俣が現れた。両側とも滝となって流れ込む。

左側が本流で入るとすぐに、30米の二の滝が威圧的に立ち塞がる。壮観だ。

遡行図では、左側の岩場を登るようになっているが、暑くて登る気がしない。

滝は中段までなら、流心を登れそうだし、シャワーを浴びてみたい気もする。

そこで中段まで登るが、やはり上部は傾斜が増し、我々には登れそうにない。

なので下りようと思うのだが、家族が下るのもトラバースも、嫌だと言い出した。

下るぐらいなら、右手の斜面に逃げた方が良いというのだ。ただし水流際には、

ヌメった岩場を越える箇所があり、試してみるが、ハムには登れる気がしない。

そこでザイルを出して、家族がトップで行くことにするが、ザイルがキンクし

解くのにずいぶんと時間がかかる。この間、ずーとシャワーを浴びたまま。

家族はヌメった岩場も、その上のガリーも、突っ張って軽快に登って行った。

ところがハムはどうも苦手。上部のガリーは、右手は岩だが、左は笹の生えた

泥壁だ。泥の中に手を突っ込み木の根を掴んで、何とか強引に登って行った。

立木でビレイを取った所から下を見下ろす。決してお勧めはできないルートだ。

二の滝の上部には、連続して10米の滝がかかる。階段状で登りやすそうだが、

なぜか家族が苦労している。一旦クライムダウンし、流れの中央を登り直すが、

スリップして滝壺に落ちる。右側の手足を打撲してるが、骨は大丈夫のようだ。

この10米の滝、ハムは簡単に流心を登って来れた。ザイルで確保して家族を

上げる。リーチの違いでもあるが、家族のワラジが擦り切れていたのも原因だ。

一の滝で追い越したグループの方達が、二の滝落口で後続を確保されている。

次の斜瀑が、三の滝らしいのだが、平凡な滝で一・ニに比すと名前負けな感じ。

三の滝からすぐに二俣が現れる。右が本流だが、左に入って山頂を目指す。

この辺りで、だんだん空が暗くなってきた。1時間後には雨が降り出すことに。

遡行図で15米と記された滝。この沢では最も姿が良いと思う。しばし見入る。

周囲の林相も雰囲気が良い。登れないかと思うが、無理そうなので左を巻く。

次の15米滝の上に、千町峠への林道が見えて来る。家族の動きが悪くなる。

打撲した個所が相当痛むようだ。林道から先も遡行するつもりだったが、まだ

山頂までは1時間以上かかるだろう。遡行は打ち切り、林道を歩き下山しよう。

林道沿いの案内図。登って来た倉谷も、滝登りコースとして案内されている。

つまり観光協会も登山コースとして認知している訳。名渓だけのことはある。

家族は林道を下り始め、沢での緊張が解けると、痛みが出てとても辛そうだ。

家族は木の枝を杖代わりに歩いてきた。2時間歩いて、ようやく倉谷入口だ。

緩やかで歩き易い林道だが、時折激しく雨が降る。今日も雨具は持ってない。

タクシーも呼べる場所だが、携帯電話は持っていないので、どうしようもない。

林道入り口で、遅い昼食をとる。家族の作ったパンと缶コーヒーだけで済ます。

しばらく歩いていると、今日、前後して遡行していた4人グループの方々が、

車で下って来られ、乗らないかと言ってもらう。遠慮せずに便乗させて頂く。

ちょうど雨が土砂降りとなったので、遠回りして生野駅まで送ってもらった。

家族の足が相当痛んでいたので、大変感謝しております。有難うございました。



(参考) 滝の高さ等は、ナカニシヤ出版「近畿の山 日帰り沢登り」による。