摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

近江の山・・・・・・草川啓三著

京都の三条通りにある小さな書店に、山の本のコーナーがあった。

この本を見つけ手にした時のことを、今でもおぼろげに覚えている。

鈴鹿を描写する、美しくも愛情溢れた文章に、思わず引き込まれた。

それから2年半もの間、愛知川源流へ頻繁に通いつめることになる。

この本自体は、滋賀県全域の山々の登山紀行文なのだが、中でも

鈴鹿山脈滋賀県側、愛知川源流域の山行が、素晴らしかった。

鈴鹿といえば、三重県の山と思っていた私には、新鮮であったし、

炭焼きの美しい二次林に囲まれた道なき谷筋を登り、尾根に出ては、

また違う谷を下るという著者の、自由な山行形態にも強く憧れた。

残念なことに、当時、滋賀県造林公社による大規模な植林事業が

行われており、その美しい炭焼きの二次林は失われつつあった。

伐採作業に追われる様に、毎週末愛知川源流に通った。25年前。


今日は天気予報どおり梅雨入りとなった。久しぶりに読み返してみる。

序文に「登山という行為において、力や技を自然にぶつけるだけでなく、

自然を見つめるという事も大事でないかと思う。」という記述があった。

今、身近な摩耶山に、何度登っても飽きないのも、この本の影響である。